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民営騎士団は眠らない  作者: 実乃里
第二章 ビッグフレンドデーモン
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猫探し再度

 とりあえず、僕らは昨日と同じくヴィクトモンス公園に足を向けた。

 デーモン騒動のせいで露店もなければ、訪れる人もいない。周りの店はシャッターが下ろされ、まるでゴーストタウンのようだった。

 見晴らしのいい公園内を歩くも、ネズミ一匹いやしない。昨日発見したトンプスンアロマに行ってみるも、偶然が二度続くはずもない。

 気づくと僕らは公園のベンチに座り、途方に暮れていた。


「まるで発見できる気がしないわ。あんた、なにか策はないわけ?」


 隣に座るアイが疲れ切った声を出した。


「あったらとっくに実行に移しているって」

「使えないやつね」


 アイは不貞腐れたようにベンチに寝転がる。


「あー空が広い。雲一つない、最高の天気よー。みんなも外に出てくればいいのにー。なんで家に閉じこもってんのよー。アイスクリーム屋くらい営業してろってのー」


 両足をバタバタ動かし、完全に駄々っ子モードに移行してしまった。騎士にあるまじき姿だ。


「無茶言うな。みんなデーモンを怖がって家で大人しくしてるんだよ。お前も騎士の端くれならな……」


 ここで言葉を止める。ピンときた。


「そうか、みんな家にいるんだよ! 昨日だってここにいた人はみんな逃げた。危険な目に遭ったら自分の家に逃げるのは当然の反応なんだ。人も……、恐らく猫も……」


 アイはバタつかせていた足を止め、上体を起こした。


「奇遇ね。私もその可能性に思い当たっていたところよ」


 なんてベタな負け惜しみだ。


「そうか、オレたちは気が合うようだな」

「そうね。相性はいいかもしれないわ」


 アイの反応は友好的なものだった。


※ ※ ※ ※ ※


 僕らはすぐに、アスリットちゃんの自宅があるザウアー地区に向かった。

 ザウアー地区は居住区だ。住んでいるのは主に一般市民で、マンションや小規模アパートなどが多く立っている。

 リンドグレン家は地区の外れにある。平均サイズの一戸建て住宅で、僕の家と同じく平民の住まいと言ったところだ。


「あら。マイザさんにグローベルクさん。昨日はお世話様でした」


 ドアノッカーを鳴らすと、メルビュさんが応対に出てきた。


「どうぞ中へ。昨日のぶんまでゆっくりして行ってください」


 昨日はアスリットちゃんを自宅へと送ったあと、警察への説明があったためすぐに帰ったのだ。


「あっ、お兄ちゃんだ! 遊びにきてくれたの。わーい」


 リビングではアスリットちゃんが出迎えてくれた。


「私たちは仕事できたのよ。今朝からピッピを探しているところ」


 そう言ってアイは、メルビュさんが持ってきたコーヒーに砂糖をドバドバ入れる。


「街が大変な騒ぎになっている最中に、わざわざこんな依頼で動いてくれるなんて。なんとお礼を言ったらいいか」


 この分だと帰ってきてはいないらしい。当てが外れた。

 一応、今日ここへきた理由を話すと、メルビュさんは考え込む。


「その可能性はあるかもしれません。実は私も幼い頃、猫を飼っていた時期があるんです。カッレという名でした。不幸なことに飼い出して半年ほど経った頃でしょうか、母が猫アレルギーを併発してしまいました。やむなくカッレは遠くの親戚に預けたのですが、ある日、ひょっこり帰ってきて驚いた経験があります。ピッピもいずれ戻ってくるかもしれませんね」


 僕が思っていた以上に、猫の帰省本能は優れているらしい。


「アイ、今度はこの周辺を探さないか」

「そうね、ピッピは案外近所まできているかもしれないわね」


 アイが頷くと、アスリットちゃんが手を上げる。


「わたしもピッピ探しについて行くの!」

「いけません。悪い子は井戸に落としますよ。ピッピ探しはお兄ちゃんお姉ちゃんに任せて、アスリットは家に隠れてなさい。今街は危険なんですからね! 昨日だってあんな危ない目にあったのに!」

「ぜんぜん平気だもん。デーモンなんて弱っちかったよ」

「なにをバカなことを。昨日は運がよかっただけよ。デーモンはとっても恐ろしい魔物なのよ。ママは専門家だからよくわかるわ」


 専門家? ふと気になった。


「あのー、メルビュさんは専門家なんですか?」

「はい、私は大学でクリーチャーエコロジーを専攻しましたから。卒業後は魔導協会に就職し、そこで主人と知り合ったんです」


 魔導協会……。今朝の警部の話しと繋がってしまった。


「一つお尋ねしたいんですが。警察はあのデーモンが何者かによって召喚されたものと推理しているらしいですが、あなたはどう思います?」


 他言しても問題はないだろう。


「召喚は私の専門ではないので、なんとも言えません。主人が生きていれば有益な話を聞けたでしょうね。彼は召喚術のマスターでしたから……」


 ……アスリットちゃんのお父さんが召喚のマスター。色々と引っかかる事実が出てきた。


「なあアイ。アスリットちゃんと隣の部屋で遊んできてくれないか!」

「はあ? なんで私が」

「頼む、とても重要な役目なんだ。ほんの十五分ほどでいい」


 僕の真剣な眼差しを受け、アイは「仕方ないわね」と引き受ける。


「アスリットちゃん。悪いけどあなたの部屋に案内してくれないかしら。面白い漫画でもあるなら読ませてもらうわよ」

「レムリンが全巻あるよ。お姉ちゃんきっとハマっちゃうね」


 二人が二階に消えたのを見て、僕はメルビュさんと話し始めた。

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