予選最終試合
『長かった予選も次が最後です!決勝トーナメント最後の切符を手にするのは一体誰なのでしょう!』
時刻は夕方。
予選も最後の1グループが始まる。
歓声の中、第16グループの面々が続々と入場してくる。
「ふわぁ〜」
私は欠伸をしてしまった。
正直、もう疲れた。
これまで決勝トーナメントに進出を決めたのは、有名な冒険者や魔術師、戦士など。
だが初日のシーベルやボレアスのような実力者はいそうに無かった。
今回のトーナメントの強敵はツルギ、ジーナ、シーベル、ボレアスの4人だな。
今舞台上にいる奴らの中にも強そうな奴はいなさそ……
ん……?
『では最終試合……開始!』
ドォン!
司会の開始の合図とともに、巨大な火の魔法が空へ放たれ、上空で爆発した。
会場は静まり返る。
参加者達ですら何事だ?とその魔法の元をたどる。
『あー、あー……司会の方、一つお聞きしたいのですが』
『えっ……あ、はい!何でしょう!?』
拡声魔法を使い、その人物は司会に呼びかける。
呆然としていた司会もその言葉で我に返る。
『確か決勝トーナメントでは場外負けはありませんでしたね。私の認識が正しければ、もうこの試合でこの舞台も用済みだと思うのですが、どうでしょうか?』
その美しい声に観客全員が魅了される。
小さい頃にとある冒険譚で読んだ、海の旅人を美しい声で惑わすセイレーンという魔物が思い浮かんだ。
参加者も含め、会場中がその声に聞き入る。
『えーっと……そうですね。もう必要ないとは思いますが……一体何を……』
その人物は仮面を被って目の部分を隠していた。
服装は至って普通。
長い赤髪を頭の横で結び、サイドテールにしている。
多分女性……なんだが……
おい……あれってまさか……
『良かった』
その女性は口をニヤリと歪ませそう言うと、拡声魔法を解いた。
そして背中に背負った大剣を抜き、構える。
それからは一瞬だった。
女性が大剣を舞台に叩きつけた瞬間、舞台全体にヒビが入ったのだ。
そして舞台が土煙をあげて崩壊する。
土煙が晴れた時、あんなに広かった舞台が消失していた。
その女性の足下を残して。
『…………けっ……決着!……でいいんですよね?』
司会さえも勝敗を迷う結果だが、まぁルール上は勝ちだな。
他の参加者達は舞台の上にいないから場外負けだ。
周囲がザワザワとしだす。
今目の前で起こった事が信じられないといった様子だ。
だが、事実だ。
『え、えーっと。決勝進出おめでとうございます。こんな方法誰も思いつきませんでしたよ!お、お名前は……伺ってもよろしいでしょうか?』
司会がその女性に近づき、インタビューを始める。
語尾が疑問なのは、女性が仮面をつけているからだろう。
正体を聞いても良いものか、と思ったのだ。
『ありがとうございます。大丈夫です。この仮面は予選の間だけと決めておりましたから』
そして女性は仮面を外す。
その下から現れたのは、絶世の美女。
端正な高い鼻に、妖艶な唇。
そして黄金色に輝く宝石のような瞳。
随分成長したが、その顔を間違うはずがない。
『私はミリアーナ・スカーレット。セリーア魔法学園3年生首席です。以後お見知り置きを』
ミリアーナ・スカーレットと名乗ったその女性は優雅に一礼する。
そして顔を上げた瞬間、明らかに私と目があった。
ウィンクしたし。
ジーナは困惑したような顔でこちらを見た。
「リ、リースさん……」
「はぁ……本当に何考えてるんだか」




