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第28話 紋章の知られざる性質

いよいよ大陸の上空にやってくるというタイミングで、俺はカワサキのスピードを緩めた。

陸上でソニックブームが起きて、衝撃波で迷惑をかけてしまってはまずいからな。


海岸を通り過ぎ、程なくして森林地帯に突入する。


代わり映えのしない海上と違い、陸地の上空だと景観の変化するさまを楽しめるな。

そんな思いに耽っている時の事だった。


突然、横から来た爆風によって俺はカワサキごと吹き飛ばされてしまった。

結界製の道路から脱輪してしまったので、落下しながらカワサキは収納にしまい着地の準備をする。


身体強化のおかげで怪我なく着地できた。


は、いいが……さっきの爆風は一体何だ?

改めて爆風が吹いた方に目を向けると、その正体は一瞬で分かった。


見覚えのある、漆黒のキノコ雲。

間違いない。あれだけ高密度な灰燼でできた雲ができる現象は、地面に向けて放たれた過剰威力のハイボルテージ・ペネトレイトを置いて他に無い。


きっと使徒(俺の顧客)が活躍しているのだろう。

せっかくだし、見に行ってやるか。


☆ ☆ ☆


「お久しぶりですね。冒険、順調そうで何よりです」


「淳さん!」

「勇者様!」


探知魔法を使いながら追うこと分。2人の冒険者に会うことができた。

このどちらかが先ほどのハイボルテージペネトレイトを使ったのだろう。


「淳さん、どうしてこちらへ?」


「王都に帰る途中、たまたまハイボルテージ・ペネトレイトを行使するところに居合わせましたのでね。様子を見に来たんですよ」


「これも淳さんのお陰です。ね、ラシュア?」


俺のことを勇者様と呼んだ方の名がラシュアらしい。


「ちなみにハイボルテージ・ペネトレイトで何を狩ったので?」


「ゴブリンです」

ラシュアがそう答えた。


……ゴブリン。

間違いなく、討伐にハイボルテージ・ペネトレイトなど必要の無い相手である。

一体、何故そんなことを?


「すいません、淳さん。せっかくいただいた力をこんな事に使ってしまって……。私としてはいつも反対してるんですが、ラシュアが『碌に素材にする部分が無いゴブリンでも、魔石に雷属性を付与すれば多少は金になる』って言って聞かなくて……」


ということは、ハイボルテージ・ペネトレイトを撃ったのはラシュアの方か。

まあ魔力の無駄遣いの甚だしいが、一理なくもない言い分だな。


「勇者様がやめろと言うならもうやりませんけどね。ただ私にはナルシャのように『危険度感知』が使えるわけではないので、どちらにせよ倒すのに最低限の魔力消費で、とはいかないんですけどね」


俺のことを淳さんと呼ぶ方がナルシャか。

しかし、また新しい魔法が出てきたな。


「危険度感知?」


「危険度感知というのは、敵の気配だけでなく相性、環境、コンディションを加味した総合的な勝率や討伐に必要十分な必殺技に込めるべき魔力量まで知れる、探知魔法の上位互換みたいなやつです。秀英紋にしか使うことができません」


ナルシャの左手を見ると、確かにそこにあるのは丁型使徒の紋章。元が秀英紋であった証拠だ。


「……あれ、でも今のナルシャは秀英紋ではないですよね?なのに何故ナルシャは未だに危険度感知を使えるのでしょう?」


「私は単に、昔持っていた紋章と現在の紋章、両方の効力が同時にかかっているものとばかり思っていましたが……」


ラシュアが疑問を呈し、それにナルシャがナルシャなりの仮説を出した。

一瞬、細かいことは気にするなと言おうかと考えたが……ここで俺は、これこそが兼ねてからの疑問の答えなのではないかということに気付いてしまった。


ナルシャの仮説が正しいとすれば、俺が方天画戟を使用できることの説明がつくのだ。


方天画戟は、魔神には扱うことができない。

だが、俺は魔神紋と最弱紋を併せ持つ状態になっている。

結果、俺は方天画戟にとって「魔神級の実力を持つ最弱紋の人間」ということになりその条件が裏技的にクリアされる。


これが、魔神にとっても不可解であった疑問に対する「答え」だ。


そして、これが事実だとすれば新たな希望が見えてくる。

なんせ、今手に彫ってある魔神の紋章は消してしまって大丈夫ということになるのだから。


一旦手の甲を真っ新(まっさら)な状態にして、そこに1から破壊天使の紋章を掘ることができるのだ。

相変わらず動く紋章を手に入れる方法は解明できてないが、それでも魔神の力を失うリスク無しに気軽に試行錯誤できるのはありがたい。


未知なる可能性に胸が高鳴るので、そろそろここはおいとましよう。


「多分、その仮説合ってますよ。俺もその点をもうちょっと突き詰めてみようと思うので、これにて失礼します」


「ありがとうございます。ではまた近いうちに、1回目の分割払いに行かせてもらいますね〜」


2人の冒険者に見送られる中、俺は王都に向け再出発した。

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