第8話 恫喝に負けるヴァンパイア
「で、荒川んちの家探しはいいとして、なにを探すの?」
僕、瑠奈に聞く。
「私たちの敵が、荒川の心のなかに入り込んでいるのだとしたら、科学で割り切るのであればなんらかの暗示だし、オカルトで考えるのであれば深層心理へのルートを作るものよ。
つまり、暗示を掛けるようなものとか、ルート作りの象徴のようなものがあるはず。
そしてね、私を欲しがるとしたら……」
そこで瑠奈、言い澱む。
「……そこまでヤバい相手?」
「あのね、ちょっとは考えなよ。
アンタにしても私にしても、オカルトと科学の橋渡しになりうる存在なのよ。
世界の軍組織が、そういう研究をしているのは知っているでしょう?」
それは知っている。
ヴァンパイアになろうと決めてから、いろいろな本やネットの情報を読んだからね。
瑠奈、続ける。
「もっとも、今回は、荒川なんてマヌケを使っているから、表向きは軍とかの線じゃないと思う。
きっと、自力でオカルトと科学の境界を超えることに成功した、個人が相手よ。自力でヴァンパイアになった、ヨシフミの同類ね。
これはこれで、とてもタチが悪いわ。
基本、行動は俺様ルールだし、本質的に不必要な生贄儀式なんかにはまり込んでいると、自宅は死屍累々ってことになってるし……」
うげっ。
でも、あまりにありそうな話……。
「目的もね、個人だとすると、想像もできないことになってるでしょーよ。
ジェヴォーダンの獣を生贄にして、より強力な悪魔を召喚したいってのならまだしも、私のステーキが食べたいなんて目的だったら、私、脱力と殺意のカタマリになるわよ」
つまり、アレかな?
変態の度合いってのはとどまるところを知らないので、目的は推測するだけ無駄ってことかな?
「だからね、行って確認するしかないってのが実際のところなの」
「その確認、僕も行かないとダメ?」
ぽろっと口から出てしまって、次の瞬間とても後悔した。
瑠奈のツインテールが、逆上った。
ずずずず、とか、ごごごご、みたいな効果音まで聞こえた気がした。
ヤベぇ、怒らせたよな?
けどさ、話を聞く限りでは僕、関係ないじゃんっ!
それに、瑠奈、自分でなんとかできそうだし、僕は完全に義勇兵だし。
「行かなくてもいいかな」って、思うじゃんかよ。
「私の次はアンタよ。
そのくらいわかるでしょ?
だから、各個撃破される前に、協力して対処しようって言ってるの。
わかりなよっ!」
まるで、目が直接しゃべっているような、迫力に満ち満ちた表情。決して怒りに身を任せているわけじゃない。でも、凄みはびんびん伝わってくる。
コレ、肉食獣の顔で、間違っても中学生女子の顔じゃねーよ。
「……行かせていただきます」
「アンタがヴァンパイアっていう最強の存在だってのが、ほんと、頭にくるわ。
ヨシフミのくせにっ!
もうちょっと、しっかりしなさいよっ!」
「ごめんなさい」
反射的に謝ってしまう僕。
でも、「ヨシフミのくせにっ!」って、本人を目の前にして言うか、普通。
「わかったよ。25時、ここ集合でいいかな?」
「時間厳守。
ほんとにもー、頼んだからね?」
「はいはい」
「ハイは一回っ!」
どうも、ヴァンパイアになったことを話してからの方が、瑠奈からの当たりがきついよね。それに、ヴァンパイアになったからってボランティアだ。
ちっきしょー。なんなんだよーっ?
次話、ヴァンパイアの初めてのぎゅう
なのです。




