死線を超えて……
キマイラの口に光が収束する。
魔銃を構えてキマイラの口を狙う。
だがその射線上に、返り血を避けて跳躍したツルギが侵入してきた。
「ツルギ!」
こいつ、理性を失くして私の声が聞こえていない。
ツルギは地面に着地。
ツルギの身体は着地の衝撃でゼロコンマ1秒の硬直状態に陥る。
その、ツルギが避けきれない僅かなタイミングに、キマイラのブレスは発射準備を終えた。
「リースさん!ツルギさん!」
「ツルギィィィ!!」
このままだとツルギ諸共、私までブレスの直撃を食らってしまう。
だが私は避けずに叫ぶ。
何故かそうするべきだと思ったからだ。
その時、ツルギの頭が僅かに動いた。
私は反射的に引き金を引いた。
魔銃に込めれる最大量の魔力が銃口の中で爆発し、放たれた魔弾はツルギの頭を掠め、キマイラに向かう。
そしてブレスが放たれると同時にキマイラの眉間に着弾した。
「………ッ!!」
キマイラは仰け反り、声にならない悲鳴を上げる。
口から迸る魔力の渦は見当違いの方向に放たれた。
そしてそのガラ空きになった懐に鬼が滑り込む。
刀を手放し、フリーになった右腕をキマイラの鼻先に絡め、その顎に膝蹴りを叩き込む。
「…………ッ!!」
ツルギによって口を閉じられ、自らのブレスが体内を逆流したキマイラに、もう断末魔の叫びをあげる労力はなかった。
キマイラの巨体が音を立てて地面に倒れる。
そして鬼はその首筋に、左手に持った刀を無慈悲に振り下ろした。
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「おい、ツルギ……?」
「……ごめんね」
「は?」
「心配かけた」
「それよりお前……それ大丈夫か?」
私はツルギの頭を指差す。
鬼人族としての証、ツルギの頭に生えた一本の角。
それが赤く輝いているのだ。
ツルギの眼も凄いことになっている。
普通の白目の部分が黒く、白目の部分が赤くなっている。
「ああ、もう大丈夫。よく分からないけど、制御できる」
「そ、そうか……ならいいんだが……」
ツルギが眼を閉じ、もう一度開く。
するとその眼はいつもの状態に戻っており、角の輝きも消えた。
「………ま、まさかお前にこんなに苦労をかけられるとはな!」
「うん。ごめん」
「多分種族柄仕方ないって……!」
「いや、もう大丈夫」
「……何だか分からないが、お前が言うんならそうなんだな」
「リースさーん!ツルギさーん!」
ジーナが心配そうな面持ちで駆け寄ってきた。
私達がキマイラに気を取られている間にも、周囲の雑魚を片っ端から片付けてくれていたようだ。
あれだけいた魔物が全て屍と化している。
それでまだ私達を心配する余裕があるとか……恐ろしい子に育ったなぁ。
「ジーナ、もう大丈夫だ」
「心配かけたね」
「お2人が無事なら良かったです!」
はぁ……本当に一時はどうなることかと……
ツルギの暴走の件は、本人が大丈夫と言っているし、これ以上詮索はすまい。
それより……
「こいつが魔物の活性化の原因……なんだろうなぁ」
「そうだね。迷宮を調べに来たら、思わぬ収穫があったらしい」
「これはギルドに報告……だな」
「私たちの手には負えませんよね……」




