第2話 ヴァンパイアとケダモノ
「……事情があるんだ」
そう僕は、時間を稼ぐ目的が見え見えの返事をした。
「事情ってなに?」
ま、聞くよね、そりゃ。
「僕は……、病気なんだ。
ひどい日光アレルギーを、夏休みの間に発症してしまった。
だから、SPF50+でPA++++の日焼け止めで防御を固めないと、日常生活もできなくなってしまった。
だから……、家も出られずに勉強していた。
そんな不自由な体になってしまった僕が、内川さんをデートに誘うなんて……」
「嘘だね」
またもや、瑠奈に切り捨てられた。
「実力テストの結果はそれでいいとしても、体育祭のリレーはどう説明するのよ?
そんなに足、疾くなかったよね?
日光アレルギーで足が疾くなるなんて、ありえない」
そりゃそうだ。
夜中に走ったとか、言い訳、できはするだろうけれど無駄だよね。瑠奈が納得するはずがない。
そして、瑠奈の大きな目の追及から逃れるのは無理だ。
「内川さん。
じゃあ、トレードだ。
なんで僕がここにいたことがわかったのか、話してよ。
そうしたら、僕も話そう」
「わかった。
じゃ、そっちから先」
くっ、用心深いなぁ。
「まずは、誰にも話さないってことは約束してもらえる?」
「いいよ」
瑠奈の安請け合いを信じることにして、僕は話すことにした。
瑠奈に話す、話さないのどちらにせよ、またその結果、信じる、信じないのどちらにせよ、もう両親には話してしまったんだし。
「夏休みの間に、僕は真祖のヴァンパイアになった。
真祖のヴァンパイアがなにかは、内川さん、知ってる?」
「なぁる。
わかったよ。
納得」
えっ、それだけ?
ツッコミも質問もないの?
瑠奈、むしろさばさばした口調になって、僕に話す。
「じゃ、約束だからね、私も話すよ。
私は、ジェヴォーダンの獣って言われていた生き物の娘だよ。
そろそろ260歳になる」
「えっ、それって厨二病っ?」
自分のことを棚に上げて、そう口走ってしまった僕を誰が責められるだろう?
「あんた、いい加減にしなさいよっ!」
うわ、怖ぇぇぇぇ!
なんて迫力だ。
ツインテール、それ、ケモ耳を隠すためのものだったんだね。
太いわけだ。
ジェヴォーダンの獣って言えば、アレだよね。
18世紀のフランス、南部中央のロゼール県のジェヴォーダンに出現した、オオカミっぽい生き物だ。
たしか、60人から100人の人間を襲って、生き延びた人もいるから目撃談は多い。それなのに、獣が何であったかは現在でもわかっていない。オオカミだろうとは言われているけれど、記録を見る限り、どうにもこうにもオオカミとも言い切れない。
目撃証言から矛盾のない動物を選ぶとすれば、フクロオオカミ(タスマニアンタイガー)だのアンドリューサルクスだのって話になってしまう。
一応は僕も、ヴァンパイアになろうって人だったからね。そんな知識だけはありもするんだ。
次話、事件の真相を聞くヴァンパイア
なのです。




