第1話 僕はもう、ヴァンパイアになってる!
うっすらと、東の空が白むころ。
僕、自分の部屋に戻ってきた。
瑠奈の話、あまりにショックで、まだ僕には消化しきれていない。
でも、なんで瑠奈がここにいるのかはわかった。
日本とフランス、養蚕に絡んでそんな歴史があっただなんてね。しかも、こんな近いところで。
朝日が昇る時間帯って、いつも猛烈に眠くてしかたなくなるのに、今日はそうでもない。
なんていうか、緊張と興奮がとけないんだよ。
もういいや、学校で寝よう。
きっとまた怒られるけど。
いや、僕自身だって、それでいいと思っているわけじゃないんだよ。
なんて思っていても、やっぱり僕、気がついたら落ちてたみたい。
「ヨシフミ、起きなさい!
ヨシフミ!!」
うーん、眠い。
これ、やっぱり夜中の活躍のせいかな。
ようやく目を開けるけど、太陽の光が眩しすぎて拷問みたいだ。
もう、部屋の中に直接に日が差してきている。きちんとカーテンを閉めていたのに、母さんが開け放ったらしい。
そして、その光の中で仁王立ちした母さんがいた。
「あんたね、成績が上がったからって、生活習慣だらしなさすぎでしょっ!
まったくもう、中学生なのに寝てばかりいて、起こしても『おはよう』もなし、学校行っても寝てばかりだって先生から連絡来るし、宿題くらいはできてんのっ?」
うっわー、酷いな。
真祖のヴァンパイアたる僕に、あいかわらず、何たる言いぐさだ。
でも……、でもだよ。
これから僕が1万年生きるとして、母さんに起こされるのって……。
それ以前に、母さんが100歳まで生きたとしてすら、あと60年ちょいしか一緒にいられない。
僕が生まれた日から考えても、75年。
って、全然ピンとこないな。
うんと、僕と母さんが共に100歳まで生きるとすると、75年人生が重なることになる。うん、人生の75%だ。
で、僕が1万年生きるとすると、人生の0.75%。
えっ、たった0.75%!?
0.75%ってことは……。
1万円ある中で75円分しかない。
あ、ダメだこの喩え。かえってよくわからなくなった。
うーんと、うーんと、そうだ、湯船が200リットルだと聞いたな。
そのうちの1.5リットル……。だめだ、全然ピンとこないよ。
学校までだいたい1kmだから、7.5m……。
これもだめだ。やっぱり0.75%って方がまだわかりやすい。
なんか、急に怖くなってきちゃった。
瑠奈の世界観みたいなの、初めて実感した。
そりゃ、100年なんて数字、口から簡単に出てくるわけだ。
他の人たちと、生きるペースの桁が違う。
……母さん、今はこんなに元気なのに、あっという間に死んじゃうんだね。
「ヨシフミっっ!!
なに、ぼーっとしてるのよっ!?
起きろって言ってんのよっっ!!!!」
あ、ヤバい。
机の上の理科の教科書丸めたのは、それでぼーっとして見える僕の頭をイテコマそうってことだよね。
「起きるっ!
今、起きたっ!!」
だめだ、先のことは、もう少し時間があるときに考えよう。
次話、ヴァンパイアの朝
なのです。




