表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第二章 幼少期編
31/327

旅立ち

二章ラストォォォ!

 あの時は必死だったけど……

 私って相当にすごい事してたな。


 ほぼノータイムで空間魔法を発動していたのだ。


 元々魔法というのはイメージこそが重要であり、詠唱はその手助けなのだとグリモワール翁も言っていた。

 イメージをしながら魔力を練ればそれだけで魔法は発動するのだ。

 母さんが無詠唱で魔法を使っていたのがまさにそれ。


 詠唱が不明な空間魔法を会得する上で、私はなんとか空間魔法のイメージを掴もうとしていたのだが、上手くいかなかった。

 だがあの時、空間魔法『空絶』はすんなりと発動した。

 あの時イメージしたのは守る事。

 私の意志の表れである。


 『絶空』は自分の周囲の空間と空間を分離し、絶対突破不可能な壁を作り出す。

 それにより一度は母さんの攻撃を完全に防ぎきり、カウンターで魔力を極限にまで注入した魔弾を撃ち込むことが出来た。


 はずだった……


 私の意識はここで途切れており、次に目が覚めると母さんの膝の上だった。

 母さんに怪我はなく「あら、目を覚ましたわね」とさっきまでの雰囲気が嘘のようにケロっとしていた。


 この人マジですか……


 私の全力だったんですけどぉ……

 魔石全部使い切った渾身の一撃だったんですけどぉ……


 自信を粉々に打ち砕かれてしまった。


 とはいえ、なんかよく分からないが、母さん的に私は合格だったらしい。

 冒険者として旅立ってもいいと言ってくれた。

 そこからは大変だった。

 色々な人に挨拶して回っていたのだ。


 ダースさんをはじめとした街の知り合いが大半なのだが。


 で、今日は残りの人に挨拶するために城に来た。

 いつも顔パスで通してくれる衛兵の人や、訓練場を貸してくれる兵士長の人、たまに声をかけてくれるメイドさんなど……


 バリスさんはめちゃくちゃ泣いて、宥めるのが大変だったが、最後はちゃんと送り出してくれた。

 まだまだ魔法陣について習いたい事がたくさんあったのが心残りだが……


 イーザスさんは忙しいらしい。

 まぁあの人には面倒事に巻き込まれたし、別にいいか。


 そして今は……


「そうか。行くのか」

「色々お世話になりました、魔王陛下」


 魔王陛下に挨拶しに来た。

 といっても陛下は忙しいので、あの書類まみれの執務室で書類を片付けながらの謁見だ。


 でもこれだけの書類に囲まれると圧巻だ。

 よく私なんかのために時間作ってくれたな。


「……顔付きが変わったな」

「ん?そうですか?」

「ああ、7年前とは大違いだ」

「7年たったらそりゃ顔も変わるでしょ」


 私は肩をすくめてわざととぼける。

 陛下は私の様子を見て少し頬を緩ませる。


「ではお忙しいようですのでこの辺で……」

「ああ。またいずれ会おう」



--------------------



「ミリアーナ様、ジーナです」

「おおジーナ、よく来たの。アンナ、開けてやってくれ」


 ミリアーナ様に呼ばれた私は緊張しながらも私室にお邪魔しています。


 アンナさんに中に迎え入れられ、私は部屋に入りました。

 呼んだ当人のミリアーナ様はというとベランダのテーブルで優雅に紅茶を飲んでらっしゃいます。

 眼下には魔帝都の美しい街並み。

 魔王城の最上階なだけあって、魔帝都ゴルドが一望できます。


「座るが良い」

「どうぞ」

「アンナさん、ありがとうございます」


 アンナさんが引いてくれたミリアーナ様の正面の椅子におずおずと座りました。

 最近頻繁にお会いするとはいえ、やはり緊張します……


「それで、お話というのは?」

「うむ。話というのは他でもない、リースの事じゃ」

「リースさんの……」


 となると話題は一つしかない。


「リースは冒険者として旅に出るが……お主はどうするつもりじゃ?」

「私……ですか」


 アンナさんが紅茶を淹れて、私の前に置いてくれました。

 とても上品な香りのする良い紅茶です。


「……私は…」

「まあ言わずとも分かっておる。リースについていきたいのじゃろう?」


 ミリアーナ様は私の心情をズバリと言い当てられました。

 ミリアーナ様をふと見ると、黄金の瞳と目が合います。

 この人の美しい瞳は心まで見透かされているんじゃないか、と思う事がよくあります。


「はい。ですが兄と祖父が反対しておりまして……」

「ふむ。ゾルド殿とザリか。まぁ女2人の旅になるからのぅ。心配するのも分かる気がするが……」


 お兄様は純粋に私の事を心配してくださっているようですが、お祖父様はそれだけじゃないような気がします。

 おそらく、リースさんへの不信感もあるのだと思います。


 お祖父様はリースさんのお母様、リーデルさんと昔何かあったそうで目の敵にされています。

 リーデルさんの娘であるリースさんに私を任せられないと思っているのでしょう。


 ちなみにお父様は「おう!行ってこい!」と言ってくださりましたが、お祖父様に黙らされてしまいました。


「どうしたら良いのでしょう」

「ジーナはどうしたいのじゃ?」

「私ですか?」

「うむ。兄と祖父に反対されて、諦めてしまうのか?」

「それは嫌です!」


 私だってリースさんについて行きたいです!


 迷宮での一件で自分の弱さを思い知らされました。

 このままではあの時の決意、リースさんをこの手でお助けするなんて到底無理です。

 強くならないといけない。


 それに弟子が師匠について行くのは当然のこと。


「ではきちんと話し合ってお主の気持ちを伝えるのが良いじゃろう」

「え……それで大丈夫なのでしょうか?」

「ザリもゾルド殿もジーナが思いをぶつければ無下には扱わんよ。もしそれでも止めるようであれば……」

「止めるようであれば?」


 ミリアーナ様は私にすっと顔を近づける。


 ち、近い……

 お美しいお顔をこんなに近づけられると、同性の私でもドキドキしてしまいます……


「妾が家出の手助けをしてやろう」

「い、家で……ムグッ!」

「これ、声が大きいぞ。まぁ聞く者もおらんとは思うが」


 ミリアーナ様に口を塞がれて、私はなんとか大きな声を出さずに済んだ。


「家出だなんて……」

「む?お主の覚悟はそんなものだったのか?なら強制はせぬが……」

「そ、そんな事ありません!是非お願いします!」

「ハッハッハ。良いぞ。楽しくなってきたのぅ」


 ミリアーナ様は本当に楽しそうに笑われました。

 赤い髪が風に揺られてヒラヒラとそよいでいます。

 最近少しずつ伸ばしていらっしゃるようです。

 伸ばした髪もそうですが、最近また一段と大人っぽくなられました。

 本当に私と3つしか違わないのか、偶に疑いたくなるほどです。

 特に……お胸が……

 私は身長ばかり伸びていて、胸は全く成長してくれません。

 3年したらこのぐらいになるのでしょうか。

 ミリアーナ様に分からないように私はため息を吐きました。


「お主も妾の妹の一人じゃからな。困った事があれば言うのじゃぞ」

「妹だなんて恐れ多いです……」

「妾の言う事が聞けんのか?」

「いえ、そういう訳ではありません!」


 なんだか無理矢理話を誘導された気分がしますね。


「また妹ですか……末っ子だからといって憧れるのは分かりますが、作りすぎではありませんか?」

「なんじゃアンナよ。仲間外れにされて寂しいのか?ならばお主も妾の……」

「結構です。私はミリアーナ様と同い年ですし、何よりもメイドですから」


 アンナさんがミリアーナ様に紅茶のお代わりを注ぎながらそんな話をする。

 アンナさんはどうしてこんなにミリアーナ様に率直に物が言えるんでしょう……

 私はこんなに緊張してしまうのに……


 でもあまりお手本にしない方が良い気もします。


 その時、ノックも無しに部屋の扉が開きました。

 誰かと思い、そちらを振り返ってみると……


「よう、ミラ……って、ジーナも一緒か」

「リースさん!」

「お、リースか。良いところに」


 入ってきたのはリースさんだった。

 さっきミリアーナ様を大人っぽくなられたと言いましたが、リーシアさんは昔と変わらず小さくて可愛らしいままです。

 ここ1年程、身長が全然伸びていないとボヤいてらっしゃいましたが、身長が伸びすぎてしまっている私にとっては羨ましい限りです。

 お胸の方も……はぁ。


「親父殿と話をしてきたのか?」

「ああ。相変わらず忙しそうだったから早めにお暇したけど。これで挨拶回りは終わったな」

「へ、陛下と!?」


 家柄と、ミリアーナ様と歳が近い事からここまで入れる私ですら、陛下とお話ししたことなんてありません。

 遠くから見たことがある程度です。

 リースさんは不思議な人ですが、本当に何者なんでしょう……


「2人は何について話してたんだ?」

「ふふふ。秘密じゃ」

「なんだそれ。私にも教えてくれよ」

「秘密ったら秘密じゃ」


 リースさんはミリアーナ様に突っかかって話の内容を訪ねてらっしゃいます。

 本当にお2人は仲がよろしいですね。


 特に最近はリースさんも雰囲気が随分変わられました。

 こう……なんというか……さらに女の子らしくなったといいますか。


 あのリーデルさんと一騎打ちした事で心境にも変化があったそうです。


「ところでリース。これで挨拶回りが終わったと申しておったが、それではいつ出立するのじゃ?」

「明日だ」

「「は!?」」


 私はすぐに口を押さえました。

 思わず口を開けてはしたない声を出してしまいました。

 同じく素っ頓狂な声を出してしまったミリアーナ様もアンナさんに「姫様」と肩を叩かれ、我に帰ります。


「あ、明日とは随分急なのじゃなぁ。もっとゆっくりしていかんのか?」

「いやぁ、外の世界を見て回るなんて初めてだからなぁ。出発するなら早く出発したいんだ。母さんに冒険者ギルドへの紹介状を書いてもらったし」

「しかしのぅ……妾も寂しいぞ」

「ちゃんと学園宛に手紙を書くよ。私へはギルド経由で届くようにしておくから。ジーナもな」

「は……はぁ……」

「明日の朝には出発するから。暇なら見送りにでも来てくれると嬉しいな。じゃ、準備があるから私はこれで」


 そう言うと、手をヒラヒラと振ってリースさんは行ってしまいました。


 呆然とする私とミリアーナ様。

 アンナさんはさっきから何やらカチャカチャと準備しています。


「ミリアーナ様、本日のおやつはケーキです。ジーニスタ様もご一緒にどうぞ」

「って、それどころではなかろう!?ジーナ、戻ってさっさと兄と祖父を説得して参れ!妾は万が一の時のために家出の作戦を考えておく!」

「は、はい!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ