第12話 ヴァンパイアの危機
荒川が、誰かに道具として使われている。
そして、瑠奈がジェヴォーダンの獣として、人を狩って食うと思われている。
となれば、使役獣として瑠奈が欲しいってあたりが、ま、その誰かの考えとしては妥当な線なんだろうね。
とりあえず、瑠奈と話すにも「誰か」じゃわかりにくいから、数学で習っている方程式みたいに考えて、Xという奴がいるってことにしよう。これからそいつはXだっ。
で、そのXの考えだけど、ジェヴォーダンの獣を使役獣にできたら、たしかにカッコいいよね。ただ、どことなく厨二病臭がするけど。
ま、現実には瑠奈を飼いならすなんて、できないとは思う。
ともかく、そのXは荒川を使って瑠奈を手に入れようとしているわけだから、その意図は砕いておきたい。
いくらなんでも、「瑠奈は僕のものだ」なんて言う勇気はないけど、それでもちょっとムカつくし。
ただ、僕はどうしよう。
能力の問題じゃなくて、ただ単になにをしていいかわからない。だってさ、僕に戦う力があっても、落とし所がね。
さすがにXを「殺しちまえ」なんて思えないし。
僕としては、Xに瑠奈を諦めてもらえれば、それだけでいいんだ。
結局は、取引か脅すしかないし、取引は材料がない。脅すならば、僕自身がヴァンパイアだとバラさないと脅されてくれないよね。
結局、どっちも難しいんだよ。
で、瑠奈の最初の心配のとおりXが欲張りだったら、僕自身がヴァンパイアだっていう告白は、ジェヴォーダンの獣だけでなくヴァンパイアまで使役したいって思われる可能性もあるんだよね。
って、僕の迷いを瑠奈は読み取ったのか、あっさりと言った。
「まあ、いいじゃん。
今日は帰ろ。
明日から、このまんま荒川の手に乗るよ。
で、ヨシフミくんのいうXが出てきたら、そのままやっつけるよ」
瑠奈、自信満々だ。さすがは、260歳。こういう経験も、数多くしているんだろうね。
まぁ、それがいいかも。
あんまり人んちに長居もしたくないし。さっさと退散したい。
ふわっと空気にのって、来た経路を戻って、換気口から家の外に出ようとして……。
換気口、閉じてた。
これじゃ、この家から出られない。
決められた時間で換気をしているのなら、ちょっと待てばいいだけなんだろうけど、まさかね……。
突然、言葉にならなくても、瑠奈の強い焦りが伝わってきた。
次の瞬間、小型の猟犬が駆け込んできて、正確に僕たちのいる場所に向かって吠え立て始めた。
ビーグルって犬種は可愛いと思っていたけど、猟犬になっていてると雰囲気が怖い。
僕たちのにおいは、霧になっていても消えない。
犬にとっては、見えなくてもとてもわかりやすい標的だろうね。
青い光が、懐中電灯のように振り回されながら近寄ってきた。
紫外線だ。
これはさすがにヤバい。
霧化を保てなくなるし、実体化させられたあとも身体が焼け焦げて、最悪殺されてしまう。
ここじゃ、逃げ場がないっ。
次話、ヴァンパイアは獣の正体を目撃する
に続きます。




