最終話 そして恋活へ
☆ ☆ ☆ ☆ ☆[視点:ヤウォニッカ]
それはちょうど、山の中を散策しているときに起きた。
「何で……こんな所に、こんな奴が!」
ヤウォニッカの前に姿を現したのは、ディメンションドラゴンだった。
ディメンションドラゴン。それは、古竜よりも大幅に長生きした竜のことを指す。
まるで次元に介入したとしか思えない程長生きしているので、そう名付けられたのだ。
力だって、古竜の比ではない。
「刺激しないようにするべきかしら? いえ、それではダメね。あの竜、相当怒っているもの。街を殲滅しに来るのは間違い無いわ」
ディメンションドラゴンは、先代魔王の時代、魔王妃たちに玩具のように弄ばれていた。
魔族への恨みは相当に募っているだろう。
やるしかない。
以前のヤウォニッカであれば、手も足も出なかったような相手ではある。
だが、淳の加護を受けた今であれば、何とか勝てるはずだと考えていた。
「パイロブレイク・G5!」
ヤウォニッカは、以前アラレジストがルシオラ討伐に使った炎属性最上級魔法を、魔力効率2倍に改良した魔法を撃った。
最も地の魔力がアラレジストの足元にも及ばないので、威力そのものは大きく劣——
——らなかった。
魔法発動の直前、淳からもらった加護の規模が大幅に膨れ上がったのだ。
それに気づいたヤウォニッカは、魔法の威力を大幅に落とした。
だが。それは若干手遅れで、ヤウォニッカの魔法はディメンションドラゴンと跡形もなく消し、さらには射線上にあった山3つを平地に変えてしまったのだ。
「……嘘でしょ?」
ヤウォニッカは確信した。
今の自分であれば、先代魔王ごとき小指一本でねじ伏せられてしまうだろう、と。
だが肝心の、原因である淳に何が起こったのかはさっぱり分からないでいた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆[視点:アラレジスト]
アラレジストはぐうたらお昼寝をしていたので、自らの力の増加に気づけなかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆[視点:サフシヨ]
「まずいわ!」
融合使徒の即死魔法を受けた選手を欠損部位含め全回復させたサフシヨは、審判にも関わらず淳が足を掴まれたのを見てそう呟いた。
もう審判としての役目なんて捨てて、戦いに介入してしまうか。
そこまで考えたサフシヨだったが、「自分が参加したところで焼け石に水だろう」と思うことで何とか踏みとどまっていた。
だが。
その最後の心の砦は、いとも簡単に崩れ去ってしまう。
急激に自身がパワーアップしたのを感じて、条件反射で融合使徒と淳の戦いに割り込んでしまったのだ。
……そこで戦闘を繰り広げている者こそがパワーアップの原因であることは、完全に頭から抜け去ったまま。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆[視点:破壊天使リンネル]
「この銀河は魔神を総入れ替えしてから星間戦争も激減したし、もうちょっと様子見してもいいわね……」
仕事がひと段落ついたリンネルは、再び治安の悪化が著しい銀河団を探すため宇宙全域探知魔法を発動した。
そして、探知魔法に、あってはならないものが引っ掛かった。
「全能神が三人……嘘でしょ?」
全能神。
それは、破壊天使が加護を与えることで銀河を管理できる程度の能力を手に入れた者を指す。
流石に破壊天使には到底及ばない程度の実力であるが、魔神程度なら100人を同時に相手しても圧勝できる程には強い存在だ。
それが3人も現れたことに、リンネルは驚きを隠せなかった。
なんせ、自分が作った覚えのない「破壊天使にしか創造できない存在」が出現してしまったのだから。
「全能神の自然発生なんて聞いたこと無いわ。これは、何としてでも原因を突き止めなくちゃ!」
再び「相対論棄却」の魔法を発動するリンネル。
その行先は、火を見るよりも明らかだ。
お疲れ様でした。
これにて、本作は完結となります。
……実を言いますと、本作品はもともと20話前後で淳に破壊天使の紋章を持たせ、完結とするつもりで書き始めたものでした。
ですから、最初に頂いた作品で「150話くらいでどういう展開になるか云々」といった感想を頂いた時はかなり焦ってました。
「そこまで続く想定なのか! えっ、どうしよう!」と。
それからは、(不自然な水増しとなって話がつまらなくならない範囲で)話を引き伸ばすべく、色んな展開や伏線を追加したりして粘ってみました。
その結果、50話近くまでは連載を続けることができました。
ですが、ここらへんが限界となりました。
最大限話を膨らましても、話数3桁には到達できなかったのです。そこは大変申し訳ないです。
「淳が破壊天使となることがこの話のゴール」というのは最初からの既定事項でしたので、そこに着いてしまうとどうしようもなかったのです。
……もし仮に話を続けるとしたら、「淳の破壊天使としての活躍を書く」という続編を新連載するしかないでしょう。
(話の舞台が中世風の世界から多次元宇宙に移ってしまう以上、章分けで済ますのも違うなと思ったので)
そこで、ここまで読んでくださった読者の皆さんの意見を頂戴したいと思います。
それは、「破壊天使編」をシリーズものとして新しく出すか、昨日連載を開始致しました『大賢者の二番弟子(略称)』の方に全力を注ぐか」の選択についてです。
できれば双方ハイペースでの連載が理想でしょうが、作者の時間的リソースも有限です。
「破壊天使編」を書けば、「大賢者の二番弟子」の方の更新頻度はどうしても落ちてしまいます。
それを踏まえた上でのアンケートを取らせてください。
続編シリーズ化を望む方は、僕の新作(下にスクロールするとリンクがあります)を読んで、破壊天使編と二番弟子、どちらに力を注いで欲しいか感想欄で答えてください。
需要の多いほうを把握するための措置です、ご協力頂けると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




