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民営騎士団は眠らない  作者: 実乃里
第一章 バイト先は騎士団本部
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登校

 早く寝たおかげでたっぷりと睡眠がとれた。寝起きの気怠さもなく、悪くない気分だ。

 軽い柔軟体操をしたのち、パジャマから制服に着替え、リビングに降りていく。

 案の定、母はまだ寝ている。母はデザイン関係の仕事に就いており、自室が仕事場となっているのだ。夜型人間で、いつもお昼近くまで寝ている。

 リビングのカーテンを開いたのち、ジャムを塗ったパンとコーヒーで朝食をすませる。

 登校時間まで間があったので、ドアポストから今朝の新聞を取り、書かれている記事を眺めてみた。

『ファキオワード市警 強盗団捜査に難航』『ステアー地区の不審者に注意』『トンプスンアロマコーポレーション ファキオワード市での新規市場開拓に展望』

 記事の中身は、昨晩のラジオニュースで読み上げられた内容とほぼ同じだった。情報の早さにかんしてはラジオに分があるようだ。

 そうこうしているうち、時計の針がだいぶ進んだことに気づく。そろそろ学校へ行くか。

 母の分のコーヒーをポットに残し、僕は家を出た。

 ウィンターサイド高校は市内の外れに位置する。僕の家からは自転車で三十分ほどの距離だ。

 創立時に公国から贈与されたらしい立派な校門を潜り、初代校長、ジョン・モーゼスの彫像を左に折れ、駐輪場に自転車を止める。

 自転車を通学に利用する生徒は少なく、駐輪場はいつも空いている。学生定期があれば公共馬車に無料で乗れるため、多くの生徒はそちらを利用するのだ。みんなにしてみれば、わざわざ疲れる移動手段を使う僕は変わり者でしかない。

 自転車にU字ロックを施し、昇降口から教室へと向かう。

 教室の前まできたとき、反対側から歩いてきたアイリスとバッタリでくわしてしまった。彼女も今登校してきたところだろう。


「……おっ、おはよう」


 湧いてきた逡巡を押しやり、僕は右手を軽く上げ挨拶をした。

 アイリスはもの凄く不機嫌そうに顔を顰めたのち、「ふん」と鼻を鳴らし、教室に入って行ってしまった。

 昨日のことを相当根にもっているようだ。


「珍しいこともあるもんだな。アイリスとはかかわらないんじゃなかったのか?」


 オーブリーが後ろに立っていた。


「意図せずかかわり合いになっちまったんだよ」


 ヒューと、オーブリーが口笛を鳴らした。


「興味深いな。是非とも詳細を知りたい」


 僕は自分の席で、昨日のことを話して聞かせた。


「アイリスが騎士団員とはね。驚くより、むしろ納得できたな。雄々しさの説明がつく」

「誰にも言うんじゃないぞ。彼女にとって秘密事項かもしれないからな。オレから話が広まったと知ったらどんな目に遭わされることやら。命にかかわりかねん」


 そもそもオーブリーに話した時点でアウトかもしれない。


「安心しろ。竜神トクナガシュウヤに誓って他言はしねえよ」


 オーブリーはエルフ族の守護神の名前を呟き、胸の前で聖印を切ってみせた。

 僕はアイリスの方を見た。彼女は一人椅子に座り、仏頂面を浮かべている。なにがそんなに気にいらないのだろう。別にみんなから無視されているわけでもない。無礼な男子をとっちめてくれるクールな姉御として、むしろ女子の間では人気があるくらいだ。


「大人しくしていれば可愛いのにな」


 僕はオーブリーにも聞こえないくらい小声で呟いた。

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