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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第三章 冒険者入門編
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通行不可

「はぁ!?通行出来ない!?どういう事だよ!」

「どういう事とか言われましてもねー。1から10まで説明した所じゃないですかー」

「リースさん、落ち着いてください。皆さん見てます」

「大声出して変わるもんじゃないしね」


 くっ……私とした事が少し取り乱してしまったか。

 確かにギルドの注目を引きすぎている。

 ただでさえ私たちは幼いから人目をひくのに。


「……申し訳ない。もう一回説明してもらえるか」

「なんかこの子偉そうじゃない?別にいいけど」


 ギルドの受付嬢は眠そうな目をしながら、すぐ横の壁に貼っている紙を指差す。


「あそこに書いてあるように、最近イェリデ山脈の魔物が活発化してるから詳細な調査が終わるまで立ち入れない。それだけ」

「その詳細な調査ってのはいつ終わるんだ?」

「さあ?まだ調査隊を編成してる段階らしいしねー」

「何で通れないんだよ!」

「だからリースさん、落ち着いて……」


 何回話を聴き直そうが結果は変わらない。

 イェリデ山脈への道が通行止めされているのだ。

 これではジリルはおろか、このマインの町より北にすら行けない!


 ジリルの街へは、イェリデ山脈を超えるしかない。

 一度魔帝国領のシタールの港町まで戻って、船を使うという手もあるが、どんなに少なく見積もっても3週間はかかる。

 さらに定期便の運行スケジュールが分からないし、下手すれば1ヶ月半ってところか……


「諦めるしかないね」


 ツルギは既に事態を受け入れているようだが、私はそうはいかない。

 まず、諦めるってのが嫌いだ。

 どうにかしてイェリデ山脈をバレないように……


「これは冒険者ギルドからの正式な通達だからね。破ったらそれなりの罰則があると思っておいた方がいいよ」


 受付嬢に釘を刺される。

 表情で考えている事を読まれてしまった。

 この受付嬢、ぼんやりした顔して中々やるな。


「リース、仕方ないよ。ジリルにはまた今度立ち寄ろう」

「一時的な撤退です」

「くそ……仕方ないか……」


 ここで軽はずみな行動に出てしまえば、私をC級にしてくれたツバキさんにまで迷惑がかかってしまうのだ……


「分かったらさっさと行った行った。お姉さんは忙しいんですよー」


 受付嬢はシッシッと手を振ってそう言い、机に突っ伏して寝始めた。

 何なんだコイツむかつく。


「一度街道を戻るしかないね」

「そこからどこに行きますか?」

「南のセリーアとか?」

「セリーアはダメだ」


 セリーアにはミラ達がいる。

 ベルルを発つ時に「ジリルに行く」と書いたのに、引き返しておいて、どんな顔して会えばいいんだ……

 まぁ逆にサプライズになるかもだが……


「それなら東のモガーダかなぁ。でもあそこは……」

「あれは何ですか?」


 その時、急にジーナが会話を遮った。

 大人しいジーナが珍しいな。


「どれだ?」

「あれです。あの依頼書。あの色の依頼書なんて見たことありません」


 ジーナはカウンターの横の壁に貼ってある依頼書を指差した。


 依頼書は受けれるランクによって色分けがされている。


 D級は青色。

 C級は緑色。

 B級は黄色といった感じだ。


 A級以上は個人依頼しかないので依頼書はない。


 そしてジーナが指差した依頼書は……


「赤か……」


 なんでこんなに目立つ紙に気づかなかったのだろう。


「ああ、それは無差別依頼だよ」

「無差別依頼ですか?」


 さすがギルドマスターの息子、ツルギは知っているようだ。


「普通なら依頼は依頼書を選ぶと、依頼者と冒険者、一対一で契約が成り立つんだけど、無差別依頼は契約がないんだ。達成条件だけ周知されて、あとは早い者勝ちで、達成した事を証明できる物をギルドに提出したら依頼達成ってわけ」

「へー。初めて知った」

「なんでそんな形式になるんですか?」

「みんな競って取り組むから依頼達成が早くなるんだ。それと、無差別依頼は普通の依頼より報酬が高いんだけど、実質的に契約なしで複数のパーティを動かせるからコスト割安だというのもある」


 へー。

 依頼者側に良い事づくめじゃないか。


「でも、ベルルでは一度も見た事ないです」

「無差別依頼って、ランクの縛りがないからね。若い冒険者が無理をしてしまう事が多いんだ。安全マージンの観点から、最近はよっぽど切迫した状況じゃないと使われないね」

「その切迫した状況みたいだな」


 依頼主はギルドマスター。

 依頼内容は……


「迷宮の踏破だ」

「それは止めといた方が良いよ」


 振り向くと、受付嬢が顔だけ上げてこちらを見ていた。

 おい、ヨダレのあとがついてるぞ。


「その迷宮から出てくる魔物が手に負えなくて、ギルドマスターが二ヶ月前にB級冒険者のパーティに依頼したんだけど……」

「……だけど?」

「……5人中1人しか帰ってこなかった。その人ももう冒険者を続けれる身体と精神状態じゃなかった」

「そんな……」

「その冒険者の証言によると、一番奥にとんでもない化け物がいたようなんだけどね」

「化け物か……」


 迷宮の奥に強い化け物。

 まるで冒険譚の一章だ。


「君達、その歳でC級ってぐらいだし、ある程度は強いんだろうけどね。その依頼は無理だよ」

「……面白いじゃないか」

「リースさん?」

「せっかくだ、私達で挑戦しよう」

「何がせっかくなんだい?」

「ツルギ。冒険、迷宮、強敵……これだけ揃って、奮い立たない男がいるか?」

「リースさんは男の子じゃないんじゃ……」


 これでも心は少年だ。

 こんなに心湧く状況、中々出会えない。

 あと、憂さ晴らしも兼ねている。


「リースって変な所で拘りがあるよね……」

「私は止めておけって言ったよ?後は自己責に……ん……で……」


 語尾が少しずつ小さくなっていき、受付嬢はそのまま寝てしまった。

 本当にベルルの受付嬢とは大違いだな。



--------------------



ギルド一階のテーブルに座り、情報を整理する。


「場所は、このマインの町から出て西へ行った所の地下水路か……」

「昔はそっちの方に町があったみたいですけど、こっちに移転してから使われなくなり、魔物の巣と化したようです」


今回の迷宮は天然のものではない。

人工物に魔物が住み着き、迷宮化してしまったケースだ。


「中の地図が手に入るとはなぁ……マッピングも含めて迷宮探索なのに……」

「そんなに本格的な迷宮探索なんて、3人じゃ無理だよ。持ち込める物が少ない。迷って餓死するかも」


迷宮に関して冒険者達から聞き込みをしていると、書庫にその迷宮の地図があるとの情報があった。

実際に行ってみると確かにあった。

昔の水路だから当然っちゃ当然なのか?


「地図まであるんなら日帰りのピクニックじゃないか」

「あのね、リース。そんなわけないでしょ。強力な魔物もいるみたいだし……僕は探索は反対だからね」

「でも来てくれるんだろ?」

「リースは僕が言ったくらいで止めないからね。地竜の時も、撤退だって言ってるのにそのまま倒しちゃうんだもん」


あれはヒロ達が逃げ遅れたせいだと思うが。


「大丈夫だ。その化け物が地竜以上にヤバい奴だと思うか?」

「そうは思わないけど……でも……」

「魔物が出たぞーー!!」


その時、ギルドの外から声が聞こえた。

切羽詰まった声だ。

冒険者達がドタドタと慌てて外に出ていす。


「なんだなんだ!?」

「今、魔物が出たって言ってましたね!?」

「魔物が活発化しているらしいからね……イェリデ山脈の麓のこの町の周辺にまで出てきているみたいだね」


つまり魔物が出没したから冒険者達で撃退しに行ったというわけか。

さっきからギルド内のピリピリした雰囲気が少しだけ気になっていたのだが、そういう理由だったか。


あ、でも受付嬢は寝たまんまだわ。

よくクビにならないな。


「リースさん、私達も行った方が……」

「……そうだな。万が一もあるし……」

「その必要はないよ」


 その時、爽やかな男の声が耳に入った。

 振り向くと、ギルドの二階から金髪の人族の青年が降りてくるところだった。

 かなりのイケメンで、全体的にキラキラとした印象だ。


 見たことない人物だが、ギルド内には私達の他には寝ている受付嬢しかいないので、私達に言ったのか?


 ていうか、ギルドの二階は関係者しか入れないはずだったが。

 ギルドマスター……には見えないな。


「冒険者の彼らにも誇りってものがある。町を守る誇りがね。余所者に手助けされるのは気に入らないだろう」

「……あなたは?」

「怪しい者じゃないよ。美しいお嬢さん」


 うわ。

 男に美しいと言われて、ウインクされてしまった。

 鳥肌が立ったぞ。


 なんか嫌だこいつ。

 早く立ち去りたい。


「そうか。なら手は出さないでおくよ。行こう」

「ちょっとリース、待って……」

「あらあら。つれないな。まあ僕も女性を引き止めるような無粋な真似はしない。また会おう」


 あ〜気持ち悪。

 キザな物言いが癪にさわる。

 私はさっさとギルドから出ることにした。

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