『剣王』
「すっげぇぇ!!」
「何?最後何が起きたの?」
「全然分からないですぅ」
おお、奇遇だな。
私もよう分からん。
シーベルが本気出して、何か呪文を詠唱したらめっちゃくちゃ速く移動して、でも攻撃をジーナは土の精霊契約魔法で防いで、シーベルが放った風の中級魔法の雨をジーナが火属性魔法で一掃して、ジーナがよく分からない魔法を見せたらシーベルが降参した。
私の目で見たところ、こんな感じだ。
最後の魔法は多分、複数の精霊契約魔法の複合技だな。
でも精霊が見えない私には何が起きたのかイマイチ分からない。
「ジーナ、いつの間にあんな事できるようになったの?」
「私も初めて見た」
「リースも知らなかったのかい?」
「ジーナには、常に切り札の1枚や2枚用意しとけって言ってるからな」
教育の成果か、私に対しても秘密主義だ。
まぁいいんだけど。
「ジーナはここ2年ぐらい近接戦の強化に努めてきたからな。あいつが近距離でも戦えるようになってるのは知ってる。でも最後のは初めてだ。何が起きたか分からん」
「リースにも分からない魔法なんだ」
「私には精霊契約魔法はさっぱりだよ」
でもシーベルはあの魔法を見てすぐに降参したな。
あの魔法に関して何か知ってるのかもしれない。
後で聞いとこう。
「リースさん!」
お、勝者の凱旋だ。
「ジーナ、2回戦進出おめでとう」
「最後のあれ、一体なんなんだ!?」
「いやヒロ、最後のだけじゃなく全部何が起きたか教えてもらいましょ!」
「教えろですぅ!」
「は、はい……でも一部は秘密にしておきたいので……」
ジーナは私やツルギをチラチラと見ながらそう言った。
ほぅ……
「敵には教えられないってか?」
「ジーナも言うようになったね」
「そ、そういう意味ではなく!」
「おーい!」
デカい声が私達の会話を遮った。
向かってくるのは大男。
ボレアスだ。
「嬢ちゃん、さっきの試合すげぇな!ブランクがあったとはいえ、シーベルがあんなにされたのを見たのは久しぶりだ!」
「あ、ありがとうございます……」
「いやー!正直ギルドマスターの言葉も半信半疑だったんだが、確信した!お前らは面白い!これは試合が楽しみだ!」
「ああ……そうだな」
ボレアスと目が合った。
彼がニヤリと笑うので、私も笑い返した。
「じゃあな!試合で会おう!」
ボレアスは言いたい事は言い終えたようで、満足して去っていった。
「リ、リース……本当にあの人と戦うのか?」
「現役のA級冒険者よ……?」
「危なくなったらすぐ降参するですぅ!」
「3人とも心配するなって」
私の一回戦の相手。
それは『剣王』ボレアスだ。
「存分にやってくるといいよ」
「リースさんなら絶対勝てます!」
「おう!」
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「シーベル選手、大丈夫ですか?医務室までご案内しますが……?」
「いえ、大丈夫です。ありがとう」
係員の申し出を断って、観客席に戻ることにする。
怪我らしい怪我もしていないし、少し魔力が枯渇気味なぐらいだ。
わざわざ医務室に寄る事もない。
それにしてもジーニスタちゃんの最後のあの技……
あれは四属性全ての精霊の加護が込められた魔法。
風の精霊の加護しか受けられない私に対抗できる魔法は無い。
最後まであきらめないことは確かに美徳ではあるが、往生際が悪いともいえる。
一流の冒険者として引き際をわきまえる事も大事よ。
「はあ……強くなったわね彼女」
「お前は鈍ったんじゃねぇか……?」
聞きなれた声がした。
ここには選手と関係者しか入れない。
私にこんな口調で話しかけるのは1人しかいない。
「うるさいわよボレアス。仕方ないでしょ」
「まぁさすがの『暴風の魔女』様といえど、10年のブランクには勝てなかったという事か」
そこには見慣れた大男、ボレアスが立っていた。
「まぁ俺が仇をとってきてやるよ」
「あなた、リーシアちゃんを虐めちゃだめよ」




