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僕はヴァンパイアになるっ! - なり時を間違うと、人生設計のハードルがあがるものなのです。ヴァンパイアって-  作者: 林海
私は獣の娘

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第8話 母獣の先読み


 父親は憤然として言った。

「わかった。

 そんな不毛なことになるなら、ここの生活を守ることを第一に考えよう。

 付き合ってはいられないよ。

 宗派の間で殺し合うなら、満足するまで勝手にやればいいんだ」


 その父親の考えを、母親は次の言葉で粉砕した。

「それは無理でしょうね。

 あなたはカトリックだと周りから思われているし、ここでは助けを呼ぶこともできない。

 おまけに、ここは一軒家だし、標的にされる可能性が高いよ。

 犯人にでっちあげられることも、被害者になることも覚悟しないと」

「なんだとっ?

 そんなことになったら、ルーナはどうなるっ!?」

 父親の声が高くなるタイミングで、母親は再び上手く娘の耳をふさいだ。


「大きな声を出さないで。

 そうなったら、ルーナだって、殺されるに決まっているじゃない。

 まぁ、私たちで、殺されないようにしなきゃだけど。

 私たちの選択肢は、3つしかない。

 1つ目、なにもせず、様子を見る。

 2つ目、この地方から立ち去る。

 3つ目、私が、その肉食獣か人間を狩る。

 どれもリスクはあるわ」

 そう言う母親の声は、どこまでも冷静だった。


 父親は、頭を抱えこみ、椅子に崩れるように座り込んだ。

 そのまま床を見つめながら言う。

「3番目はなしだ。

 だって、約束したよな?」

「ええ。

 変身して人を殺さない……」

「そうだ。

 俺が死ぬことになっても、変身して人は殺さない。

 そういう約束だったはずだ」

「でも、人は殺さずに、ただ、誰かを助けるためだったら?」

 その問いに、父親は答えられずに、さらに身を竦ませた。


「ねぇ、あなた。

 この地方から立ち去るのはどうなの?

 ルーナの成長が遅いことが周りに知られてしまう前に、引っ越す予定だったでしょう?」

「あと3年は大丈夫だと踏んでいたんだ。

 その間に、路銀と次の生活のための貯蓄もできる計画だった。カイコの規模も、貯蓄できる額も、毎年倍々に増えていた。あと3年あれば……。

 そのために、絹糸の売上はすべて手つかずで残してきたのに……」

 父親は、血を吐くようにつぶやく。


 母親も頭の中で、現有財産を計算する。

 家は、人里離れすぎているから、大きくても値段はつかないだろう。

 桑畑も、羊や牛を飼っている家には無用の長物だ。

 日々の糧を作っている畑も、広いものではない。

 ということは、地に埋めてきた銀貨(エキュ)しか財産はない。

 3年後には、10倍近くになっていたかもしれないのに。


 父親の言う予測のとおり、今の10倍近くの銀貨(エキュ)があれば、次の生活に安心して移れただろう。だけど、今時点では足らないのだ。



「それだけじゃない……」

 父親のつぶやきに、母親はさらに耳を傾ける。

「カイコの病気、予想外に広がりつつある。

 今年はどこまで繭を生産できるか……」

「せめてもの、今年の売上を持って旅立つことすらできないかもってこと?」

「……そうだ」

 さすがの母親をして、暗澹たる表情になった一言だった。


次話、母獣の過去と決意


なのです。

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