リースVSツルギその3
「……おいおい!今の完全に首狙ってなかったか!?」
「何か不穏ね……」
「だ、大丈夫ですよね、ジーナさん!いつもの訓練でもこれぐらいの本気っぷりなんですよね?」
「………」
メルさんの問いに答えることは出来ませんでした。
リースさんとツルギさんが訓練として手合わせするのを何度も見てきましたが、さっきのような殺す気の一撃など見たことありません。
これが試合だという事を差し引いても、ツルギさんはそんな事をする方ではありません。
やっぱり様子がおかしい。
そして……リースさんも……
「おい、なんかリース光ってないか?」
「そ、そうね……あれは……銀色?」
「あれは何の魔法なんですぅ?」
「……」
リースさんの周囲を白銀の光が包み込んでいます。
あんな技を使うリースさんも見た事がありません。
一体2人に何が起きてるの?
私は不安です。
2人が、私の知らない2人みたいで。
この試合の後、私達は以前のような関係に戻れないんじゃないか。
そんな気さえします。
「嬢ちゃん、目を逸らしちゃいけねぇよ」
その時、私の肩に大きな手がポンと置かれました。
「ボレアス……さん?」
「2人は今、全力でやりあってるんだ。全てをさらけ出して、お互いを知り合ってるんだ。だから嬢ちゃんも目を逸らしちゃいけねぇよ」
「で、でも……2人が2人じゃないみたいで……」
「人は誰だって隠してるもんがあるさ。それを目の当たりにしても、きっちり見てやるのが仲間ってもんだ」
「仲間……ですか」
そうだ。
私は2人の仲間としてこれを見なきゃいけない。
見届けなくちゃならない。
そして試合が終わったら……
笑顔で2人を迎えよう。
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「アハ♪今何したの?」
「つっ……知るか!」
これは本当だ。
今、私は確実に首を落とされた。
肉を刀が斬り分ける感覚さえ、まだ首に残っている。
ああ、私は今死んだはずだ
「でもやっと本気を出してくれたんだね?嬉しいよぉ~」
「……そうみてぇだな」
そう、今私の体は銀色の光を放っている。
アビリティが発動したのだ。
いつも寸前で発動しやがって、こいつ……
「これで、もっと……もっと楽しくなるね!」
「はぁ?こうなったからには、あとはお前をボコって終わりだよ」
「いいね!その威勢!やってみなよ!」
目の前の悪鬼が刀を構えて飛びかかってくる。
「『炎熱槍』!」
私は後ろへ下がりながら魔法を放つ。
今、私は魔法の構築速度も跳ね上がっている。
3本の槍がほぼ同時に現れ、空中のツルギに向かって放たれる。
「効かない☆」
「知ってんよ」
『炎熱槍』を易々と斬り刻み、霧散させたツルギによる攻撃を私はさらに下がって避ける。
「ねぇ、逃げないでよ~。斬らせておくれよ~」
「うるせー」
アビリティ……ここは鬼モードとかでも命名しとくか……鬼モードを使われてしまったら、もう近接戦をする意味もない。
あとは私のしたいようにさせてもらうさ。
「ホラ!ホラ!」
「くぬっ……!」
今のツルギの動きを目で追うことは全く出来ない。
だが私には『我空』がある。
さっきツルギを見失ったのは、奴だけがアビリティを発動させていたからだろう。
今は正常に機能している。
鬼モードのこいつは相当エグい動きをするが、今の私には捉えられないこともない。
「んじゃ、これは?」
ツルギが足で砂を巻き上げる。
初めは翻弄されてしまったが、もう無駄だ。
「『三頭火炎弾』!」
火炎弾は私が放った瞬間3つに分かれて別々にツルギを襲う。
この魔法はツルギに見せたことはない。
だが初見にも関わらず、奴は難なく避けた。
「それが『切リ札』って訳じゃないよネ?ネ?」
「くっ……」
マジかよアレ避けんのか!
てか今の動き、人間技じゃねぇ!
これは温存とか言ってる場合じゃねぇな。
そんな事してたらこちらが殺られてしまう。
パァン!パァン!
魔弾を立て続けに2発放つ。
だがそれをツルギは先程同様、スイッと両手の刀で軌道を逸らしてしまう。
だが、これで隙が出来る。
パァン!
いくら鬼モードといっても腕は2本だ。
2発の弾をそれぞれの腕の刀で捌けば、その間隙が出来る……と思ったのだが……
「ム☆ダ」
だが、その時既にツルギは刀で受け流す構えに入っていた。
こいつ、まだ速くなるのか!?
ツルギの刀が最後の1発も受け流した。
「クッソ!」
パァン!パァン!パァン!パァン!
「ムダムダムダ♪」
私は魔弾を全て撃ち尽くす。
ツルギは片っ端からそれを受け流す。
1発目、2発目、3発目……
そして最後……
ここだ!
「………ッ!?」
鬼モードになってから初めてツルギの顔に驚きが見えた。
魔弾がツルギの刀に触れる直前、軌道を変えたのだ。
そこはまだ私の絶対領域内だ。
『我空』によって弾道を変更したのだ。
魔弾は物理法則を無視した動きでツルギの脇腹に刺さる。
鮮血が巻き上がる。
うわ、少しやりすぎちゃったかも……
「アァ……イイ……この痛ミ……生きてる事ヲ実感させテくれル……リース、今君ニ愛サレヨウトしてルんだネ!」
このイカれた少年には要らぬお世話だったようだ。
ブシュウッと彼の脇腹から血が噴き出している。
だがツルギは気にするそぶりも見せずにこちらに突撃してくる。
もう魔弾は無い。
どうしよ……




