第11話 ヴァンパイアの自己啓発セミナー
完全に掴まえた。落とした。
この6人は、今は僕の支配下にある。
ヴァンパイアの赤い目は、人の意思に干渉できるんだ。
「自分のことを『ダメな人』だと思っている人、手を挙げて」
のろのろと6つの手が挙がる。
「ダメだから、勉強なんかしても無駄って思っている人、手を挙げて」
やっぱり、のろのろと6つの手が挙がる。
「君たちの深層心理に、僕は書き込もう。
君たちはダメじゃない。
やったことが無駄になることはない。
君たちは、自分が好きなことについては実績がある。
同じように、やればやっただけ勉強でもなんでも、自分自身の中に実績が生まれる。
そこは諦めるな。
そして、せめて試験前くらいは、勉強しよう。
君たちは今ここで、僕に言われたということは忘れるけど、言葉の内容はずっと忘れない」
そこまで言ってから、目の力を抜く。
そして、僕、しれっと話し続ける。
「理科だって、文系なりの勉強法はあってね。
その真実をどうやって知ることができたのかという、科学史は物語なんだ」
「ちょっと待ってくだされ、ヨシフミ殿。
拙者、一瞬寝落ちしていたようでござる。
さっきなに言ってたでござるか?」
「えっ、社会の勉強法。
綾田、綾田は社会と言うか、歴史はできるんだから、別にいいじゃん」
「うーん、そうか、なんで拙者、ヨシフミ殿の言葉を聞き逃しましたかなぁ?」
「気にすんな。
それより、笙香の集めてきた情報を使って、勉強しよう。
ある武器はみんな使おう」
そう僕は、ごまかす。
「それがよいでござる」
「うん、みんなやればできる人なんだから、頑張ろう」
そう確認をとってみる。
リアクションで、僕の能力がきちんと働きかけられたかわかるからね。
「そうだな、なんか、今回のテストはできるような気がしてきた」
「そうだよなー。
今までオレ、一夜漬けすらしなかったもんね。今回は頑張るよ」
「よっし、荒川に振られてから落ち込んでたけど、頑張ってあいつをぶん殴る」
「ヨシフミ、成績上がったら、こんな私でもつきあってもらえる?」
おいおい、最後の2つは、前向きさ加減はいいとして角度がちょっと違うだろ。
って、僕の能力、恐すぎる。
こんなに人の心を裸にして誘導できるのか。ヴァンパイアの手先になった人間が、そうそう戻って来れないわけだ。
でさぁ、ごめん、最後のだけは聞かなかったことにさせて欲しいよ。
僕は瑠奈がいいんだ。
ともかく、この6人、前向きになって、ちょっとだけでも勉強してくれれば大きく点が伸びるだろう。
90点からは10点しか伸び幅はないけど、40点からの伸び幅は60点もあるからね。10点伸ばすのはそう難題じゃない。
「じゃどうする?
勉強する?
それとも帰って自分で勉強する?」
「帰る。
その方が集中できる」
そう言うと思ったよ。
ぼっちっていうのは、1人でいるからこそ能率が上がるからってのもあるんだ。それは僕、とてもよくわかるよ。
「じゃ、笙香からの情報、書き写したら解散ということで。
がんばってね」
最後にそう声を掛ける。
「おう、がんばる」
「うん、でも、わからないところがあったら教えて」
「それは当然。
遠慮しないで聞いてよね」
さっきまで、自分だけの世界にいたのが嘘のようだね。
さあ、あとは僕の技の効果が、どれほどの時間、影響し続けてくれるかだ。
試験が終わるまで効き目があったらいいなぁ。
もっとも、人間の質に影響するような作用だったら、一生この暗示は抜けないよ。
次話、ぽっと出のヴァンパイア
なのです。




