0.摩訶不思議な蒸気世界
蒸気世界。
一言で社会を言い表すならば適する言葉だ。
いつの頃だろうか。世界は蒸気を動力とした社会基盤を作り上げていった。始まりは知らずとも現代を生きる人は何も不思議に感じることなく生活の一部として受け入れている。
家庭はもちろん立ち並ぶビル群や公共施設には設置される配管が複雑に絡み合って目的の場所まで蒸気を送り込んでいる。
そして絶え間なく緩んだバルブから白煙を吹き出すのが日常光景だ。
少しだけ蒸気世界の成り立ちを説明しよう。
蒸気技術は摩訶不思議な物で多くの学者は解明出来ていない。故に神の産物。古代遺産と呼ばれる設計図を基に技術の発展を遂げている。
つまり国力とは設計図の保有数。更に言えば革命的な設計図を探し出すことが挙げられる。
蒸技師を目指す者を教育する為に設立された国立蒸気機構オーゼル学園。
技術を学び、戦闘を学び、そして設計図を探し求める。
学生を含め蒸技師は徹底した階級制度。
才能や年齢、キャリアは全て考慮されない。実力こそが蒸技師の頂を掴める。
だからこそ蒸技師を目指す学生は自らの蒸気道を探すために日々、切磋琢磨する。
物語は東雲葵が国立蒸気機構オーゼル学園に入学するところから始まる。