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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第二章 幼少期編
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アビリティ

「何やら面白い事になってきたのぅ」


 おっと、妾とした事が思わず呟いてしまった。

 それほどまでにリースとリーデル殿の戦いは面白い。


 リースは魔族としては稀有な才能を持つが、それでも周りと比べてしまうとやや見劣りしてしまう。

 魔法では聖霊の力を借りるジーナに。

 剣術ではザリやノースエルに。


 だがその両方を組み合わせた戦い方で相手を圧倒する実力がある。

 リースは近接型魔術師なんじゃろう。


 とはいえ、やはりリーデル殿には手も足も出んか。

 彼女は『紅の戦姫(ヴァルキリー)』と呼ばれた豪傑であるからのぅ。


 聞くところによると、我が親父殿が魔王になる前、お家騒動で分家の者と魔王の座をかけて戦ったそうじゃ。

 その時分家側の猛将として活躍したのがリーデル殿だったとか。


 当時は親父殿も母上殿もほとほと彼女に手を焼いたそうじゃが、お家騒動の終焉とともに親父殿に忠誠を誓ったようじゃ。

 それからはしばらく魔王軍で軍を率いていたそうじゃが、50年程前に突然一線を退いたとの事。

 親父殿との和解も含め、何があったのか気になるのぅ。


 まぁそれはこの際置いておこう。


 リースとリーデル殿の力の差は歴然。

 一瞬でリースはボロ雑巾のようにされてしもうた。

 妾でも所々認識できない攻撃がある辺り、まだまだ腕は衰えていない様子。


 リーデル殿がリースに意志を尋ねてから、リースは何かを考えるように俯いたままじゃ。


 ふーむ。

 アレにもこういう一面があったとはのぅ。


 リースは先日、賊に襲われた時も躊躇いなく賊を斬り捨てておった。

 人と戦う事に対する覚悟があるように思ったのじゃが……

 それとも、無自覚じゃったのかのぅ。


「………!」

「………ぬう」


 その時、空気が震えた。

 まるで池に投げ込まれた石が波紋を水面に広げるかのように。

 その中心はリースだ。


「……確かに私には迷いがあったな。でももう大丈夫だ」

「……ふふ。そう」


 リースを白銀の光がキラキラと包み込む。

 彼女のビロードのような銀髪がそれに呼応するかのように揺らめく。

 リースはスッと立ち上がった。

 先ほどまでの大怪我が嘘のように全快している。


「顕現したようじゃの……世界を変える力『アビリティ』が!」


 一目リースを見た時から、妾の天眼は見抜いておった。

 この小さな少女にアビリティが顕現しつつあるという事を。


 アビリティは強い意志で世界に干渉する力。

 魔法等とは一線を画す強い力だ。


 妾ですら存在しか知らぬものを、8歳になろうかという少女が会得するとは……やはり此奴は面白い!


「越えさせてもらうぞ、高い壁を!」


 リースはすぐ下に転がっていた自分の魔銃に飛びつき、慣れた手つきでリボルバーから残弾を吐き出させる。

 そして腰から1発の弾丸を取り出した


「ほぅ……」


 あれはおそらく魔石弾頭弾。

 弾頭に魔力を含む性質のある魔石を使った特殊な弾じゃ。

 しかし、天眼を持つ妾には分かる。

 あの弾頭に込められた魔力は相当である。

 魔石にも許容量がある故に多く注入する事は不可能じゃ。

 あれだけの魔力を注入する魔法陣とは……母上殿が1枚噛んでおりそうじゃ。


 リースは魔石弾頭弾を1発だけリボルバーに装填した。


「待たせたな、母さん」

「ええ。来なさい」


 銀髪の母娘はニヤリと笑いあった。

 先に動いたのは娘の方だ。

 リースはなんと真正面からリーデル殿に突っ込んでいった。

 リーデル殿はそれを阻もうとすらしない。

 リースもそれを分かっているのか真っ直ぐ近づいていく。


 そしてあと一歩、という間合いまで来た瞬間、リーデル殿の右腕が動いた。

 凄まじい速さで右腕を振り抜く。

 周囲の空気まで全て吹き飛ばしそうな程の圧力の掌底。

 妾の眼ですら動きが追いきれない速さじゃ。

 ましてやリースでは到底捉えることは不可能……


ガキィン!!


 そのような大きな音がして、リーデル殿の掌底はリースの目前で動きを止めていた。


「なんと……」


 その時妾は確かに見た。

 薄い膜のようなものがリースを守るように彼女の周囲を覆っているのを。

 その膜がリーデル殿の掌底を防ぎきったのだ。


「空間魔法『絶空』……これが私の『守る力』だ!」


 驚愕でリーデル殿の動きが止まったのを見逃すリースではない。

 自分の母にその銃口を突きつけ……


パァン!


 乾いた音が響いた。



--------------------



「見事であったのぅ」

「ミリアーナ様、ありがとうございます」


 リーデル殿はいつもの柔和な微笑みを浮かべ、妾の言葉に返してくれた。

 先程までの殺気が嘘のようじゃのぅ。


「リースはどうであった?」

「期待以上でした。リーアの時はリースより3歳上でしたが、ここまでではありませんでした」


 リーデル殿は自らの足下に横たわるリースを抱き抱える。

 アビリティの発動により怪我も完治し、今は大きな怪我もないようで妾も安心じゃ。

 可愛い顔に傷でもついたら一大事じゃからな。


「リーデル殿の掌底を一度は完全に防ぎ、一矢報いたのじゃ。妾も姉兼主として鼻が高いぞ」

「ふふ。そうですね」


 リーデル殿は自らの右頬をさすりながら同意した。

 そこには青痣が出来ている。

 あれ程魔力を帯びた魔弾を直に食らっておいてその程度の傷とは、底の見えん御仁じゃ。


「ミリアーナ様はリースのアビリティについてはご存知で?」

「発動を見たのは初めてじゃった。ただ天眼で見た限りでは、『不屈』のアビリティのようじゃ」


 アビリティに覚醒した瞬間、天眼でリースのアビリティの情報の片鱗を読み取ることが出来た。


「この歳でアビリティに覚醒するとは思いませんでした。この子は私の思ってるよりも重いものを背負っているのかもしれませんね」

「そうじゃのぅ……」


 妾の『天眼』も分類としては一種の先天性アビリティなのだそうじゃが、後天性アビリティの覚醒には強い意志の力が必要となる。

 リースの背負ったもの……のぅ……


「リーデル殿はどうしてこのような事を?」

「……恥ずかしい話、私は若い頃は戦いに明け暮れておりました。魔王陛下に剣を向けた事もあります」

「うむ。話には聞いた事がある」

「その時の私には無かったのです」

「何がじゃ?」

「自らの意志が、です」


 そこでリーデル殿は妾を真っ直ぐ見つめる。

 リースと同じ、綺麗な深紅の瞳だ。


 ちなみに、眼を合わせているのに天眼は発動しない。

 名のある実力者と眼を合わせても大抵こうなる。

 天眼も万能では無いという事であろう。


「私は生まれた時から、戦う事を義務付けられ、人形のように戦ってきました。でも魔王陛下にお仕えし、帝国の様々な人と触れ合ううちに気付いたのです。私が望んだのはこんな事では無い、と」

「ふむ」


 リーデル・ジルドの通り名『紅の戦姫(ヴァルキリー)』はとある戦役におけるリーデル殿の戦績に由来する。

 我が父ゴーシュ率いる1万の軍勢をたった1人で立ち向かい、半潰させたという。

 親父殿が一騎打ちに勝利し、なんとか捕虜にしたそうじゃが、その時のリーデル殿は全身返り血に染まっていたらしい。


 確かにこのような逸話の面影など今のリーデル殿からは感じられない。


「意志の伴わない行動は必ず公開する事になります。この子にはそんな思いはして欲しくないのです」

「ふむ…」


 リーデル殿の表情に陰が見える。

 これはあまり立ち入ってはいけない話題かもしれんのぅ。

 妾だって空気くらいは読めるのじゃ。

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