二人の会話
煙草吸ったりお酒を飲みながら、彼女と色々な会話をする。
「煙草って何吸ってるの?」
「キャメルシガーのスリムってやつ。スリム...私の体型と同じでしょ?」
彼女が冗談話をする人だなんて思わなかったから、そのギャップにビックリした。他にも色々と彼女に話を振る。
「趣味って何かあるんですか...?」
「私は読書をしたり...絵を描いたり...旅行をしたり...花も好きでね!後はボウリングとかも好き!」
彼女の表情は酔いからなのか和らいで行く。その無邪気な笑顔がまた素敵だった。
「そう!花で思い出した!この前よみうりランドのハナビヨリって所に行ったの!」
「なるほどね」
「私花大好きだから本当に幸せな時間だった〜♪♪」
会話のやり取りは上手く続く。
「あと!俺もめっちゃ下手だけど絵描いたりしますよ!」
「え、見たい!見たい!」
恥ずかしながらスマホのアルバムから、鉛筆で書いた下手な絵の写メを彼女に見せる。
「個性があって素敵ですね!でも左右の目のバランスって難しいですよね...私もよく苦戦してた!」
僕が絵を描く上で苦手な所を当ててきた。
「そうなんですよ。そこが苦手で」
彼女の描く絵が気になり聞いてみる。
「描いた絵、俺も見てみたい...」
「ちょっと待ってね...」
彼女は少々戸惑いながら、しばらくテーブル下にスマホを隠し俯きながらスマホを弄っていた。
アルバムの写真の量が多いのか2~3分程スマホを弄っていた。
「あっ!こんなのとか!あとこれとか!」
「え、めっちゃ上手いですね!」
女性を描いた絵が多いが、色付けに絵柄。どれをとっても僕は凄く魅力を感じる絵ばかりだった。
僕は言う。
「あ、ついでに連絡先交換しましょうよ!ライン!」
彼女は俯き答えた。
「ごめんなさい...私ラインやっていないんです...今、回線がおかしくなっちゃってるって言うのかな...連絡とか取り合えなくて...ごめんなさい...アルバムは開けたんですけどね...」
僕は疑問を抱えた。彼女から飲みに誘っていてくれたから僕に好意があるのではないかと。
それとも脈を感じられなかったからなのかな。
僕が何か彼女の嫌う様な事をしてしまったのかな等と考えるが、特に思い当たる事はこの数時間の間何一つ無いと僕は思った。
少しの沈黙が続いた後に彼女は言う。
「最近悩みとかありませんか...?なんと言うか、目が疲れていると言うか...」
特に大きく思い当たる悩みなど無い。
「バイト終わりだからだと思う。でも何だか心のモヤモヤみたいなのはあるんですよね昔から。そのモヤモヤの理由は未だに分からないんだよね」
「モヤモヤねぇ.........」
彼女は何処か素っ気ない様な顔をしながら、グラスを手で持ちながら眺めていた。
「親父が彼女でも出来れば見える世界が変わるってよく言ってきて。僕なりにも彼女でも出来ればまたそのモヤモヤも消えるんじゃないかなって思ってるんですよね」
彼女はさり気なく答える。
「確かにそのモヤモヤの答えは、恋愛によって晴れるかも知れないけど。其れはやがて自身を滅ぼす事に繋がるのかも.........」
僕はその言葉の意味が理解出来なかった。
彼女は時計を見て言う。
「えっ.........もう二時.........」
僕も彼女と過ごすこの時間の流れの早さに驚いた。
「マジか、終電とか大丈夫...?家近かったりですか...?」
彼女は答えた。
「終電とかは大丈夫.........あの!このまま夜明け近く迄飲みませんか...?お話したい事が山程あって!」
僕は酒の強さには自信があったのと、次の日が休日だったのもあり全然問題ない。でもそんな夜明け迄、話すネタある自信が無かった。
「全然大丈夫ですよ!」
煙草を咥えながら取り敢えず僕はそう答えた。
鞄からライターをパッと取り出し彼女は言う。
「私火付けますよ」
彼女の笑顔は本当に素敵だった。
「結婚ってされてるんですか?」
彼女にさり気なく聞いてみた。指輪をしていなかったから。
「うーん.........して無いよ。私自分に自信がないし。好きな人が出来て良い線まで行った事は何度かあるけど。私はその線を越えられないの。」
「どうして...?」
「その男性が他の女性と結婚して子供が出来てさ。その家族で幸せそうに笑い合っている姿を想像すると、私は線の前から身を引いてしまうの」
「なるほどね〜」
僕はその言葉の意味や理由を、全然理解出来ていない癖にそう答えた。
酔っていたからなのか。知ったかぶりなのか。このバーの雰囲気に飲み込まれていたからなのか。分からない。