第2話 ヴァンパイアの文化祭
「とりあえず、和風のところはみんなに任せるけど、洋風のところは頑張るよ」
って、僕、宣言する。
瑠奈、僕の顔を窺う。
「やりますか? やりますね?」
って顔だ。
うん、やるぜ。
人間は生物だ。
だから、自分より絶対上位の生き物に恐怖を覚える。
そこに理屈とか、仕掛けとかは要らない。
瑠奈が、オリジナルの身体の気配を感じさせるだけでいい。
僕が、赤い目の人間の血を啜る存在としての気配を感じさせるだけでいい。
だから、こちらはもう、あっというまに準備完了。
僕と瑠奈、他の連中から大丈夫かって心配されたけど、「問題ない」って押し切っちゃったよ。
で、僕と瑠奈は手が空いたので、アンケート用紙を作ったよ。来てくれた人の感想とか、どういうものを怖いと思うかとかのね。
でね……。
瑠奈と2人で共同作業をしているとさ、いつもより距離が近いんだよね。
笙香も、モノ言いたげな目でこちらを見てくるけど、とってもとっても忙しそうで、こちらに冷やかしには来ない。
だから、邪魔するヤツもいなくて……。
僕、変態の素質があるかもしれないって、自覚したよ。
瑠奈の香り、耳の周りのおくれ毛、表情がころころと変わる眼差し。
一つ残らず可愛い。
小さな手、細い首、大きな目。
みんな、華奢で小さくて精密加工の粋みたいだ。。
あんまり見つめていると、怒られるんだけどね、瑠奈に。
でもいいじゃん、準備、終わったようなものなんだから。
クラスの他の連中は、3分の2が和の幽霊の準備に行く。
放課後、みんなでそこそこ時間を使っているけど、楽しいみたいだ。
ダンボールで墓石を作ったり(誰の家の墓にするかで揉めてた)、ススキを採ってきたり、火は燃やせないのでCGをプロジェクターで映してヒトダマを作ったり。
さらに、プラスバンド部で、幽霊のひゅーどろどろっていうテーマ曲(?)をフルートで吹いてもらって録音したり(もっとも、太鼓を部の備品のスネアドラムでやったら台無しになったそうだ)、スモークを焚く機械を借りてきたり、めちゃくちゃ忙しそうだ。
で、残りの3分の1の連中は、展示物の制作に勤しんでいる。
こういうとき、担任が社会の先生ってのは便利だよね。便利ってのは失礼な言い方だったかもしれないけど。
歴史、倫理の両方の視点から、それっぽい展示を作るネタが出てくるんだよ。それも大量に。
Wikiの丸写しをそのまま展示したなんて、そんな文句は絶対に言わせない。
でもって、今になって担任を巻き込んだことを僕、「よく思いついたなぁ」って褒められてる。
そしてどの展示も、最後は必ず迷信であるという方向に結論を持っていっておくように、みんなで考えた。コレ重要。
これで、先生たちは、オカルト趣味のお化け屋敷ではなく、人間心理と科学の展示だと思ってくれる。
で、僕たちがやりたいのはお化け屋敷なんだから、そこの文章のまとめ部分の結論なんて実はどうでもいいんだ。幽霊がいるかいないか、信じるか信じないかも、個人の自由だからね。
僕も瑠奈も身をもって証明する気はないし。
それに、担任の先生の顔も立ててあげないとだからね。
文化祭は土曜日。
前日は準備に使って良いことになっている。だから、明日は1日、余裕を持って最終仕上げができるし、準備万端で当日を迎えられそうだよ。
次話、抜き打ちチェック vs ヴァンパイア
なのです。




