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第40話 エンジェルの排他原理と、それに似た概念

「あ、淳、いたんだ」


エンジェルの排他原理について考え事をしていると、サフシヨ様がやってきた。


「魔界の整理はついた?」


「ああ。学院対抗戦なら問題なく出場できる」


「それは良かったわ。それと1つ言い忘れてたんだけど、明日は学院対抗戦前日祭があるの。出場選手に参加義務があるわけではないのだけど……時間があるなら観にくるといいわ」


「そうか。まあ、気が向いたらな」


それだけ話すと、サフシヨ様はすぐに帰っていった。

関白だもんな。多忙を極めているんだろう。


それにしても、前日祭か。

それどころではないくらいの重要課題が見つかったばかりではあるが、気分転換の重要性は忘れてはいけない。

考えが詰まってきたら行ってみるとしようか。


有意義でなさそうなら、転移で帰ればいいだけのことでもある。


明日の予定が立ったところで、俺は散歩に出かける事にした。

考え事をするには、歩きながらが最も効率的だからな。


☆ ☆ ☆


「あれ、ここどこだ……」


気がつくと、俺は見たことも無いような場所にいた。

要は……迷子だ。


迷子になったこと自体はどうだっていい。

ちょっと身体強化を込めてジャンプすれば道くらいすぐに見つかるからだ。


どっちかと言えば、それほど集中して考えていたにも関わらずエンジェルの排他原理の対策が一切思い浮かばないことだな。


……よし、決めた。

明日は前日祭に行こう。


今日のところは……収納で寝るとするか。


☆ ☆ ☆


次の日の朝。


収納から出ると、大勢の人が一つの方向へ向かって歩いていた。


おそらく、前日祭目当てなんだろう。

「学院対抗戦」という名前から学生にしか関係ない行事のような印象を抱いていたが、どうやらもっと大規模な行事のようだな。


どっちにせよ、迷子になっていた俺からすれば道を探す手間が省けて助かる。


引き続きエンジェルの排他原理について考えながら、この集団についていくとしよう。



そうして歩くことおよそ1時間半。

ふと顔を上げると、辺りはすっかり祭りっぽい雰囲気に包まれていた。


めぼしいものが無いか、ぐるりと見回す。


まず目に入ったのは、特設の看板。

1本の棒に、2つの正反対の方向を向いた矢印が付いていた。


右に行けば屋台、左に行けばサーカスがあるのか。


左の方を見ると、炎の塊ががぐるぐる回転し、輪っかの軌跡を描いているのが見えた。


魔法で作った炎だからできる芸当なんだろうな。

演目は……オーソドックスに火の輪くぐりだろう。まあ、見に行くことも無いか。


右向きの矢印に従い、屋台に行こうとしたその時。


「……そうか!」

俺は、2本の正反対を向いた矢印と炎の塊のスピンから、とある前世の記憶を思い出した。


それは俺が彫り師になる前、大学に通っていた頃化学の授業で習った内容。


パウリの排他原理だ。


パウリの排他原理とは、「1つの電子軌道には、スピン量子数の異なる2つの電子までしか入ることができない」という法則だ。


「1s軌道に上下の矢印を書いて……」とか演習問題でやってたからなあ。偶然にも看板の矢印を見て、自然と連想できたのだろう。


そしてパウリの排他原理とエンジェルの排他原理原理は、どちらも「◯◯の排他原理」と名前が似ている。


……もしかしたら、これが2人以上の破壊天使が単一の宇宙に存在するための鍵なんじゃないか?


具体的にどうするのかは想像もつかないが、「スピンの異なる破壊天使は同時に存在できる」とか。


無意識に、左手の甲を見る。

そして過剰魔力での鑑定を行い、「破壊天使」をクリックする。


すると。


イメージが鮮明になったからか、今度は「エンジェルの排他原理」が青文字になっていた。

すかさずクリック。


【エンジェルの排他原理】


1つの宇宙に同時に存在できる破壊天使は、異なるスピンエンジェル数(※1)を持つ2人の破壊天使までであるという法則。


理論上は2人の破壊天使が宇宙に存在できるようであるが、実際は破壊天使は正のスピンエンジェル数のみ取り得るため事実上存在できる破壊天使は各宇宙に1人までである。


※1:紋章の動き方のこと。負のスピンエンジェル数を持つ破壊天使の紋章は、正のスピンエンジェル数を持つ破壊天使の紋章を逆再生したように見える。 ■


……答え、出たじゃねえか。


要は、俺が左手の表皮に時空魔法を使って紋章をパラパラ漫画化する際、最後に彫った紋章から順に切り替えていけば良いのだ。


間違いなく、それで「スピンエンジェル数」を破壊天使リンネルと真逆にできる。


今度こそ、明日の学院対抗戦を何の憂いもなく心待ちにできるな。

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