リースVSジーナその1
ジーナが手に持った槍で突きを放つ。
得意だと言っていた通り、その先端速度はツルギの斬撃に匹敵しそうだ。
私はそれを紙一重で避ける。
頬を軽く掠った。
……ってかヤバイ!
「はぁっ!」
ジーナはそのまま槍を横に薙ぎ払う。
私は咄嗟に頭を下げて避け、距離をとる。
「ちょっと待て!槍!?はぁ!?」
「驚くのも無理はありませんね……はぁっ!」
いや、ちょっと待てって言ってんだろうが!
『我空』による空間把握で薙ぎ払いを避ける。
しかしジーナは突き、薙ぎ、突き、また突きと、攻撃の手を緩めない。
「おい……っくそ!」
集中しろ!
とにかく今は勝負に集中だ!
この間合いでは槍が有利だ。
私はとりあえず後ろに飛んで距離をとった。
ジーナを狙って魔銃を構える。
「させません!」
「うぉっ!」
しかし、一瞬で精霊契約魔法を発動させ精霊を纏ったジーナが大量の『火弾』を発射。
私は避けるので精一杯だった。
そうだ。
遠距離では正直ジーナの方が有利だ。
私は魔弾と魔法を組み合わせたバリエーションの多い攻撃を遠距離において得意とするが、ジーナとは火力が違いすぎる。
テクニックなど全てねじ伏せられてしまう。
確かに遠距離は……キツイな!
私は地面を蹴り、急激にジーナとの距離を詰める。
ジーナは迎え撃つように右手で槍を突き出す。
ツルギと同等の速度ってのは確かに速いが、それはつまり『我空』で見切れない速さではないという事だ。
私は剣でそれをいなし、懐に潜り込む。
槍は長い分、懐が死角だ。
これであとは……
その時、ジーナが右手を振り下ろす。
それと同時に、槍が最初のように3本に分離した。
そしてジーナが持っている根元の棒、その先端から先程同様刃が飛び出した。
「んなっ!?」
『我空』が無ければ肩に深々と短い槍を突き立てられていただろう。
私は地面を転がり、二の腕を浅く裂かれた程度ですんだ。
「な、なんだそれ!今訳わかんねぇ事したぞ!」
「この3本の棒はそれぞれ両端から刃が出る仕組みになっていまして。そして魔力を流す事でそれぞれがくっついて合体、魔力を断つと分離します」
ジーナはまたもや3本の棒を1つに変化させて1本の槍にした。
分離すれば近距離での取り扱いも容易い。
槍の弱点である肉薄戦を克服している。
何より動きがトリッキーで読みにくい。
「お前これ……一朝一夕の技じゃないだろ」
「私の家、ロールクレイン家は代々軍人の家という事はリースさんもご存知ですよね?」
「ああ。ジーナの親父さんは軍団長だしな」
「私は一族では珍しく魔法の才能がありましたが、小さい頃よりお父様から武術の訓練を受けて参りました。お父様に教えていただいたのが……」
「槍術ってわけか。でも私は知らなかったぞ?」
「お祖父様は剣術以外お認めにならないのです。お父様は私にこっそり槍を教えてくださりました」
祖父さんというと、母さんを目の敵にするあのゾルドという爺さんか。
一回しか会った事ないけど頑固そうだったからなぁ。
「お父様は私には槍の才能があると仰ってくださりましたが、ピンと来なかった私は旅に出てからも剣を使い続けました。ですが、1年ほど前にこの槍に出会ったのです」
「1年ほど前?レディアスの街か?」
「ええ。それから密かに槍の練習をしていたのです。練習していくにつれ、みるみる上達していくのが自分でも分かるほどでした」
密かにって、本当にいつやってたんだよ。
1年間、私に毛ほども気付かせないって相当だぞ。
「なんで黙ってたんだよ」
「驚かせようと思いまして。こんな形になるとは思いませんでしたが」
確かにめっちゃ驚いてる。
まだ夢でも見ている気分だ。
遠距離では歯が立たないジーナが、近距離でも強くなってた。
これ……勝てんの?
「でも隠すとかでしたらリースさんだって、数年前から強力な防御魔法を使ったり、さっきもどこからか武器を出現させましたし……」
「まぁな……」
人の事言えんな私も。
面倒だったから、ジーナにもツルギにも空間魔法の事は言ってない。
この大会が終わったら話すか。
良い活用法のアイデアをくれるかもしれんし。
「リースさん、今日は勝たせていただきます」
「いや、ちょっと待て、まだ対策がだな……」
「問答無用です!」
ジーナが地面を蹴ると、彼女の体は空中を滑るように高速で近づいてくる。
風の魔法の補助を受けているのだ。
さっきシーベルも似たような事をしてた。
一度見ただけで吸収したのか。
ジーナの高速の突きを避ける。
しかし今度はそれだけでは終わらない。
ジーナ本人の攻撃に加え、風の刃が次々と襲ってくるのだ。
槍で攻撃しながら魔法を使う。
精霊契約魔法により、魔法構築に意識を割かずに済むジーナにしか出来ない芸当だ。
受ける私はたまったものではない。
「くそっ……『絶空』!」
意識を集中し、『絶空』を発動させて風の刃を全て受け止める。
時間が無かったため、構築が甘く不完全だ。
足を踏ん張って衝撃に耐える。
ジーナは魔法での攻撃にシフトしたようで、矢継ぎ早に魔法を放ってくる。
如何せん数が多い。
だがジーナの魔力も無限ではない。
このままのペースで魔法を使い続けたらいつか魔力枯渇を……
……は!?
魔力枯渇!?
しまった!




