報酬!
「町を出る時は余裕だと思ってたけど、案外疲れたなぁ」
「余裕だと思ってたのはリースだけだよ」
その後、私達は旧市街で一夜を過ごした後、次の日の朝に出発し、半日でマインの町まで帰ってきた。
行きは活性化により、頻繁に魔物の襲撃を受けていたが、帰りはほとんど無かった。
まぁキザ男が魔物避けの魔法を使った、というのもあるが。
キザ男は前線に出て戦うタイプではないようで、魔法による回復と補助を専門としている。
私達が地下水路で受けた傷も、昨晩きれいに治してくれた。
「こんなに早く着くなんて便利な魔法だなぁ。教えてくれよ」
「ごめんね。ギルドの秘密の魔法なんだ。リースちゃんがA級冒険者になったら教えてあげるよ」
「ちゃんはやめろ」
この身体になってもうすぐ9年になる。
だが未だに女の子扱いは慣れない。
「僕からしてみれば、君達みたいに直接魔物と戦える方が羨ましいさ。僕は誰かと組まないとA級依頼なんてこなせないからね」
「戦闘はからきしなんだな」
「恥ずかしいけどね」
そうして私達はマインの町に入った。
キールというあの男がきちんと仕事をしてくらたらしく、地下水路攻略の報は既にギルドに知らせられていたようだ。
それどころか町中にまで知れ渡っており、道を歩くと「おい、あれが」「あんな子供が?」とかヒソヒソ話が聞こえる。
「み、皆さんに見られてますね……」
「普通にしとけ。別に悪い目じゃないんだし」
ギルドに入ると、床に届きそうな程髭を蓄えた老人が出迎えてくれた。
マインの町のギルドマスターらしい。
「ニミル殿、キール殿から話は聞きましたぞ。今回はお疲れ様です」
「ねぎらいの言葉は彼らに。僕は特に何も」
「そうですな……っと、君達が件の地下水路を攻略した冒険者達か。思ってたより若いというか幼いというか……」
「子供扱いはやめてくれよ」
そういうのはもう沢山だよ。
「すまぬな……確かに君たちはここにいる誰よりも優秀な冒険者じゃ」
そう言ってギルドマスターは職員に合図をした。
合図を受けた職員はギルドの奥まで走り……袋を手に戻ってきた。
「これは少ないが、今回の無差別依頼の報酬じゃ」
職員から袋を受け取る。
ジャラリと音がした。
てか……この重さ……
「おい……これ金貨30枚はないか!?」
「え!?」
「30枚!?」
私は袋を開いて中を確認する。
1、2、3……36枚!?
「こ、こんなに!?」
「君たちが水路を攻略してくれた事によって、しばらくは町の魔物の被害も減る。安すぎるくらいじゃ。今はギルドの財政も逼迫しておるからこれが限界じゃが、いつかきちんと払わせてくれ」
いや、まだ追加報酬があるなんて……
こんなの一回の依頼で稼げる金額じゃないぞ……
「ロドル老、それには及びませんよ。追加の報酬分は本部から出させてもらいます」
「よろしいのか、ニミル殿」
「ええ。彼らのおかげでイェリデ山脈の調査にも進捗がありそうですから」
「む……例の化け物ですな」
そういえば、このキザ男はその調査に来てたんだったな。
「すみませぬな。水路に送る人員は今準備中です故、もう少し時間がかかります」
「いや、そっちは大丈夫ですよ。キマイラの死体を保護している聖域は一週間はもちますから。それより……」
「ええ。キール殿から預かっております」
そう言ってギルドマスターは懐から手紙を取り出してキザ男に渡した。
キザ男は今までで一番真面目な顔でそれを受け取り、読み始めた。
「さて、追加報酬はギルド本部が払ってくれるとの事じゃが、それでも儂らの君たちへの感謝は変わらない。本当にありがとう」
「そ、そんな!これだけでも多いのに追加報酬なんて恐縮ですよ」
「おい、ジーナ!貰えるもんは貰っとけ!」
「リース、そういう事はもっと小さな声で言いなよ…」
金はいくらあっても困るものではない。
それにギルドとしても、成果を上げた冒険者にはそれ相応の報酬を渡さねばならない。
受け取るのが礼儀ってもんだ。
「君たちも疲れたろう。町で一番の宿を取っておいたから、そこでしばらくゆっくりするといい」
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「いやー!ベッドだベッド!」
「リースさん、はしたないですよ……」
宿に着いてベッドに飛び込んだ私をジーナが諌める。
「僕は横の部屋だから。何かあったら呼んでね」
私とジーナが同じ部屋で、ツルギだけが別部屋だ。
私は同じ部屋でも良いと言ったのだが、ジーナとツルギは強く拒んだ。
そういうのは今のうちからきちんとしておいた方がいいんだと。
私達はまだ9歳にもなってないぞ……
「ちょっと待て。先に報酬を山分けしよう」
私は鞄からさっき貰った金貨袋を取り出す。
見た目の割にズシリと重い。
「こんなに貰えるとは嬉しい誤算だな!」
「まぁこれは無差別依頼だけど、実際はA級近い難易度だからね」
「あのぅ私はそんなにいらないんですけど…」
「ダメだジーナ。山分けにしないと」
こういうのはきちんと配分しないと後で諍いの種になる。
この3人でそれはないとは思うが。
その時、コンコンと扉がノックされた。
一番扉に近かったツルギが開けると
「やぁ」
「げ、キザ男」
「ニミルさん」
「な、何しにいらっしゃったんですか!」
そこにいたのはA級冒険者のキザ男だった。
それに対する私達の反応はまさに三者三様。
ジーナなんてあからさまに警戒してる。
まぁこんな軽そうな男が部屋に来たら警戒もしますわ。
「あれ?招かれざる客ってやつ?」
「お、そういえばギルドへの口利きといい、キマイラの死体の保護といい、お前にも世話になったな。分け前を……」
「いや、良いよ。代わりと言っちゃなんだけど……頼みがあるんだ」
頼み?
キザ男の頼み?
………えー。




