目と目
「リース!2回戦進出おめでとう!」
「あのボレアスさんに勝っちゃうなんてね」
「何が起きたか全く分からないけど、凄かったですぅ」
「さすがリースさんです!」
「お、おう……」
観客席に戻ると、皆が私を祝福してくれた。
皆すごく興奮していて、口々に喋りかけてくる。
だが私の耳にはほとんど入らない。
「なぁ、ツルギはどこいった?」
「ツルギか?」
「ツルギなら先に帰るって」
「そういえば何か様子がおかしかったですねぇ」
「何か悪いもんでも食ったんじゃ?」
「ヒロさんと一緒にしないでですぅ!」
先に帰ったのか……
アビリティについて、知ってる事を聞きたかったんだけどな。
「ツルギの様子がおかしかったって?」
「うーん。調子が悪そうとかではなくてですね。むしろ目がギラギラに光ってて、何か怖かったです……」
「ギラギラ?」
ギラギラねぇ……
まぁ宿に帰ったら話が聞けるか。
--------------------
さっきから心臓の鼓動が止まらない。
早鐘のように脈打っている。
何だ。
この感情は。
いや……
「僕は知ってるじゃないか……」
「のう、お主」
その時、聞き覚えのある声がした。
ここはゾディアスの街でも人通りの少ない通り。
多分呼ばれたのは僕だ。
顔を向けるとそこにいたのは昨日会った女性、ミリアーナさんだった。
「ミリアーナさんじゃないですか……一体どうしたんですか?」
平静を取り繕ってそう言う。
今日はこんなに暑かったか?
さっきから汗が止まらない。
「ツルギ、お主、見えておったな?」
「見えた?何がですか?」
「とぼけるでない。分かっておるじゃろ。あの2人の攻防がじゃよ」
ミリアーナさんの黄金の眼が僕を貫くように捉える。
僕は目を合わせる事が出来ない。
「何でですか?」
「あれだけキョロキョロしておったらそりゃあ分かる。多分ボレアス辺りも気づいておったぞ」
2人の技がぶつかった瞬間、数秒間だけ周囲の時間が止まっていた。
その時動いていたのは戦っていた2人だけ。
でも僕も動く事ができた。
目の前の光景が信じられず、周りを見渡してしまった。
ミリアーナさんもあの中で動けた1人に違いない。
そして僕を見つけたのだ。
「2人の会話は聞こえたのかのぅ?」
「……ええ。あの時は本当に静かでしたから」
「アビリティについては?」
「詳しくは知りません。でも何となくは……」
ミリアーナさんは僕に詰問をするように質問をしてくる。
そしてその間に一歩、また一歩と僕との距離を縮める。
「心当たりがあるんじゃな?」
「……ええ」
「妾もリースからの手紙で何となくは分かっておった」
そしてミリアーナさんは僕の目の前にまで来た。
息がかかりそうな距離だ。
僕は思わず視線を下げる。
「お主は鬼人族で、クサナギとツバキの息子。だから持っている可能性が高いのは1つじゃ」
「………」
「目を合わせてくれんかの?」
耳元でそう囁かれて、思わずビクッと体を震わせる。
そしてミリアーナさんと目が合った。
「ようやく目を合わせてくれたの。お主は警戒心が強いのか、まだ心を開いてくれてはおらぬようじゃったから」
目線はほとんど変わらない。
少し高いぐらいかもしれない。
その目はまるで宝石のような黄金色。
吸い込まれそうな錯覚すら覚える。
なんて綺麗な……
「ふむ。やはりの」




