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蒸気世界のロストランカー  作者: 稚葉サキヒロ
第1章・古森美咲編
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28/35

27.決戦前

コミケに行ってきました。

目についた小説を買ってきましたがどれも同人とは思えない物ばかりです。

僕もいつか出す側に回りたいですね。

あと、重たい鞄をずっと持っていたので肩がイカレました。

そして、宿泊予定のホテルが予約が取れていない(宿泊先のミス)ので困りました。

結果、6000円のカプセルホテルから25000円のホテルへとグレードアップしたので満足です。

「お帰り兄さん」



 葵が帰宅するころには翠はもう風呂に入ったようで寝間着姿で出迎えた。それもそのはずで一般的な高校生が帰る時刻は過ぎている。



「あぁ、ただいま。飯は食ったか?」

「まだだよ。兄さんを待っていたの」

「ったく仕方ねぇな。今作ってやるから待ってろ」



 翠は基本的に食事を作ることがない。基本的に美味しくないと理由で葵がやめさせている。本人もそは分かっているようで休みの日にはたまに練習していたりするのだが成長の見込みは薄いようだ。



「今日も遅かったけど何をしていたの?」

「俺だって好きでこんな時間に帰らん。雅さんに頼まれている用事があんだよ」

「ふ~ん。それってそんなに大事なんだ」



 少しだけ不満そうな顔をする翠は近くの抱き枕を抱えてソファへと座る。

 制服のまま料理をする葵の背中を見て視線を下に落とした。



「そりゃ、大事かそうじゃないかって言われたら大事さ。それに色々と厄介なことになっているからな」

「いっつもそう言って帰ってこないもん。私、心配だよ」

「お前に心配されるほど落ちぶれていないさ」



 葵は笑って誤魔化すが翠がいつも心配していることは重々承知している。それに大切な妹を自宅に一人にさせておくのは心苦しい。万が一、翠に何かあった場合は気が気でない。



「ちょっとは相談してくれてもいいのに……」



 翠は葵と肩を比べることが出来ないほど差があると理解している。例え葵が話をしてくれたとしても役に立てるかどうかは分からない。

 ただ、心配ばかりされるのは嫌だということだ。

 いつも葵にばかりに守られ、自分は何一つ葵にしてやることが出来ないもどかしさが嫌で嫌でたまらなかった。



「さぁ、そろそろできるぞ。テーブル片づけてくれ」

「……うん」



 翠はテーブルを拭いて皿を用意する。盛り付けられた料理を挟んで二人は座った。



「我ながらいい味だな。……食わないのか?」

「食べるよ。食べるけど……」



 葵は翠が言いたいこと、思っていることが分かった。自分がしていることを話さないから翠は更に心配する。もごもごと何か言おうか言うまいか悩んでいるのだろうと。



「ありがとう」



 自分がどれほど幸せな人間か噛みしめることだろう。蒸気世界を半ば追放された身として去るべき場所を繋ぎとめたくれたのは翠だ。

 妹という存在が無ければ今の東雲葵はいない。葵にとっては非常に特別な存在だ。



「どうしたの突然。いきなり言われると恥ずかしいよ……」

「すまん。ついな」

「もう、兄さんったら」

 とはいうが顔がほころんでいた。



(確かに隠す必要ないな)



 心配を掛けたくないと黙っていたことが逆にそうさせてしまった。葵もまだ完全に翠を理解しているわけではないと改めた。

 翠は幼いころから葵がどのような人間か知っている。老いがない半永久的な肉体を持つ葵は出会ったころから姿は変わりない。一方、翠は仕込みを施しているが特別な人間ではない。でも、昔から兄と慕っているのは変わりなかった。



「実はな……」



 今までのことを包み隠さずに話した。機械の心臓、古森美咲、そしてアリスについて。

 話を聞いた翠は複雑そうだ。



「いつも兄さんばかり……」

「仕方ねぇ。こればかりはアリスが絡んでいるからな」

「……うん。確か兄さんじゃないと止められないかも」



 翠もアリスの性格や実力を知っている。ミステリアスな面を持ちながらも常に蒸気世界を愛している一人。そして何よりも兄を好いている。

 アリスが機械の心臓の設計図を狙う理由も理解ができた。もしも手に入れたとして狂いが確実に防げるのならば翠も設計図を奪いに行くだろう。


 だが、確証もなければ葵がそれを望んでいない。蒸気機構に従い、果てに消えゆくとしても本望だと考えるだろう。



「アリスは人の話を聞かんからな。自分が思ったことを突き進んじまう」



 葵は昔を思いだしながら言った。どの顔は懐かし気に楽しそうだ。



「どうやら俺の役目は道を踏み外した奴を強制させることかもしれん」

「ほんとお節介なんだから」



 翠は頬杖をつくながら温かく微笑んだ。



「じゃあ、兄さんが間違えたら私が直してあげるよ」

「ん? まぁ、その時は頼むわ」

「何その言い方。不満なの?」



 結局、葵は余計な事を言ってしまい機嫌を損ねた翠のために胡麻をすることになった。



 ——古森邸



 手になじんだ愛用のサーベルの手入れをする古森には今まで生じていた迷いがなかった。自身のすべきことを自分決め、それに突き進む。

 刀身を再び確認し鞘に納めて腰に吊るした。



 そして今一度自分に問う。

 古森美咲としての蒸技師の在り方。自分が目指す者は何かと。



 だが、今の古森にはその答えがない。もしかすると一生たどり着けないのかもしれない。しかし、その逆も在りうる。

 機械の心臓を狙うアリスを食い止めること。これが蒸技師であるためのまず一歩目だ。


 元第7階級を相手にどこまで渡り合えるのだろうか。一瞬で勝負が終わる可能性だってある。

 いや、自分は古森美咲だ。若くして第4蒸技師にたどり着いた者。安々と負けるのは誇りが許さない。


 揺るがない決意、新しい自分を見つけるために古森は夜のオーゼル学園へと向かった。



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