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平安京の五条大路を通り、鴨川を渡ってそのまま真っ直ぐ東へ進むと、鬼道丸たちの住処である清水坂に突き当たる。


坂の南側一体は鳥辺野とりべのと呼ばれ、古くから葬送の地として知られていた。


平安京の中に墓を立てることは許されていない。


誰かが死ぬと、人々は遺体を郊外の鳥辺野まで運んできて、ここで荼毘だびにふしたり埋葬したりした。


貧しい庶民なら、そのまま打ち捨てて野ざらしにしてしまうこともある。


腐臭漂う死体だらけのこの地は、まるで黄泉よみの国そのもののように恐れられていた。


そのせいか、現世の五条通との境をなす辺りは、いつしかこう呼ばれるようになったのである。


六道の辻……つまり、地獄の入口と。


親方が言うには、月明かりもない真っ暗闇の真夜中、しかもその六道の辻のど真ん中に、鬼道丸はただ一人捨てられていたのだそうだ。


産着すら身に着けない素っ裸で、夜の闇を怖れて泣くこともなく、むしろ暗い夜空を見上げてきゃっきゃと笑っていたのだとか。


そんな忌まわしい拾われ方と例の不思議な力のせいで、鬼道丸は群れの仲間たちから浮いた存在だった。


恐れられているせいでいじめられることはなかったが、仲良くしてくれる者もいない。


皆、遠くで鬼道丸の様子をうかがい、片目で怖々見守っている、そんな感じだった。


だが、親方は別だ。


一応坊主なので頭を丸めてはいるものの、親方は仏など小指の先ほども信じてはいない。


神仏すら恐れない罰当たりだから、鬼道丸のちっぽけな力なんて屁とも思わない。


だから、親方だけは容赦ようしゃなく鬼道丸をどやしつけ、必要があってもなくても、頻繁ひんぱんに殴ったり蹴ったりするのだ。


昨日も、鬼道丸は稼ぎが少ないと、親方から半殺しの目に合わされたばかりだった。


今も、鬼道丸の身体のあちこちには青黒くれ上がったあとがある。


今日もこんなはした金を持ち帰ったら、今度はどんな目に合わされることか。


鬼道丸は身を縮めて、膝にさらに深く顔を埋めた。

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