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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第四章 北方編
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聖域

 こんな大事、ギルドに調査してもらう方がいい。

 ギルドに報告するとして……


「問題はどうやって説明するかだな……」


 普通に、「水路迷宮の化け物は私達が倒しました。こいつが魔物活性化の元凶です」なんて言って信じてもらえるか?

 私達、見た目は子供だし。


「元々はどうするつもりだったの?」

「化け物を倒して、適当に証拠となるものを剥ぎ取って持って帰ろうと思ってた。でも調査するなら死体の全体が必要だよな」


 ここからマインの町まで距離があるし、一度戻ってから人を連れてきても、その頃にはキマイラの死体は魔物達に荒らされているだろう。

 地竜の時みたいに見張りを置いておく訳にもいかないし……


「うーんどうしたものか……」

「お〜。派手にやったねぇ」


 聞きなれない声がした。

 ハッとそちらを振り返ると1人の男が立っていた。

 こいつは……


「お前は……ギルドにいたキザ男!」

「うわ……君、心の中でそんな風に僕のこと思ってたの?お兄さん悲しいよ」


 イケメンのキザ男は大袈裟な芝居がかった動きをしながらそう言った。


 キザ男は数多の魔物の死体を踏み越えながら近づいてくる。

 一般人にしては肝が据わっているな。


「何者なんだよ、お前」

「そんなに睨まないでよ。可愛い顔が台無……ああ、分かった分かった。そういうの嫌いなんだね。だから剣を納めてよ」


 本当に何なんだこいつ。

 ツルギが止めてくれなかったら剣を抜いて斬りかかる所だったよ。

 ジーナも同様に背中の長剣に手をかけており、険悪な雰囲気を出している。


「僕はニミル。冒険者だ」

「そうは見えないんだが?」

「よく言われるよ。ほら」


 そう言ってキザ男は懐から何かを取り出して、私達に見せた。

 ギルドカードだった。

 カードは埋め込まれた小さな魔石から淡い光を放っている。

 登録時の魔力に反応して光る魔石だ。

 つまり、本人に間違いないという事だ。


「A級冒険者!?」

「ん……あ、本当だ」


 私達のカードにはC級と書かれている場所にA級と書かれていた。

 B級は何人か見た事あるけど、A級冒険者は初めて見るな。


「ツルギ、A級ってすごいのか?」

「そりゃあ凄いよ。基本的に本部直属になるから僕も現役じゃあ1人しか知らないけど。全冒険者の1%もいないよ!」


 えー。

 このキザ男がー?

 嘘つけ。


「『聖域』のニミルってまあまあ有名なんだけどね。聞いた事ないかな?」

「ない。ツルギはどうだ?」

「いや、聞いた事ないよ」

「すみません。私も存じ上げないです」

「ありゃりゃ」


 お前は聖域って感じじゃあないだろう。

 言動といい、女に対するガード甘そうだ。

 お前は『キザ男』で確定だ。


「で、その『キザ男』のニミルが何でこんなところに?」

「『聖域』だよ。君達とはギルドで会ったよね?」

「そうだな」

「実は僕は今回、イェリデ山脈付近の魔物活性化の調査でマインまで来たんだ」

「まだ調査隊は来てないってギルドの受付嬢は言ってたぞ」

「調査隊の本体は後で来るよ。僕だけ先に到着しちゃったんだ」


 A級冒険者への依頼はギルド本部が発行するらしいからな。

 ギルドからの調査隊の派遣という話だったし、そうだなおかしい話ではない。


「で、暇だし迷宮攻略でも……と思ったんだよ。そしたらこれさ」


 キザ男は手を広げる。

 辺りには肉の焦げたような臭いが充満している。

 血の臭いもだ。


 まぁ凄惨な修羅場ですわな〜


「何があったか説明してもらうよ」



--------------------



「へーなるほど。話を聞く限りじゃあこの化け物が魔物活性化の元凶で間違いないね」


 キザ男は足先でキマイラの死体をツンツンと蹴りながらそう言う。

 彼はあっさりと私達の話を信じた。

 まぁ大量の魔物の死体という証拠もあるしな。


「だからこれをギルドに報告しようと思ったんだけど、どうやって報告しようか迷ってたんだ」

「それなら僕に任せて。キール、いるんだろ?」


 その時、キザ男の言葉に応えるように、彼の真横に黒装束の長身の男がスッと姿を現した。

 顔までスッポリと隠しており、その表情は読めない。


「彼はキール。僕と同じA級冒険者で、調査隊のメンバーの1人だ。無愛想な奴だけど人と話すのが苦手なだけだからあんまり気にしないで」


 ていうか、今どうやって現れたんだ?

 それに目の前にいるのに気配感じないぞ?


「彼ならここから1時間くらいでマインの町に着けるよ。彼にギルドに報告してもらって人を寄越してもらおう。じゃ、頼むよ」

「………」


 キールはキザ男に返事する事もなく、現れた時と同様にスッと消えた。


 関係ないけど、話さないのはキザ男が嫌われてるだけとかじゃないよな?


「よし、僕らも戻ろうか」

「この化け物の死体はどうしますか?いくらキールさんが町に早く着いても、人が来るのは明日になるでしょう?」


 ツルギがそう言う。

 そうだ。

 それも含めて対処を考えていたんだ。


「おっと忘れてた。ちょっと待ってね」


と、言ってキザ男はキマイラの死体に近づいていく。

 何をするのかと見ていると、ポケットから小瓶を取り出して、死体を囲むように中の液体を振りまいていった。


「リースさん、あれは……?」

「あれは……多分魔石を溶かした液体、魔液だ」

「魔石を?」

「ああ……そしてそれを使って……ほら」


 キザ男の作業が終わったようだった。

 キマイラの周囲に魔液が幾何学的な模様を描いていた。


「こうして見ると……」

「きれいだね…」


 いや、それだけじゃない。

 バリスさんから魔法陣を習った私には分かる。

 これは高度な数学で恐ろしいほどに効率化された上級魔法陣だ。


「なるほど……これじゃあ魔物も何も出来ないな」

「へぇ……君には分かるんだ」


 分かるも何も、一回閉じ込められた事あるからな。

 この魔法陣の元は、私が前世で死ぬ間際に閉じ込められた魔法陣だ。


 あの魔法陣自体が高度なものにも関わらず、それをキマイラの死体を動かさずに、その周囲に円状に、器具も使わずにこれほどの魔法陣を短時間で描くとは……


「そうだ!ついつい忘れちゃうんだ」


 これが……A級冒険者……


「改めて、僕はA級冒険者『聖域』のニムル。君達の名前を聞いてもいいかな?」


 私の中で、キザ男の評価が上方修正された。

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