第16話 質問するヴァンパイア
「で……。
もうひとつ確認させてください、フリッツさん。
表の外科医の顔は聞きましたけど、もう一つの顔のことを」
僕、話の切れ目にそう口を挟む。
「想像はついているんだろう?」
とフリッツさん。
「ええ、クロイツって、ローゼンクロイツに関係してますよね?」
僕の言葉に、フリッツさん、頷く。
そして、お姉さまと二言三言話して、お姉さまが話してくれた。たぶん、お姉さまも知っていることだから、翻訳する手間を省いたんだと思う。
つまり、フリッツ・クロイツさん、ローゼンクロイツの甥の家系なんだってさ。
なので、薔薇十字の秘法も知っているし、団の目的である『人類を死や病といった苦しみから永遠に解放する』ってのを有効に果たすために、表の医者にもなった、と。
で、人間の寿命は短い。
すでにフリッツさんで、C.R.C.の時代から23代目を数えているんだそうだ。そこまで人の世を重ねながらも、背後に一貫してお姉さまの存在があったから、組織がその目的を見失ってしまうこともなかった、と。
「薔薇十字団って、日本でも力があるのですか?
協力してくれる病院があるって……」
と、さらに重ねて聞いてみる。
「あったりまえじゃん」
って、これは瑠奈。
「『人類を死や病といった苦しみから永遠に解放する』ために医学は重要な柱だよね。で、かつてはその医学を支える大きな柱に錬金術があった。そして、なんと言っても、本来の錬金術は、金を作る術というより、科学実験を通じて世界を理解し、神の意志を知る学問だからね。
ヨーロッパでは、アイザック・ニュートンを始めとして、錬金術師と科学者の両方をやっている人も多いし、ノーベル賞を取ったような人までいる。
で、日本にも、そういう人の弟子がいるんだよ」
そうだよね。
科学実験を通じて世界を理解し、神の意志を知る学問。
これに関しては僕、近代科学との差、あんまりない気がしてる。
錬金術は、金を作るという非科学的で近視眼的欲望の術にとどまらないんだよね。
僕がヴァンハイアになる方法論だって、錬金術の思想抜きでは完成しなかった。
「いや、それだけじゃなく、薔薇十字団って、相互扶助組織って意味合いもあるんじゃない?」
僕、さらに聞いてみる。
日本でどのくらいの勢力を持っているのか、わかるかもしれないからね。ただ単に、興味があるっていう以上のことじゃないけど。
「当然、あるよ。
世界中に、相互扶助のための拠点がある。
ただまぁ、フリーメ□ソンみたいに、東京に大っぴらに支部を置けるほどの力はないよ。せいぜい、病院とかを中心に、医に関わるネットワークだよね」
と、これはお姉さま。
「ま、当てずっぽじゃない治療はできるよ。
大丈夫だよ、なんてことは言えない。
でも、ベストは尽くすし、尽くせる状況だよ」
とフリッツさん。
「じゃあ、笙香は……。
ようやく、運命ってのに一矢報いられる」
とつぶやいた瑠奈は、ソファに小さな体を沈めた。
次話、検査されるヴァンパイア、そして……
に続きます。
あらたな挿し絵は、花月夜れん@kumizurenka22 様から。
感謝なのです!!




