とある少年の恋路
最近、気になる娘がいる。
冒険者から聞いたのだが、彼女も街の外から来た冒険者らしい。
今日もギルドの前でその娘が出てくるのを待つ。
今日こそは、今日こそは話しかけるんだ!
「……来た!」
ギルドから出てきたのは、目もくらむような美少女。
さらさらとした銀色の髪。
端正な鼻。
真っ赤で神秘的な瞳。
絹のようにきめ細かい肌。
多分年は俺より少し下ぐらい
「きょ……今日は1人なんだな……」
いつもは黒髪の女の子と鬼人族の男が一緒なんだけど、今日は別々みたいだ。
「チャンスは今日しかない……」
今日こそ、俺は……
あの子に……
告白するんだ!
とはいっても……
どう話しかけたものか。
今日しか……今日しかチャンスはないんだ!
さっきからやたらとキョロキョロしてるぞ……
もしかして……迷ってる……?
ならば!
「お、おう、お前、見ない顔だけどどうしたんだ?」
「ん?」
道に迷った子に声をかける事は自然なはずだ。
「ああ。暇だから街をぶらぶらしてるんだけど、どこに行ったものか……とな」
「へ、へーそうなのか。あ、そうだ。俺も今暇だから、何だったら案内するぞ」
「え、いいのか?」
「お、おう!」
「助かるよ……えーと」
「お、俺はアレン。アレン・インゴルズだ」
「へーそうか。私の事はリースと呼んでくれ」
インゴルズの家名を聞いても反応なしか……
ま、まあ外から来たんなら仕方ないよな……
それより、リースっていうのか……
「よ、よろしく!リース!」
「ああ。アレン」
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ジリルの街には多数の名所がある。
ジリル港はもちろん、ジリル美術館に、ジリル市場、ジリル公園……
だがリースは全部行った事があるという。
で、結局来たのが……
「いやー釣りなんて久しぶりだ」
「本当にこんなところでいいのか?」
来たのはジリル港の隅。
あまり人も寄り付かないところだ。
「ここなら釣れるんだろ?」
「あ、ああ。よく釣れるよ」
「じゃあいいじゃん」
近くの漁船から借りた竿を垂らす。
ここは人が全然来ないから、入れ食い状態だ。
だが……
「うーん。全然釣れない」
何故かリースだけ釣れない。
ま……まずい。
これだと飽きられてしまう可能性が……
「どうやって釣るんだ?」
「ちょっ……近いよ」
「何かコツがあるんじゃないのか?」
「動かし方があってだな……ちょっとごめんよ」
俺はリースの後ろから手を回して竿の動かし方を教える。
リースは小さいから、簡単に出来た。
ふわー!
めっちゃ良い匂いするんだが!
ハッ!
きちんと教えねば!
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「やっぱアレンには叶わなかったな」
「リースも初めてにしては上出来だよ」
魚群が過ぎ去ってしまったのか、その後の釣果はイマイチだった。
だがリースは満足してくれたようだ。
釣った魚は竿を借りたお礼に漁船の船長にあげた。
そして今はギルド方面への道を歩いている。
もう夕暮れ時だ。
「いやぁ。アレンはこの街のことよく知ってるんだな。あんな場所知ってるなんて」
「俺はこの街で生まれ育ったからな」
「へぇ〜。私もここと似たような港のある街の近くで育ったんだ」
「そ、そうか。奇遇だな」
何か話さないと……
何か……
「リースは冒険者なのか?その歳ですごいな」
「そうか?割と私くらいの歳の子供もいるぞ。一緒に旅してる2人も同い歳だし」
「ていうか何歳?」
「そろそろ9歳だな」
「9歳なのか……」
7歳くらいだと思ってた……
ていう事は1つ下か。
「アレンも冒険者になってみたらどうだ?」
「それもいいけど、俺は父さんの跡を継いで海軍に入るんだ」
「へー。親御さんが海軍所属なのか」
「ああ。自慢の父さんだ」
っと、そこで思い出した。
告白っ!
しないと!
「あ、あの……!」
「ん?」
こっちを見たリースと目があう。
夕暮れの赤い光線が彼女を照らし、その綺麗な銀髪を際立たせている。
「どうした?」
「えっ……ああ!」
やばい。
少し見惚れてしまっていた。
今度こそ!
「じ、実は……!」
「おう坊主、嬢ちゃん、デートかよ」
低い男の声が俺の言葉を遮った。
ていうか、この通りは……
まずい!
「お?いいねぇ青春だねぇ」
「おじさん達も混ぜてよぉ〜」
声のした方には街のチンピラが3人立っていた。
そう、ここはチンピラ達がたむろしている治安の悪い通り。
巡回の兵士の目も届きにくい。
いつもなら絶対通らないのだが、少し浮かれて気を抜いていたようだ。
「こ、断る……」
「ああ?なんて?」
「もっとデカイ声で言ってくれよ」
チンピラ達が顔を近づけてくる。
臭い息がかかる。
チンピラは子供の俺よりも大きい。
まともに戦って勝てるわけがない。
リ、リースだけでも守らないと!
俺はリースを庇うように後ずさりをした。
「断る!」
「ああ!?舐めてんじゃねぇぞガキ!」
「自分の立場ってもんが分かってない奴は長生きしねぇぞ」
「やっちまおうぜ兄貴!」
チンピラの1人が殴りかかってくる。
殴られる!
俺は目を閉じた。
「はぁ……こういう輩はどこにでもいるんだな」
「え?」
その時、後ろにいるはずのリースの声が前からして思わず目を開けてしまった。
リースが俺の前に立って、チンピラの拳を受け止めていた。
「なっ!?」
「このガキ!?」
「返すよ」
そしてチンピラを投げ飛ばして、他の2人にぶつけた。
チンピラは吹き飛ばされて気絶してしまった。
「リ、リース……」
「ふふ。守ってくれたのは嬉しかったぞ。でも海軍を目指すんなら、もっと体を鍛えないとな。あそこの訓練はキツいぞ」
リースは特に大した事もなさげにそう言った。
「じゃ。ここまで送ってくれてありがとう。こいつらみたいなのに絡まれないように気をつけて帰れよ」
「え……ちょ……」
そう言ってリースは行ってしまった。
止める隙も無かった。
「………体鍛えよ」




