調査
1日をかけてビルの町まで戻ってきた頃にはもう日暮れ近かった。
この前と同じ宿をとると、宿のおやっさんも私達の事を覚えてくれていたようで、声をかけてくれた。
「おう。嬢ちゃん達、今回はヒロ達と一緒じゃねえんだな。違う男連れ込むとは罪作りだねぇ」
「ははは。部屋を2つ頼むよ」
「おう。安くしとくぜ」
2人部屋と1人部屋を1つずつ取った。
設備の割に価格は安めだが、それでもD級冒険者にはキツい金額だ。
ヒロ達は無理してくれてたんだなぁ。
今度改めてお礼を言わねば。
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「で、足跡が発見されたのはここか」
「地図によるとそうだね」
森の中でもかなり鬱蒼としたそこは日の当たりも悪かった。
ここで巨大な未確認生物の足跡が発見されたらしい。
「第一発見者は足跡を辿ったと聞いたが、どっちだ?」
「足跡は町から離れる方向に続いていたらしい。こっち方面だね」
足跡が続いていたらしい方向に向かうと、木々が晴れて少し大きな広場に出た。
「この辺りで足跡を見失ったと書いてある」
「まさか、飛んで行ったのでしょうか…」
「その足跡の大きさで飛べる奴なんて、飛竜ぐらいじゃないか?」
「飛竜ですか……!」
「確かにベルルから北方の山脈は飛竜が多数生息しているらしいけど、竜は縄張り意識が強くてほとんど山から下りてこないらしいよ。可能性は否定できないけど、低いね」
その後も少し歩き回ったが、ダガーウルフ数匹に出くわしただけで終わった。
ちなみにツルギの獲物は腰に下げた2振りの『刀』だ。
これは鬼人族に伝わる特殊な製法で作られた剣で、片刃で緩く反っているのが特徴だ。
ツルギは二刀流で難なくダガーウルフを真っ二つにした。
私では思考加速を使わなければその剣閃を捉える事は不可能だ。
彼は速さで押すタイプの戦い方なので単純には比べられないが、実戦的な実力ならザリより上ではないだろうか。
さすがは『羅刹』の息子といった感じだ。
「はぁ……未確認生物も早く出てきてくれよ」
「リースさん、私達への依頼は調査ですよ」
「ジーナ、ツバキさんが言ってた事忘れたのか?」
「言っていた事……ですか?」
ありゃりゃ。
こいつ、気づいてなかったか。
普通の調査依頼だと思ってたようだ。
「私が倒していいか聞いたら『構わない』って言ってただろ?」
「そういえばそうですね」
「つまり言外に『倒してこい』って事なんだよ」
「……そうなんですか?」
「僕に聞かれても……」
「B級冒険者が犠牲になるような相手だ。それを私達が倒せば、明らかな実績になるだろう?C級へぐっと近づくわけだな」
前にツルギが言っていた通り、これは紛れもなくB級案件だ。
それをわざわざ「調査」として私達に依頼をしてきた。
これはツバキさんの粋な計らいなのだ。
「ずっと言っているけど、僕がついている以上危険な事はさせないよ。僕の判断で必ず撤退してもらうからね」
「遭遇してから考えようぜ、そういうのは」
敵の正体が掴めない上に遭遇すら出来ない。
本当に何なんだろうな。
飛べる魔物なのか?
それとも……
「1度町に戻ってみよう。何か新しい情報を聞けるかもしれない」
「そうだな。このまま歩き回っても意味ないか」
「では参りましょう」
そしてジーナは歩き始めた。
いや、ちょっと待てよ……
「ジーナ、町はこっちだぞ?」
「こっちじゃないんですか?」
私はジーナが行こうとした方向と正反対を指差す。
いや、方向だけは間違いようがない。
「リースが惜しいね。正確にはもう少しこっちだ。」
一番この辺りの土地勘があるツルギは私のと近い方向を指した。
「え……でもこっちから来たんじゃ…」
「まさか…ジーナって方向音痴?」
来た方向は間違いようがないぞ……
ジーナが顔を真っ赤にする。
彼女の新しい一面が見れた。
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「うぅ……恥ずかしいです」
「まぁそのうち慣れるって」
ジーナはまだ顔を押さえている。
あれだけ自信満々に歩き出したんだもんなぁ。
そら恥ずかしいわ。
徐々に見覚えのある風景が現れ始めたので、ツルギの言う通り方向はこっちで合っていそうだ。
「ん……何か聞こえない?」
もうすぐ町に到着しようかという頃、ツルギがそう呟く。
……私には何も聞こえないぞ?
ジーナを見ると、彼女もフルフルと首を振った。
「……これは……村の方向だよ!」
そう言ってツルギは走り出した。
「何だ何だ!?」
「リースさん、追いかけましょう」
ジーナに言われて私達はツルギの後を追う。
ってか、ツルギ足速っ!?




