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渡り鳥(レイヴン・コーリング)Ⅱ 2

 位能力。異能力とは言わず、ランクで仕分けされた能力のこと。位能力が最もランクが高いほど、重宝され、危険視される。

 能力は初めて渡り鳥に報告して初めてランクがつけられる。

 ランクによって、仕事の難易度が変わる。


 さて、異能力はひとりにひとつだけだと昔の人は語った。

 だが、稀にいる。ひとりひとつではなく、ふたつ以上持っている人が。彼らは二つ目のことは言わず、ひとつしか報告しない。そのため、その能力のこともランクのことも知らされないまま、彼らの切り札として握られていた。


 箱に手を添えた。

 緑色に発光する。箱から優しい光が漂ってくる。疾風が箱を覆い、周囲にいる人に疾風を通じて、箱の記憶を与える。

「リクルさん、その能力って…!」

「うん。ふたつ持っていたんだ。〈時間移動〉と〈物念記憶〉のふたつ」

 〈時間移動〉はその名ととおり、時間を通って行動を起こす異能力。ランクはS。相手が視認する前に片を付けるため、把握できないまま完了する。瞬間移動と同じだが、場所を移動するのではなく、時間を止める能力のため、無敵の能力だと知らされている。

 欠点は、能力発動時、その場に戻らないとダメージを受けるという回避不可能という点だ。


 もう一つは〈物念記憶〉。物に触れたとき、その記憶を読むことができる能力。得られるものは断片に近く、はっきりと見えることは少ない。

 上に報告しなかったのは、ふたつ能力を持っているという切り札を開示することと明らかに補佐向けのため、戦闘を立候補する身としては、こちらは隠したということだ。


 二人を驚かせる形で能力を披露した。二人ならばれても問題はないと自己判断した。

 〈物念記憶〉で箱の記憶を探る。

 うっすらと見えてくる。モノクロの描写に横線が何本も見えてくる。かすかに見えてきた映像は、――誰かの手にあったということだけだ。

 誰かに箱を渡している。

 渡された人が口にした。

「ファルシ」

 映像はそこで途切れた。


 ファルシ。街の致命かそれとも名前か。

 このことをフィーリアたちに訊いてみた。


「ファルシという地名か名前か心当たりないか?」

 二人はきょとんとしていた。

 箱が光ったと思えば、リクルが思いがけない言葉を発したからだ。

 二人とも頭を左右に振り、知らないと答えた。

「この言葉が鍵なんだよな」


 口に指をあて、考える。

「街の人なら何か知っているかも」

 フィーリアの提案にリクルは「それだ!」と指を向けて言った。


 街の人に尋ねる。

 なんて原始的で基本中基本なことが思い浮かばなかったのか。近頃忘れ物が多いような気がする。

 答えが出た、さっそく”ファルシ”を知る人物を訪ねて行ってみよう。


 街を捜索して住民に話しかけ、成果はでた。

 ファルシという名前の人は実在し、装飾屋を営んでいたらしい。

 だが、ファルシは一年前に失踪して以来、行方不明のままのことだ。

 誰かに渡すものがあると言って出て行って以来、帰ってきていないとのことだ。


 箱を渡されてすぐ後に行方が分からなくなったということだ。

 〈物念記憶〉では、生物の記憶を見ることはできないから、ファルシや路地裏にあった彼らの記憶を読むことはできない。

 結局、この箱がなんなのかわかりじまいだ。


 街の中心地区に移動し、昼食をとりながら、掲示板にあった依頼書を数枚ペラペラと捲りながら次の仕事を探していた。

「これにしよう」

 決まったのは、討伐案件だった。


 街の中心地区から東に行くと農家に着いた。

 途中途中に家がわずかにあったが、どれも人が住んでいない形跡があった。

「掲示板を見てきたんだが、被害状況はどれくらいなんですか?」

 依頼を出したのはここに住んで二十年暮らし続けている女性だった。見た目は中年。

「家畜や農作物も荒れるし、今年は危ういところまで来ているんですよ!」

 周りの畑は荒れ果てていた。まるで大きな化け物が空から舞い上がるかのように作物が荒らされていた。家畜も数は少なく、小屋も屋根に穴をあけるほどひどいものだった。

「他の皆さんはどうしたんですか?」

「みんなこの地から去ったよ。…逃げ出したね。化け物が現れてから数年、対策もままならず。おかげで農家仲間もわたしだけになってしまったよ」

 女性は辛くため息を吐いていた。

「化け物の特徴はわかりますか?」

「見たらわかるよ。大きな翼を生やし、上空からキーキーと猿のような声を上げ、上半身は人間のような体付きをしていたよ。あれを見てから、旦那は気を失ってしまうし、もう悪夢だったよ」

 このことが原因で旦那さんは数年前に他界してしまったそうだ。

 フィーリアが手を挙げた。

「警備隊がいるのでしょ。その人たちはどうだったんですか?」

 女性はため息を吐き、手をバタバタを左右に振り「あんなの役にたたないよ」と突っぱねた。


 この街は警備隊がいるのに、誰も対処しなかった様子だ。

「わかりました。その化け物は対処しましょう。報酬は忘れないでくださいね」

「ああ、もちろんだ」



 化け物が残していった体の一部を死んだ家畜から摘出し、証拠として残してくれていた。その体の一部から、化け物の正体をつかもうとした。

 生物であって、生物ではない部分。

「能力発動」

 〈物念記憶〉を使ってみた。

 なにも見えてこない。

 やはり、体から切り離されたとはいえ、生物としてみなされるようだ。

「不発…でしたか」

 リクルは頭を左右に振り、仕方がない。地道に探そうと二人に言った。

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