A級の男と女
「お、ヒロ頑張ってるじゃん」
第10グループ予選。
出場するのはツルギとヒロだ。
ツルギは2本の刀を自在に操り、どんどん参加者を場外に叩き出している。
対するヒロは、場外の間際まで追い込まれながらも驚異の粘りを見せ、残り10人にまで残っていた。
「ヒロさん、腕を上げましたね!」
「でしょう、ジーナさん。ヒロさんは強いんですよぉ〜」
「むぅ。悔しいわね」
2年前までD級だったのに、今はなんとか自分より年上の大人達と渡り合っている。
その努力は素直に賞賛に値する。
「あぁ、やっと見つけたわ」
その時、何者かが近づいてくる気配がしたので振り返る。
後ろにいたのは……
「シーベルさん!?」
「シーベルさんですぅ!」
「アイリスちゃん、久しぶりね。メルちゃんも昨日ぶり」
昨日第6グループを勝ち抜いた、ベルルのギルドの受付嬢、シーベルだった。
そしてその後ろにいたのは……
「おー。こいつらがマスターが言ってたガキどもか」
「ボレアス……さん!」
A級冒険者、『剣王』ボレアスだ。
近くで見るとかなりデカい。
「リーシアちゃん、ジーニスタちゃん、久しぶりね。覚えてる?」
「お、お久しぶりです」
「久しぶりだな。まさかここまで強いとは思わなかったが」
覚えてるかどうか聞かれると微妙だな。
名前知らなかったし。
「で、何の用だ?」
「少し挨拶しようと思ってね」
「ああ。知ってるかもしれんが、俺はボレアスだ。よろしく」
「リーシアだ」
ボレアスが差し出した手を取る。
デカい手だ。
それにゴツゴツしている。
熟練の冒険者の手って感じだ。
「おお、そういえばこっちの嬢ちゃんも決勝に残ってたよな!よろしくな!」
「よ、よろしくお願いします」
ボレアスがジーナに対しても同様に手を差し出し、彼女は恐る恐るその手を取る。
「ボ、ボレアスさん!同じギルドのアイリスです!」
「メルですぅ」
「お、お前らもウチのギルドか。よろしくな」
彼は全員と握手を交わしていった。
案外気さくな性格だ。
「ど、どうしてシーベルさんやボレアスさんがこの大会に!?」
「私だって出るつもりは無かったんだけどね……引退した身だし」
アイリスの問いにシーベルは肩をすくめる。
「マスターが出ろって言うのよ」
「お前が出るって事はそれだけじゃないんだろ?何かマスターに弱みでも握られたか?」
「うるさいわよ、ボレアス!」
2人は見た目は歳が離れていそうだが、随分親しげに話す。
実は歳が近いのかも。
「俺は諸国をフラフラしてたら、シーベルに見つけられてここまで連れてこられたってわけだ。活きのいい新人がいるって話でな」
「活きのいい新人?」
「あなた達の事よ。リーシアちゃん、ジーニスタちゃん、それとツルギくん」
私達か?
何で?
「あなた達へのインタビュー記事があったじゃない。そこに闘技大会に出るかもってあって、そしたらマスターが『面白そうだから』って」
相変わらず何考えてるんだあの人。
ていうか、理由はそれだけじゃないな。
マスターとしての仕事を強制するシーベルがいなくなって、今頃ツバキさんは思う存分休日を楽しんでいるだろう。
「ま、そういう事だ。決勝で当たったらよろしくな」
「ああ。手加減はしない」
「俺としては少しくらいしてくれたら嬉しいがな」
『決着です!』
あ、そんな事話している間に予選が終わったようだ。
舞台の上に立っているのは……ツルギだ。
まぁ順当だな。
ヒロは場外に倒れていた。
いつやられたんだ?
見てなかった。




