山脈街道
「頼んだ!ツルギ!」
「よし!てやぁ!!」
ツルギが化け物の……キマイラの首を2つとも切り落とした。
今日はまた一段と剣術のキレがいいな。
「お疲れ様です。リースさん、ツルギさん!」
「ジーナもありがとう。あの時の援護は助かったよ」
「腕を上げたな。ジーナ」
イェリデ山脈を南北に縦断する山脈街道。
その山脈街道から外れた山中に私達はいる。
目的はこのキマイラの討伐だ。
「いやぁ3人ともお疲れ様」
「なんかお前にそう言われるとムカつくなぁ」
「リース、ニミルさんの補助があるからこんなに楽に戦えるんだよ。そんな事言っちゃダメじゃないか」
確かにニミルの補助魔法は凄い。
筋力増大の効果をもつ魔法や加護を与える魔法。
中でも聖属性加護はとんでもなく便利だ。
この加護魔法により、キマイラの血が体に触れる前に霧散するのだ。
なんでも、魔物の血は聖属性に触れると蒸発してしまうらしく、これでキマイラとの近接戦が可能となった。
おかげで3人じゃあんなに苦戦したキマイラも瞬殺だ。
「はは。手伝ってもらってるのはこっちだからね。これぐらいらお安い御用さ」
「そういえば、言ってたキマイラはこれで最後か?」
私達の泊まる宿に来たキザ男は私達にある頼み事をした。
それはイェリデ山中のキマイラの掃討。
キールは既にイェリデ山中の調査を行っており、その結果地下水路にいたキマイラと同じ魔物が複数体確認された。
仕事の速い男だ。
それをキールからの報告によって知ったキザ男は迅速な対応が必要だと判断し、私達に協力を仰いだ。
彼1人じゃあキマイラを倒せないからだ。
ここ数日、イェリデ山中を歩き回り倒したキマイラはこれで5体だ。
「うん。キールが継続して調査を行ってくれているけど、この辺りにはもうあの化け物はいないようだ。あとはしばらく様子見だね」
「という事は……」
「うん。約束通りジリルまで送ろう」
「やった!」
代価として、全てのキマイラの討伐が完了次第、私達をジリルまで送ってくれるというのだ。
ジリルに行けず困っていた私達には願ったり叶ったりだ。
「普通のC級冒険者だったら、入国審査で1日止められるなんてザラだけど、今回は僕から話を通しておいたから顔パスだよ」
「おお!本当か!」
「惚れてもいいんだよ」
「まさか」
「もう!ニミルさん!」
ジーナが頬を膨らませて怒る。
そういう怒り方もするんだな。
可愛い。
「冗談だよ。送るのは本当だ。感謝してるよ」
「貸し1つだな」
「ジリルへの口利きで、貸し借り無しだよ」
笑顔でそう返された。
そういうところは抜け目ない。
これぐらいじゃないとA級冒険者なんてやってられないのかもな。
「それにしても……この化け物は一体何なんでしょうか?」
「発見されたのはイェリデ山脈の中でもこの山脈街道の周囲だけなんだろ?これじゃまるで……」
「山脈街道をふさぐため……とか?」
私の考えが読まれた。
キザ男もキザなだけではない。
ちゃんと考えている。
「まぁ山脈街道周辺以外はイェリデ山脈の殆どが飛竜の縄張りだ。飛竜の縄張りには魔物は入れないから、そうとも断言し難い……でも」
「可能性は否定できない……だな」
「……ふふ。今度は僕が読まれたね」
伊達に私も前世で修羅場をくぐり抜けていない。
これぐらいの結論ならすぐにたどり着ける。
「まぁそこも含めて、僕はしばらくこの辺りで調査をしなきゃならない。でも今は君達を送り出す事が先だ」
「いいんですか?僕達なんかに」
「いいんだよ。事の次第をジリルのギルドマスターにも伝えなきゃならないし。それに、可愛い女の子を放っておけないだろう?」
最後にキザ男が見せたキメ顔は無視した。




