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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第三章 冒険者入門編
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アンラッキー

 ゴルドから北東に向かった森の中の小さな泉。

 私とジーナは偶然見つけたこの泉に返り血を落とすために水浴びをしようと立ち寄った。


 木々に囲まれていて全体的に木陰になっている。

 この周囲だけ気温が低く感じるな。

 水もとても澄んでいて気持ちよさそうだ。


「よし、ここで水浴びしよう」

「え……?でも大丈夫なんですか……?」

「大丈夫、周囲に魔物の気配も感じないし、この辺は人も立ち寄らないよ」

「いや、そういう意味じゃ……って、もう脱いでる!?」


 ジーナはなにをそんなにアワアワしているんだ?

 脱いだ服を簡単にたたんで泉のほとりに置く。

 私はすでに下着だけだ。


「ほら、さっさと入ろうぜ」

「……」

「ん、どうした?」

「……リースさんってもう……その……ブラジャーを……」

「え?ああ。母さんが着けろってな。面倒なんだけどこれ着けないと胸が邪魔でな……」


 私の胸は年の割にまあまあ発育がいい方らしく、少し前からブラジャーを着けている。

 正直最初は少し抵抗があった。

 でも最近ではブラの重要性がよく分かるようになった。

 動いていると胸が揺れたり、服とこすれたりして邪魔なのだ。

 ブラジャーを考えた人は天才だな。


「ジーナはつけてな……」

「聞かないでください」

「え?」

「聞かないでください」


 有無を言わさないジーナの口調に私は黙らされてしまう。

 自分の胸を押さえながら俯いているためその表情は見えない。


 これは地雷を踏んでしまったか……

 どうも彼女は身長と胸に関するコンプレックスがあるようだ……


 私は静かにジーナに背を向け、ブラを外して水に入った。

 恐ろしいほどの黒いオーラを背後にひしひしと感じながら……



--------------------



「ふぅ~気持ちいいな~」


 仰向けになって水面に浮きながら流れに身を任せる。

 水と一体になった気分ですごく気持ちがいい。


「リースさん!そんな姿を誰かに見られたらどうするんですか!」

「だから人なんてめったに来ないって」


 確かに今私は全裸であられもない姿だ。

 でもこんなところに人なんて来ない。

 普通はゴルドからベルルに向かう時はきちんと整備された北の街道を使う。

 この森には魔物も出るしわざわざこっちの道を選ぶ奴なんていない。


「ジーナもこうしてみろよ。気持ちいいぞ」

「え……でもそんな……はしたない……」


 はしたないって言われちゃったよ……

 まあそうだけど……


 私は浮くのを止め、泉の隅の方で体(の一部分)を恥ずかしそうに隠しながら水浴びをするジーナを見た。


「せっかくの2人旅なんだぞ?もっと気楽にいこうぜ」

「でも……」


 ジーナは顔を真っ赤にしてさらに縮こまってしまった。

 まだどこか固いなぁ。


「まあいいや。体も冷えてきたしそろそろ上がるか」

「あっ……はい!」


 泉のふちにいたジーナがいちはやく水から上がり、タオルを用意してくれた。

 それを受け取り、体を拭く。


 この大自然に全裸でいる解放感、そして本来なら許されないことをしているわずかな背徳感。

 悪くないな……

 人通りが少ないからこそできることだ。


「もう、リースさんったら、早く服を着てください!」

「ん……もう少しだけ……」


 手を広げてもう少しこの感覚を堪能する。

 いやぁ……本当に気持ちが……


 私はこの時、完全に油断していた。

 完全に気が緩みきっていた。

 だから気づけなかったのだ。

 知らない気配の接近に……


「こっちから人の声が……」


 ガサガサと目の前の草むらをかきわけて出てきたのは、少年の顔。

 数秒間目が合ってしまった。

 少年の顔はみるみるうちに赤くなっていく。

 それと同様に私の顔も熱を帯びていく。


「ごっ……ごめんなさ……!」

「キャー――――ーーーーーーー!!!!」

「リ、リースさん!?大丈夫ですか!?」



-------------------



「リースさん、落ち着きましたか?」

「あわあわあわ……見られた……知らない男に……」


 私は服を着てタオルにくるまっている。


 ヤバい。

 信じられないほどに恥ずかしい。

 顔から火が出そうだ。


 全裸なんてザリにも見せたことがないのに……

 まあ見せるような間柄でもないんだが……


「うわぁぁぁ!!穴があったら入りたい!!」

「落ち着いてください!リースさん!覗き犯は私が捕まえましたから!」

「覗き犯だなんて、誤解だ!」


 覗きをした少年はすぐさまジーナが取り押さえて木に縛り付けた。

 その手際は鮮やかなものだった。


「そうだ……目撃者を消してしまえば……」


 少年は10歳くらいだろうか。

 黒髪の人族だ。

 死体を埋めるのにさほど手間はかからないだろう。


「ちょっ……消すって……」

「待ってください、リースさん!」


 剣を抜いた私と少年の間にジーナが立ちふさがる。


「止めるなジーナそいつが斬れないだろ」

「消すなんてダメです!」

「そ、そうだよ!俺は偶然通りかかっただけで……」

「消すのはリスクが高すぎるので、頭を強く叩いて記憶を消してしまいましょう」

「ちょっ……!!」


 それもそうだ。

 人を1人消すなんてバレた時のリスクが高すぎる。

 確かにジーナの言う通りに記憶を消した方が後々の処理にも困らない。


「よしジーナ、その長剣の鞘を貸してくれ」

「はいどうぞ」

「ちょっと待て!待ってくれ!」


 その時、背後の繁みがガサガサと鳴った。

 私は反射的にとっさに振り向いた。

 また覗きか!?


「こっちからヒロの声が……ってアンタ何してんのよ!」


 金髪の少女が繁みから顔を出していた。


「……女の覗き魔か?」

「……リースさん、それは違うかもしれません」

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