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民営騎士団は眠らない  作者: 実乃里
第三章 夏フェスに行こう
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日常のひととき

 ホテル・オールドハンツは立派なホテルだった。五階建ての勇壮な佇まいと、王宮のごとく贅沢な内装。五つ星の豪華ホテルだ。……ただし、全ての部屋がそうとは限らない。

 ホテルに入るや、僕らは地下に案内された。豪華絢爛な地上とは打って変って、地下は地味な限りだった。それもそのはず、地下にあるのは安価なビジネスクラスなのだ。

 ホテル・オールドハンツは、貴族階級ばかりでなく、庶民にも門を開く、度量の広いホテルらしかった。


「思いっきり社会格差を突きつけられた気分よ」


 アイはベッドに寝転びながら不満をぶちまける。


「ベケットの予算には限りがありますから。切り詰めるところは切り詰めないと」


 そう言ってアヤムは眼鏡の位置をなおす。


「別にこの部屋に文句はないわよ。ただ私が言いたいのは、なぜ三人で一部屋なのってことよ。トモルは男なのよ」


 ホテルの部屋を予約する際、アヤムは一つミスを犯した。


「すいません。ついいつもの癖で、女だけの旅行のつもりで考えてしまいました。トモ君が男であることを考慮していませんでした。重ねてお詫び申し上げます。このとおり」


 アヤムは床に膝をつき深々と頭を下げる。


「というわけでこの件は終わりです。私のミスはサラリとお忘れなさいませ」


 アヤムは何食わぬ顔で立ち上がった。なんて安い土下座だ。


「うーわ。誠意の欠片すらないでやんの」


 アイはベッドから跳ね起き、アヤムの方を向く。


「でっ、冗談は抜きにして具体的にどうするの? 部屋にベッドは二つだけ。私たちは三人。誰かが床で寝なきゃいけないわ。なにで決める。じゃんけん、クジ引き、それともコイントス?」


「いいって。オレが床で寝るから」


 一応は男だ。こういうときの貧乏クジは率先して引くべきだろう。


「ダメよ。あんた自分が男だから損な役を買って出たんでしょうけど、そうはいかないわ。私はね、女だからって軽く見られるのが一番イヤなの。男女の偏見はなしで、ものごとは公平に決めるわよ」


 アイが強く異議を唱えた。


「ていうか、アヤムが床で寝るべきよ。あんたのミスが原因なんだから」

「お断りします。誰が地ベタでなど寝てやるものですか。もしそうなったなら、夜中にどちらかのベッドに潜り込みますよ。それでもいいのですか? これはマジな話です」


 アヤムは涼しい顔でアイの提案を拒否した。


「そうだ。いっそのことトモ君とアイが一緒のベッドで寝ればいいのですよ。これぞ妙案。みんなが得をする素晴らしい選択です!」

「ふざけないで! 誰がこんなやつと一緒に寝るもんですか」


 アイは一際激しく反論した。結構傷つくものがある。


「では私がトモ君と寝ることにしましょう。トモ君、今宵は優しくお願いしますね」


 そう言ってアヤムは頬を赤らめる。


「アヤム。私は、『ふざけないで』って言ったわよ……」

「そうですか、ではアイと一緒に寝るということで手を打ちましょう。私は激しいですよ。今晩寝かせませんから覚悟なさい」


 アヤムは相当浮かれているようだった。ベケットにいるときとは違い、惜しみなく茶目っ気を表に出してくる。これが彼女のプライベートの顔なのかもしれない。


「というわけでアイの体は私のものです、それ!」

「バッ、バカ、胸に触るな。すぐったい!」


 すなわち変態アヤム……。なんだかな……。


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