第15話 特殊な嗜好を聞かされるヴァンパイア
男は、ゆっくりと回りを見渡す。
僕は、息を潜める。
コウモリの僕は小さい。狙って探されない限り、たぶん気が付かれることはない。
「ヌーピー、来い」
ビーグル犬の名前かな。
そうか、僕を探すのに、犬の力を借りようってことか。
くっそ、抜け目ないな。
僕、見つかってしまうならば、いっそのこと戦おうなんて思ったけど……。
でも、犬、いくら呼ばれても来ることはなかった。たぶん、瑠奈の姿を近くで見たのが、トラウマになったんだろうね。
チビるほど怖かったんだから、当然といえば当然だ。
でも、この男が来た時の瑠奈は白人女性の姿だったから、犬の怯えの原因は想像もできていないに違いない。
てか、アンタ、踏んでるよ、その液体。
気づけよなー。
きっとだけど、この部屋の瑠奈のにおいが消えるまで、あの犬、この部屋には入らない。いや、においが消えても、しばらくは入らない。
男、軽く舌打ちをして、そのまま部屋の中の気配を窺っている。
でも、落ち着きはらって、という感じじゃない。
ちらちらと、瑠奈に視線を向けている。
これはありがたいな。
さっきの薬が致死性のものであったら、瑠奈の状態を窺う必要はないんだ。
回復にそう多くの時間を要さない薬品だから、瑠奈を見ずにはいられないんだ。
これは、揮発性の麻酔薬かもしれないなぁ。
となると、一気にこちらが優位になる。
男しては、瑠奈が回復する前に縛り上げるとかしときたいところだろうけど、ロープを取りに行ったら、その間に僕は好きに行動できる。
瑠奈を再度霧化して、この家のどこかに隠れ直したっていいんだ。
紫外線ライトも犬も、両方無力化しちゃったから、朝までだって隠れていられるだろう。
そりどころか、当然のように反撃に出る自由だってある。
そう楽観視をして……。
で、問屋がそうは卸さなかった。
「聞いているんだろう?」
うわ、こいつ、僕に話しかけてきやがった。
「さっき話した目的は、半分だけだ。
遺伝子のサンプル採取ができても、子供がどうのって目的はクリアできる。
これで、今までの投資は元を取れる。
この生き物を生かしておきたいのは、ここまでだ。
どうだ?
もう半分の目的も聞きたいだろう?
実は、こっちの方が本命だ」
くっ、聞きたいぞ。
「もう半分の目的はな、ジェヴォーダンの獣の剥製が欲しいんだ。
人型と獣型の両方を揃えたい。
特に、この個体は綺麗だからな。人型の剥製にしようと決めていた。
まさか、2種類の人型になるとは思わなかったから、白人型になるのは想定外だったが、これはこれで悪くない。フランスの化け物であるジェヴォーダンの獣としては、より、らしいしな。
きれいに仕上げて見せてやるよ」
くそ、このど変態め。
人間の剥製を飾って喜ぶってのは、嗜好が特殊すぎだっ!
てめーは、機械◯爵かよ!?
次話、なにもしないヴァンパイア
なのです。




