特別
『さぁ、お待たせいたしました!只今より、ゾディアス王国四年に一度の祭典、ゾディアス闘技大会を開催致します!』
風の魔法を応用した拡声魔法により司会の女性の声が闘技場中に響く。
選手控え室のここまで聞こえるんだな。
控え室にはこれから始まるバトルロワイアル第1グループ、約40人ほどが思い思いの時間を過ごしている。
試合前に精神統一をする者。
武器の点検を怠らない者。
すぐ近くの参加者と喧嘩を始める者。
随分雑然としている。
このクロイツ家の嫡男たる僕がいるべき場所ではない。
自惚れではないが、僕は生まれてこの方挫折という物とは無縁だ。
僕は勉学でも剣術でも誰かに負けた事はない。
学園でも僕は首席だ。
おそらくそんな僕を見て、父上も「上には上がいる事を知ってこい」と仰ったのだろうが……
周囲の人間を見ていると、それほど強い者はいそうにない。
結局僕は他の者達とは住む世界が違うのだ。
こんな茶番、正直やってられない。
だがやるからには勝つ。
クロイツ家の跡継ぎとして、その名を王国中に轟かせる。
そして民にも父上にも僕が特別な事を証明してみせる。
「予選が始まりますので移動して下さい」
係員の導きにより、部屋の中にいた全員が闘技場まで移動した。
初めてゾディアス王国の闘技場に入ったが、思っていたよりも立派だ。
円形に囲むように観客席が並び、その中央にステージのような舞台がある。
観客席は満席だ。
数万人は観客がいそうだな。
ルール説明は既に受けた。
バトルロワイアルルールではこの石畳で出来た舞台の外に出ると負けだそうだ。
これだけ参加者がいると、舞台上もさぞや狭くなるだろうと思ったが、全員が乗っても十分なスペースがある。
走り回っても問題なさそうだ。
運悪く押し出されてしまうこともない。
『えー。それでは闘技大会予選第1グループのバトルロワイアルを始めます!』
観客が司会の言葉に沸く。
僕にはその光景すら野蛮に感じられる。
こんな低俗な試合、早く終わらせたい。
僕は腰の剣に手をかける。
『それでは……はじめ!』
司会の『はじめ!』の合図とともに、僕はすぐそばの男に斬りかかる……つもりだった。
「……は?」
身体を襲ったのは急激な浮遊感。
僕の身体はまるで宙に釣り上げられるように巻き上げられ、落ちた。
場外だ。
「な、なんだ……」
「なんなんだ、今のは」
「お、俺は……」
周りを見渡すと、同じように場外まで飛ばされた参加者達が困惑していた。
舞台の上に目を向ける。
そこに立っていたのはたった1人。
『け……決着!』
それは銀髪の小柄な少女だった。




