第14話 叩き伏せられるヴァンパイア
「……どうあっても、言わない気かい?」
今度は、正面から手が伸びてきて、またもや簡単に持ち上げられる。
さすがは、「パリの狼」。とんでもない力だよ。
怖い。
で、問い詰めてきますか、そこ。
瑠奈はフランス人少女って感じあったけど、この人……、そか、スペインの人だったよね。イベリア狼のイベリア半島ってさ、国としちゃスペインとポルトガルだもん。
髪は瑠奈と同じで赤いけど、比べものにならないほど目が強い。
吸い込まれちゃいそうだ。
魔女というより、魔性の美人だなぁ。
「誤解をしてました。
単純におっしゃるとおりだというのに、『祖母』という単語に、完全に間違った予想をしてました。
僕が愚かでした。
ごめんなさい」
そりゃ謝るよ、素直に。
とてもじゃないけど、言い逃れなんてできそうにないし。
それに……。
ひょっとして僕、偉そうな女性が好きなのかな?
つまり、そういう性癖なのかな? 僕。
瑠奈もそうだったし、この人は瑠奈よりもっとタチが悪そうなのに、めちゃくちゃ綺麗で目が離せない。
もっとも、正面から首筋掴まえられて、持ち上げられているからね。目を離せるわけもない。
「ヨシフミ、って言ったよね。
可愛いところ、あるじゃない」
「お姉さまと呼ばせてください」
「ん、よし」
そのままゆっくりと地面に下ろされる。
あ、許してもらえた。よかったってほっとした次の瞬間。
僕、またほっぺたを道路のアスファルトに擦りつけていた。
「ヨシフミっ!
アンタ、いい加減にしなさいよっ!」
「そ、そんな思いっきり人を叩き伏せるなよっ!
毎回やられてたら、いくら僕でもそのうち死ぬぞ、マジで」
「アンタが悪いのっ、アンタがっ!
なによっ!
でれでれしてっ!」
瑠奈の怒りの声。
僕、学習しているからね。
身体を振って、位置をずらす。
次の瞬間、アスファルトが窪む勢いで、瑠奈の足が振り下ろされてくる。
さすがのヴァンパイアの超回復力でも、頭を潰されたら死ぬんだろうなぁ。
2発目に備えて、身体を転がして起き上がったのに、それは遥かに高いところで空振りされた。
あ、お姉さまが、孫を吊し上げてる。
条件反射なのかな? 瑠奈、踏みつけを空振りしたあとは、手足を縮めている。母犬に咥えられた子犬みたいだ。
「ルーナ、言っとくけどさ。
私はね、600歳の歳の差があって、ヨシフミをどうこうしようと思わないよ。
でも、あなたは、どうすればいいか、きちんと考えな。
踏んづければ男は戻ってくるわけじゃないよ」
そーだそーだ。
暴力反対っ。
お姉さま、素敵っ!
ぽて。
手を離された瑠奈が落ちる。
さ、瑠奈、反省するんだっ。
次の瞬間、僕、もう片方のほっぺたを地面に擦り付けていた。
「そんなことより、今ムカついているのを解消するほうが先っ!」
瑠奈さんよー、それはないよ、あんまりだよ。
次話、ヴァンパイアの作戦会議
に続きます。




