第14話 ヴァンパイアの推測
それに、今、気がついたんだけど。
瑠奈、フランスと日本に財産があるって言っていた。
で、フランスでは、80年くらいは大規模養蚕農家で、それから150年くらいはワイナリーの経営しているんだっけ。だって、「農場を離れれば、桑の木を抜くのを見なくて済むからね」とは言っていたけど、農園を売っぱらったとは言わなかった。
それに、フランスの財産ってのが、単なる預金通帳だけじゃないと思うんだよね。
つまりさ、遠隔指示だけ出しているにしても、会社のオーナーなんだよ。
きっと、たまにはフランスにも戻っているんだろうし、難しい経営判断なんかも求められているんだろう。
瑠奈が、同級生の他の女子たちといろいろが違うの、当たり前だ。
瑠奈、小さくて可愛いけど、態度は無限に大きい。
そのギャップが可愛さを増幅していたけど、事情を知れば、僕のその観察自体が不足していたとしか言いようがない。
態度が大きくても、横暴じゃない。
横暴に出られるときは、こっちに逃げ道があるときだ。あとは、達成すべき目的があるとき。
ただ単に、逃げ道を塞いでから横暴になるってことはないんだよ。だから、いじめって雰囲気はない。
ラブコメによくいる、殴る女子の方がよっぽと理不尽だと思う。
きっとだけど、元教師で現役の社長で、その責任を今も背負い続けているって自負があるんだろうね。
だから、同じように偉そうな笙香と一緒にしても、角突き合わせることがないんだよ。笙香にしてみれば、話は合う、同じような態度のが横にいて仲間がいる感がある。でも、不思議と衝突しない安心感があるってところだろう。
そうか、納得したよ。さっきの瑠奈の言葉。
「私ね、ヨシフミと対等でいるためには、属性以外でヨシフミに勝るところが欲しかったし、頑張れば勝てるという証明も欲しかった」
……瑠奈の自覚している「存在意義」とか「存在理由」は、単なる中学生のものじゃない。
無茶苦茶に長い経験に裏打ちされた、強い自信なんだ。
それが、ヴァンパイアになってたった2ヶ月にも満たない期間の僕に、大きく揺らがされた。
これは、不安になるよね。
僕の瑠奈に対する態度が、時とともに変わっていくことを恐れるってさっき言ってたけど、思い返してみれば最初っからそれ、繰り返し言ってたような気がする。
……もうひとつ、わかったぞ。
瑠奈、僕にすべての面で負けるわけに行かないって自負、それを説明するにも、C.R.C.に作られたからってのは言いやすいんだ。「社長やってきた自負がある」なんてのは言いにくいもんね。
でも、どちらかといえば、自分で積み上げてきたものの方が重いはずなんだよ。
僕の考えていることを瑠奈、正確に見透かしていたのかもしれない。
そこまで腑に落ちたところで……。
「さあ、ということなんでヨシフミ、言いたいことがあれば言いなさい」
瑠奈の大きな目が、僕を見据えた。
次話、ヴァンパイアに突きつけられた条件
です。




