第13話 ヴァンパイアと黄色の薔薇
笙香が、僕のことをバカなんじゃないかって言う。
「成績、4位にしとけば、クレープ奢るって瑠奈とデートができたのにさ。
1位まで頑張っちゃったら、『おめでとう』の一言で終わりじゃん」
だって。
言われて初めて気がついたよ。
ズルさとかの方向の賢さ、まだまだ修行が足らないな、僕。
でも、1位の効力はあった。
「数学、教えて」
って、そういう角度で。
瑠奈は、文芸部だ。
ばりばりの文系らしくて、国語は他の追随を許さない。
現に今回の実力テスト、瑠奈が94点で学年1位、僕が93点で2位だった。
賭けのことがあったから、僕の成績は瑠奈に見せた。
そうしたら、瑠奈がガッツポーズしたので聞いてみたら、ま、そういうことだったんだ。
ま、今までの僕だったら80点も取れてなかっただろうから、お話にならなかったんだけどね。
で、瑠奈の成績は見ていないけど、どうやら理系科目、特に物理とかは散々らしい。
困ったなぁ。
その一つ目は、僕が瑠奈に教えられるのかな? ってこと。
僕は数学、努力していない。
なんていうのかな、式の論理が頭の中でできあがっていて、答えが降ってくる感じ。
こんな「感じ」、教えられない。
だからって、ヴァンパイアになれなんて言えないし。
二つ目は、僕の気持ち。
ヴァンパイアだから、僕は瑠奈に告白なんてできない。
今はそう思っているけれど、一緒に勉強なんかしていて、本当にどうしようもないほど好きになってしまったら……。
僕は、僕の牙を瑠奈に突き立てるのかもしれない。
そう思った時、僕の背中にぞくりとした甘美なものが走った。
初めて僕は、僕自身を怖いと思ったよ。
結果として……。
「デートは、体育祭が終わってからのはずだけど」
そう言って僕は、僕自身の問題から目を逸らしたんだ。
成績が学年1位になったことで、父さんと母さんにも変化が生まれた。
母さん、「真祖のヴァンパイアのヨシフミ様」呼ばわりしながらも、その設定を楽しんでいるようだ。
いや、だから、設定じゃないんだけどね。
で……。
斜め上の行動に出てくれた。
「真祖のヴァンパイアのヨシフミ様、アンタ、薔薇の花の精気を吸うことで生きていけるって言ってたわよね。
ほら、好きほど吸うがいいわ」
って、黄色の薔薇を買ってきた。
「無理。
真紅でないと、吸えない」
「なに言ってんの?
真紅なんて話は聞いてないし、そもそも黄色だから安かったんだからね。
赤い薔薇は高いんだから、辛抱しなさい」
「あれ、言わなかったっけ?」
「聞いてないわよ。
買ってきちゃったんだから、アンタがなんとかしなさい」
……相変わらず無茶を言う人だなぁ。
真紅の薔薇の花言葉は「愛情」「情熱」だけど、黄色だと「嫉妬」「薄らぐ愛」だかんな。吸うに吸えないんだよ。
なんでこう、母さんはモノがわからないのか、それともあえてわからない振りをしているのか……。
はぁ……。
振りだろうなぁ、この人のことだから。
次話、ヴァンパイアと体育館裏
に続きます。




