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民営騎士団は眠らない  作者: 実乃里
第一章 バイト先は騎士団本部
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アイ

 その後、戻ってきた老人がデルタ高原の風景を撮影し終えたことで、依頼は達成となった。

 帰りは別行動となる。まず、一刻も早くセシールさんにみんなの無事を伝えるため、シャロンさんは乗ってきた馬で先に帰った。アイリスが乗ってきた馬車は壊れ、馬も逃げてしまったため、老人はエリーさんが乗ってきた馬車に乗った。


「それではお先に失礼しまーすぅ」

「なかなかスリルがあって楽しかったぞ。お嬢ちゃんも立派な戦いっぷりだった」


 老人の言葉に照れたのか、アイリスは微かに頬を朱に染めた。

 エリーさんが手綱を握り、馬車を発進させる。


「アイリスもエリーさんの馬車に乗って帰ればよかったんじゃないか?」


 アイリスは僕の自転車に乗って帰ることになった。言い出したのは本人だ。


「バカね。そうなったらあんたが一人で帰ることになるでしょ。冥精霊がまだいるかもしれないのに……」


 少し感動した。あのわがままアイリスが僕の安全を気にかけてくれるとは。

 いつものように、アイリスを荷台に乗せ、僕は自転車を漕ぐ。


「よく壊れなかったわね、この自転車」

「ああ、ミスリル合金製はダテじゃないってことだな。雨に濡れても錆ないんだぜ」


 冥精霊に体当たりが可能だったのも、この材質のおかげだろう。


「マジで! たかが自転車にミスリルなんて、メッチャ贅沢じゃない。もったいないわよ」

「おいおい、今まで散々乗せてもらっていて、その言いぐさはないだろ。それに、これがなきゃ君は命が危なかったんだぜ。むしろ感謝してほしいくらいだ」

「うん、助けにきてくれてありがとね」


 アイリスは素直にお礼を述べてきた。てっきり、「誰も、助けにこいなんて頼んでないわよ」とでも言われるのかと思っていた。これは意外な展開だ。


「ひ弱なやつと思っていたけど、そこそこ根性はあるようね。多少は見直したわ。ご褒美として、私のことを『アイ』と呼ぶ権利をあげるから感謝しなさい」


 なんと傲慢かつ、豪華な贈り物だ。嬉しくて笑いが込み上げてくる。


「ありがたく頂戴する。でっ、アイはホットケーキのトッピングはなにが好きだ?」

「スライスバナナにチョコレートソースがたっぷり載ったやつ。あと生クリームとカスタードクリームも必須。生地の間からメープルシロップが沁み出ていれば……、まあ、今日と明日くらい優しくしてあげてもいいわね」

「――了解。本部に戻る前に商店街に寄るからな」


 僕はトッピングの全体像を練りながら自転車を走らせた。

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