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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第三章 冒険者入門編
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はじめてのいらい

長めです

「は?」

「パーティ……」

「はぁ……ギルドマスター、理由をお聞かせ願えますか」


 その反応は三者三様であった。

 私は驚き、ジーナは「パーティ」という単語を反芻しており、ツルギだけは「またか……」みたいな顔をしている。


「リーシア達にも順を追って説明しようかね。最近ビルの町付近の森で未確認の魔物が出没しているという情報があってね。森に入った冒険者や狩人が何人も姿を消したり、巨大な足跡も確認されている。つい昨日にも新たな情報が入ったらしいよ」


 何やら物騒な話だなぁ。

 ここ最近で急に起きたことなのなら、あの森に何かいるのは確かになのだろう。


「かなり危険度は高いとは思うんだけど、向こうの正体が掴めない以上、B級以上の冒険者をホイホイと動かすわけにはいかない。だからあんた達3人で調査に行って欲しいのさ」


 なるほど。

 確かにB級以上の冒険者はギルドにとっても大事な戦力だ。

 未確認の敵に回す余裕がないのだろう。

 そこでD級の私達に調査に向かわせるのだ。


「大したことなさそうなら討伐しちゃっても?」

「任せよう」

「よし、引き受け……」

「危険過ぎますよギルドマスター」


 ツルギは諌めるようにツバキさんにそう言う。


「B級冒険者を動かせないなんて嘘はやめて下さい。行方不明になった冒険者の中にB級の人もいたでしょう?これは十分にB級案件ですよ。それに彼女達は入ったばかりじゃありませんか」

「あんたもこの子達の実力は、さっきその片鱗だけでも見たんだろう?」

「経験は別です。僕は反対しま…」

「ギルマス命令だ。つべこべ言わず行ってきな」


 ツバキさんはツルギに無理矢理資料を押し付けながらピシャリとそう言った。


「あくまで今回は調査が目的だ。危険だとあんたが判断したんなら戻ってくるといいよ」

「はぁ……分かりました」


 ツルギは資料を受け取ると私達に向き直った。


「では、まずは自己紹介と情報の整理をしましょう。ではマスター、失礼します」

「ああ。リーシアとジーニスタは受付でギルドカードを発行してもらうんだよ」


 そう言ってツルギは部屋から退出する。

 私達2人はそれに続いた。



--------------------



 ギルドのすぐ隣にはギルドが運営する宿屋がある。

 ここは冒険者なら割引価格で利用できる。

 その1階は食堂になっており、私達3人はそこで情報整理もかねて昼食をとっていた。

 昼食といってもサンドイッチといった安いメニューだ。


「会員登録って言ってもすぐに終わるもんだな」


 私は発行してもらったギルドカードを眺めながらそう言う。

 ギルドカードには私の名前と、発行場所、ランクなどが書かれている。


「まぁ名前を書いて、ギルドカードに魔力を登録するだけですからね」


 ツルギの言う通り、受付で名前を書いて、ギルドカードに魔力を通してそれで終わりだった。

 魔力を登録する事で本人確認が可能になるらしい。

 本人以外が使えないようにするためだ。


「改めて、ツルギです。歳は8歳です。よろしくお願いします」


 それまで私同様ギルドカードを珍しそうに見ていたジーナが口を開く。


「ツルギさんはランクは?」

「C級です」

「私と同い年なのに……すごいんですね」

「小さい頃からギルドの仕事を手伝ってたら、いつの間にかC級になっていました」

「お前、ツバキさんの息子なのか?」


 私は聞こうと思ってた事を聞く。

 鬼人族などそうそういるものではない。

 最初にギルドで会った時からそうなのでは?と思っていたのだ。


「ええ。そうです。公私混同はしませんので、仕事中はマスターと呼んでますが」


 となると、クサナギ軍団長の息子か……


「ていうか2人とも、さっきから話し方がよそよそしくないか?もっとフランクに行こうぜ」

「……ごめん。周りが大人ばかりだから染み付いてて……少しずつ直していくよ」

「リースさんは少しフランク過ぎる気がしますが……」


 私はレタスサンドを手にとってかぶりつく。

 うん、うまい。

 安いし、いい食堂だな。


「私はリーシアだ。リースでいい」

「リースさん……リースはさっきすごい闘気を出してたよね」

「ああ。舐められないようにと思ってたんだが……さっきは助かった」

「いや、お安い御用だよ」

「あのまま放置してたらジーナがあのおっさんを殺しそうだった」

「だ、だって、あの人……なんか嫌な感じがしたんです……」

「私を心配してくれたんだよな〜ありがとう」


 私はジーナの頭をポンポンと撫でる。

 ジーナは少し顔を赤くしている。


「ほら、ジーナ、自己紹介」

「はっ……!ジーニスタ・ロールクレインです。ジーナと呼んでください」


 ジーナが慌てて頭を下げて挨拶すると、テーブルに頭をぶつけてしまった。

 ツルギがフフフと微笑む。

 良い感じに場がほぐれたな。


「じゃあ依頼内容を確認しよう。どんな内容だっけ?」

「依頼内容はここから西に行った宿場町、ビルの町の南の森の調査だね」

「あそこか」

「知ってるの?」

「そこ通って来たからな」

「え!?」

「私達はゴルドから真っ直ぐ北西に森を突っ切って来たんです」


 ジーナの説明を聞いて、ツルギは信じられないといった顔をしている。


「……なるほど。2人は強いんだね。母さんが依頼をしたのも分かるかもしれないよ。じゃあ2人の意見も聞きながら情報を整理しよう」


 ツルギは資料のあるページを見せる。

 そこにはいくつかの日付が書いてあった。

 どうやら森で起こった異変を日付順に並べているようだ。


 最初の日付は約2ヶ月程前。

 狩人が森に入ったっきり帰ってこないらしい。

 いなくなった狩人はこの道20年以上の大ベテランであり、魔物にやられるなど考えられないそうだ。


 そこからも断続的に狩人や冒険者が帰ってこない事件が相次いでいるようだ。


 その中でも最も目を引くのが3週間前。

 なんとB級冒険者が消えたらしい。

 ギルドの記録によると、そのB級冒険者は依頼でキラーベアーの素材を取りにソロで森に入ったらしい。

 キラーベアーを単独で倒せる実力者だ。

 経験豊富なので森で迷ったという線も考えられないらしい。


 行方不明の他には、未確認の魔物の足跡が見つかっている。

 森で見つかったそれは、キラーベアーのものより一回りも二回りも大きかったようだ。

 第一発見者の狩人はその足跡をつけたが、途中できれいさっぱりなくなってしまったらしい。


「って、この最後の情報……」

「ん?ああ、それは昨日D級の子達が報告してきたものだね。一昨日、キラーベアーが死んでいるのが発見されたようだね。死体は鋭利なものでバッサリ切り裂かれていたそうだ。その日はキラーベアーを倒せるような実力者の出入りも無かったから関係している可能性が高いね。これは初めて出た死体だ。この情報から推察するに、未確認の魔物は鋭い爪か何かを持ち……」

「これは関係ないぞ」

「……え?」

「これ、私達だから」

「………本当かい?」


 私は経緯をツルギに話した。

 キラーベアーを倒し、死体から離れてすぐにヒロ達がそれを見つけた事。

 そこから彼らと一緒にここまで来た事。


「確かに時系列的にもぴったりだ」

「そのバッサリってのは、ジーナの剣だ」

「なるほど。報告してきたのがヒロさんというのも合ってるし……どうやら本当にそうみたいだね。この情報だけ変だとは思ったんだよなぁ」

「ごめんなさい、話をややこしくしてしまったようで…」

「いや、気にしないでよ。これは僕の方から訂正を入れておくよ。それにしても2人でキラーベアーを倒したとは驚いた。2人は本当に腕が立つ」

「それほどでもある」

「でも今回はキラーベアーを1人で倒せるB級の冒険者も行方不明なんだ。気を抜かないでね」

「うう……そう言われると心配になってきます」


 ジーナが不安そうにもそもそとハムサンドを食べる。

 小動物みたいだな。


「でも目撃情報が全くのゼロってのも変な話だな。ターゲットは相当デカそうだし、2ヶ月間は森にいるんだろ?それが足跡を1回見つけただけって……」

「そうだね。目撃情報に関しては、見た人が全員行方不明になってしまっていると考えれば説明できるけど、足跡が消えたというのがね……木にでも登るんだろうか?」

「そうかもしれないな。とりあえずこの足跡があった場所から調べてみないか?ここに行けば何か分かるかもしれないし、それまでに遭遇出来れば御の字だ」

「遭遇して大丈夫なんですか?」

「先に発見できればいいんだけど、気配探知に長けたベテラン狩人が犠牲になっているからね。慎重にいかないと」


 こういう時アンナがいてくれたら心強いんだがなぁ。

 まぁ無い物ねだりしても無駄か。

 私は最後のタマゴサンドを一口で口に入れた。


「よし、じゃあ早速行く……」

「それは無理だよ。ビルの町までは1日かかるし、準備もしないと」


 時刻は昼過ぎ。

 さすがに今からは無理か。


「じゃあそれぞれ準備をして、明日の朝、日の出の時間に正面門の前に集合しよう」



--------------------



「クエスト依頼受理の書類、ここに置いておきますね」

「ああ、ご苦労さん」


 アタシはふかせていたキセルを机に置いて書類に目を通す。

 何でこんな仕事までアタシがしないといけないんだろうねぇ。

 ギルドマスターってのは大変だ。


「どうしてツルギ君を調査に?」

「ん?気になるかい?」

「それはもう。弟みたいなものですから」


 シーベルは肩を竦めてそう言う。

 確かこの子はウチのギルドの受付嬢を始めて3年くらいだったかねぇ。

 ツルギにギルドの仕事をさせ始めたのと同じ頃だ。


「今B級は全員出払っているだろう?A級のボレアスなんか連絡もよこさない」

「それはそうですが……新人の2人と3人パーティというのはリスクが……」

「あの子の闘気はあんたでも分かっただろう?」

「でも……」

「あの子達は私の古い知り合いの娘でね。実力に関しちゃツルギに負けないよ」

「………無事に帰ってきてほしいですね」

「そんなに心配かい?」

「嫌な予感がするんですよ。特にギルドマスターがそうやって面白そうな顔をしている時は良いことが起きたためしがありません」

「おや?表情に出てたかね?」


 アタシは思わず顔を触る。

 無表情を取り繕えていたはずだけど……


「はぁ……マスターの思いつきに1番振り回されてるのは私なんですからね」

「お見通しかい」

「程々にしておいて下さい」


 そう言ってシーベルは退出した。

 私はまたキセルを持って咥えた。


 面白がっているってのは否定できないねぇ。

 あのリディとゾルド、そしてアタシ達の子供がパーティを組む事になるなんて……ね?


 それに……今回でツルギに一皮むけて貰いたいというのもある。

 ツルギは周囲が年上ばかりだから、萎縮しがちだ。

 人とパーティを組む事もしない。

 何か今回で掴めるといいんだがねぇ。


 資料を放り出して部屋の窓に近づく。

 もう夕方だ。

 こうやってベルルの街の夕日をぼんやり眺めるのは……やっぱり最高だねぇ。

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