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授業参観・運動会部門開幕


「これより学堂の授業参観を開始する、これから7日間学堂は世界に向けて開かれる。心して挑むように」


簡単な校長挨拶の後に空中でいくつかの爆発が起こる、これが開始の合図だった。生徒たちの雄叫びが響く、これは最大級の試練へと立ち向かうために己を奮い立たせる儀式でもあった。


授業参観で最初に行われるのは2日間をかけて行われる運動会である。


丸2日を一つの競技で使うのだ、もちろん休憩時間などという甘えは許されない。休むのならば己で安全を確保しなければならないのである。死人が出ないのが不思議なほど本格的な戦闘が行われるのが常であるが、競技自体は毎年変わっていくので予習も復習も意味はない。培った自力で切り抜けるのがこの運動会である。


「今年の競技は【領地崩し】だ」


割り当てられた場所でナラツが紙を配る、そこには競技の概要が記されていた。


ーーー


【領地崩し】


それは団体戦にして個人戦の競技である。


①組毎に点が割り振られその点に応じた自陣が与えられる。自陣は更に個人毎に所有権があり譲渡することが可能である。陣地を持っている者が脱落した場合は一番近い別の者に譲渡される。陣地は便宜上コインで配分される。


②順位は最終的に持っている陣地が多い順にとなる。ただし個人の陣地と組の陣地は別である。個人の勝利と組の勝利は両立しない。組の陣地としたものは個人の陣地には戻らない。


③組の陣地と個人の陣地の違いは上位になった際の褒賞の差である。個人の褒賞は学堂内での願いを叶えるものだが組の褒賞は【貴不死人】への謁見である。


④組の中に一人だけ王となり組の陣地として個人の陣地を統合ができる者が存在するが、王が誰かは分からない。知るには手順を踏む必要がある。王は組の陣地を管理する、王が脱落した時に組の陣地は王を倒した者の組の陣地となる。


⑤脱落は致命傷を受けたとアガペちゃんが判断した瞬間である。


⑥王が脱落した組には二つの選択肢がある、組を解散した個人の兵となるか、王を討った者を誅して新たな王を立てるかである。


⑦目に余る行為をしたものはその場で校長からの制裁が加えられる、その際の命の保証はない。


⑧場所は学堂全域に渡るが初等部、中等部、高等部の使用する場所は別


⑨参加者は全生徒であるが、初等部は初等部と中等部は中等部と高等部は高等部との対戦となる。


⑩最大源の最善を尽くせ


以上


ーーー


「毎年毎年よくやるもんだなあ……んじゃ始まる前にコイン配るぞ」


数字の書かれたコインが配られていく。学堂の刻印が成されたコインは大きさの割に重く多くを所持した場合には枷となるだろう。


「1しかない……?」


配られたコインの数字は全て1と書かれている。


「そりゃあ一枚は一枚だろ、問題は質のほうだ。重さが違うんだよ、文字通り領地の重さがな」


「まさか……カーム少しコイン貸して」


「……(いいよ)」


「……たしかに」


明らかにカームのコインのほうが重い、本当に重さで多くの領地を持っていることを示しているらしい。


「だからまあ、一つだけヒントをやるとするならコインなんとかしねえとまともに動けなくなるってことか」


陣地を抱えるリスクは重さも含まれているということだった。


「組の陣地にした分はこっちの箱に入れるからな。そうすれば重さはなんとかならあな」


鎖のついた箱をナラツが取り出す


「これは王じゃねえと開けられねえ、お前らの中の誰が王か分かんねえうちは預けらんねえことになってるからそこも気をつけろ」


「王が誰かを知るにはどうしたら良いか書いてないのだが?」


ムケンの発言に周りの皆を頷く、紙にも手順を踏めとしか書いていないのだった。


「ああん?そんなもん自分たちで見つけるに決まってんだろうが」


ここで甲高い音が響く。


「おっと30秒後に始まるぞ。これが本当に最後の忠告だが一秒たりとも気を抜くなよ。これは実戦だと思え」


そう残してナラツが去る。


「んなこと言ってもよお、他の【碧玉】【硬玉】【黄金】の奴らがどこにいるのかも分かんねえだぜ、俺らがこの原っぱに連れてこられたこと知ってる奴なんていねえよ。なあ?」


鬼人の少年がそう言った。


瞬間


轟音と共に何かが着弾した


「やっほー!!レオーマだよ!」


豹柄の髪に体躯に不釣り合いなほど密な脚、恐るべき脚力で跳んできたとしか考えられない。


「おまっ!?【黄金】の!?」


「跳んで探してたら見つけちゃったよ!!ラッキーだね!!」


レオーマの脚が歪んで見える。しかし脚が変形しているわけではない、歪んでるように見えるのは熱のせいである。


圧倒的運動量はそれだけ熱を生む


つまりは、動きのない脚に見えてもその実動く準備は万端なのだ。


「じゃあ、君のたちの貰うね。大丈夫、君たちには見えないからあっと言う間に終わるよ」


脚の筋肉の緊張が一瞬緩む、これは緩急による最大速度を出す為の動作でありこれが終わった時レオーマは目にも留まらぬ速度での駆動を始める。


獣人の中でも最高速で走る豹族の中でも更に速度特化の体をしているレオーマの脚が温まっている今は速度で張り合える者など


「いきなりきてなにする気ですか……」


一人しかいない


「あれ?」


ハネがレオーマの肩を掴んでいた。


速度に乗る前に抑えられてはせっかくの脚も披露できない。ハネの瞬発力が間一髪レオーマを止めた形である。


「あっちゃー、レオーマを止められる人が赤にいるとは思わなかったよ」


「目的はなんですか……奇襲をかけるにしても早すぎるでしょう」


「ん?全滅だよ?」


あっけらかんと答えたレオーマ、そこにはなんの疑問も葛藤もなかった。


「ぜん……めつ?」


「そうだよぉ?みんな倒してれでー?に会うんだって」


『はいそこまでー、これ以上そこにいると巻き添いにしちゃうからさあ。逃げたほうがいよお?』


レオーマの耳につけられた遠隔装置から機人マッドの声がした。


『場所が割れたらあとは絨毯爆撃かますだけなんだからねえ!!』


「はいはーい」


レオーマがその場で踏み込む、それだけで周囲は波打った。


「えっ!?」


衝撃によりハネが宙に浮く、当然手は離れた。


「じゃあねえ、脱落しなかったらまた会おうね」


隙をついてレオーマが跳び去る。


ハネはさっき聞こえた会話から可能性を考える。絨毯爆撃という言葉に聞き覚えはない、だがしかし場所が割れる、巻き込まれるという言葉から広範囲攻撃が来ることを推測した


「みんな逃げて!!何かが来る!!」


『あーっはっはっはあ!!もう遅いよ!!』


耳障りな電子音声を響かせつつ姿を現したのは小型の鳥ほどの大きさの機械群。そのうち一匹がブレス達のわずか手前で爆発する


『まともに当たればこれ一匹で脱落さあ、それを君たちには241匹プレゼントしちゃうよ。せいぜい可愛がってねえ!!』


「嘘……だろ……【黄金】がこんなガチでやったら勝負にならないじゃんか……」


獣人の少年の呟きがが漏れた、しかし皆そう思っていることは青ざめた顔を見れば一目瞭然であった。


機械群が加速を始める。


「逃げてぇええええええ!!」


ハネの叫びで皆が一斉に逃げ始める、蜘蛛の子を散らすようにてんでバラバラに走っていく。


『いいよお、一人一人確実にやってあげるからさあ!!』


しかし


一人だけ残った者がいた。


「ごめんねグレイス、あんまり気が進まないだろうけど……少しだけ無理させるよ」


グレイスの顔は恍惚に満ちている、これ以上なく頼られていることに歓喜しているのだ。心なしか、その顔が大人びているように見える


『なんだ?逃げないのお?10秒あげるから逃げてよお、その方が楽しいからさあ』


「流石にこれはやり過ぎだよ、あまりにもね。だから僕も少しだけやり過ぎることにするよ」


『やり過ぎねえ?今から蹂躙されるやつになにを言われても響かないなあ』


「うるさいわ、とてもうるさい、(ブレス)がそう言ったってことはあんたはもう終わりなの」


ブレスの口は動いていない、ならば声の発信源はどこなのか


『……今【恋人】が喋ったのか……いやまさか……ありえない……』


機械越しでも動揺が見て取れる、それほどの異常事態が起こっている。


グレイスが


【恋人】が


喋っている。


つまりは暴走、全てを台無しにする【恐怖】の出現。


しかしグレイスには暴走の素振りなど全くない。


故に異常


暴走してもいないのに【恋人】が喋るなどありえない。


「あんたに【恐怖】を教えてあげる」


艶やかな笑いは捕食者そのもの


【恐怖】の支配が始まる。












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