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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第四章 北方編
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月夜の迷子

「うわ……すげぇ月」


 私はジリルの城壁の外の岸壁で思わずそう呟いてしまった。

 周りには今誰もいない。


 今日は満月だった。

 丸い月が海面に映って、まるで2つ月があるみたいだ。


 今は夜の見張りの仕事の休憩時間だ。

 城壁の上で魔物等、何か来ないか寝ずの番をする仕事だ。

 いつもギルドの冒険者が持ち回りで務めているのを手伝っている。

 一時的な滞在とはいえお世話になっているからな。


 何となく城壁の外に出てみると、この月に目を奪われたということだ。


 てか、ここ断崖絶壁じゃん。

 危ね。

 戻るか。


「うっ……うっ……」


 その時、子供のすすり泣く声が聞こえた。

 辺りを見回すと、水人族の子供が近くの草むらで泣いていた。

 私より小さな子だ。


「お前、何してんだ!?危ないだろ!!」

「ひっ……!」


 思わず叫んでしまって驚かせてしまったようだ。

 私は少年に駆け寄る。


「お姉ちゃん……だれ?」

「外から来た冒険者だ。お前こそ、こんなところにいると危ないぞ。夜はこの辺りにまで魔物が出るんだ」

「お母さんが……お母さんがいなくなっちゃったの……」


 母親もいるのか?

 私は辺りを見回すが、それらしき人影は見当たらない。


「母さんとはぐれたのか?」

「ううん……いなくなっちゃったの」


 一緒じゃねぇか。


「分かった。姉ちゃんがお前の母さんを探してやるから、お前は一度街に戻ろう」

「うっ……嫌だ!お母さんと一緒じゃなきゃ!うわぁーーん!」


 いよいよ大声で泣き始めてしまった。


「ああ、もう……泣くなよ……」

「うわぁーーん!!」



--------------------



 少年はどうしても動こうとしてくれない。

 無理矢理引っ張っても良かったのだが、どうにも気が引けた。


 私は少年の側に屈み込み、その背中をさする。


「姉ちゃんが絶対見つけてきてやるから……お前がいると探しにいけねぇんだよ……」

「うぅ……おかあさーん…」

「はぁ……」


 どうすればいいんだよ……

 なんとか少年を落ち着かせようと優しく話しかけ続けた。

 すると段々泣き止んできた。


「うぅ……ねぇ、お姉ちゃん……」

「なんだ?」

「死んじゃったらどうなるの……?」


 な、なんだ急に?

 死んだらどうなるか……?

 なんでこんな小さな子が……

 お母さんが死んでるかもって思ってるのか?


「大丈夫だぞ、姉ちゃんが母さんを見つけてやるから」

「ねぇ……死んじゃったらどうなるの?」


 少年は顔を上げて、泣き腫らした目でこちらをじっと見つめている。

 何なんだよ本当に……


 死んだらどうなるか……ね。

 死んでも私はこうしてここにいる。

 邪神の使徒の言ってた感じだと、私みたいなイレギュラーじゃなくても記憶を無くして転生は出来るみたいだし……


「大丈夫だ。良い行いをしてれば、神様のところに行けて、もう一回生まれ変わらせてくれるんだ」


 小さい子供に言い聞かせるくらいならこんなもんだろう。

 まぁ神様といっても、くたびれた使徒かもしれないけど。


「怖くない?」

「……ああ。怖くない。だから大丈夫だ」


 私は少年の頭をポンと撫でた。

 すると少年は落ち着いたようで、完全に泣き止んでくれた。


「ふぅ……ほら、街に戻るぞ」

「うん……あ!お母さん!」

「は!?ちょっ!危なっ!」


 少年はそう言うと立ちあがって走っていった。

 月明かりに照らされているとはいえ、ここは岸壁に近い。


 少年が走っていった先には、水人族の女性が立っていた。

 月明かりのせいか、こころなしか青白く見える。


「はぁ。あんたがその子の母親だな?無事で良かった。早く戻ろう」


 そう声をかけると、女性はふわりと微笑みお辞儀をした。


「じゃーね、お姉ちゃん!ありがとう!」


 少年も私に向かって手を振る。


「いや、だから戻るぞって……は?」


 その時、私は目を疑った。

 親子の姿が少しずつ薄くなっていき、その場から消えてしまったからだ。


 すぐに辺りを見回すがその姿はどこにもない。


「な……」

「リースさーん!」


 その時、街の方向からジーナが走ってきた。


「何してるんですか?休憩終わりますよ」

「な、なぁジーナ。さっきここに人が……」

「え?城壁の上からリースさんは見えてましたけど、他に人なんていませんでしたよ?」

「は……?」


 ちょっ……何言って……


「気をつけてください。この間、水人族の親子がこの岸壁から落ちて亡くなったらしいですし」

「ここから……水人族の……親子?」

「行きましょう!オーガスさんが早く代わってくれと仰ってました」


 ジーナに手を引かれて私は街の方へ引っ張られる。

 なぜ気づかなかったのだろう。

 私が少年を見つけた草むらのところに弔いの花束があるのを。

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