アルバートとリーシア
気づくと、真っ暗な空間にオレはいた。
目の前には身長の高い精悍な男が1人。
鍛え上げられた逞しい肉体に、それまでの激しい戦いを伺わせる全身の傷。
その姿は間違えようもない。
「アルバート……」
『オレは聖神教を潰すために生きた』
「……ああ」
『父や母、妹の無念を晴らすために』
「……ああ」
『聖神教に虐げられた人々を救うために』
「……知ってるよ」
知らない訳がない。
オレはアルバートだ。
いや、『だったんだ』。
「お前がどれだけ苦しんだかも知ってる。どれだけ足掻いたのかも知ってる」
『お前はどうするんだ?』
「……7年経って、リーシアとして過ごして、思ったんだ。皆オレをリーシアとして接してくれているのに、オレはアルバートのままでいいのかなって……」
『………』
「オレを親友だと思ってくれる奴に出会った」
狼耳の少年が頭に思い浮かぶ。
「オレをライバルだと競い合う奴とも出会った」
黒髪の頑固そうな少年が頭に思い浮かぶ。
「オレを師匠だと思ってくれる子とも出会った」
黒髪の身長の高い少女が思い浮かぶ。
「めちゃくちゃ強い奴にも出会った」
青髪の竜人の少女が頭に思い浮かぶ。
「オレを罵りつつも、案外頼りにしてる奴もいるし……」
金髪のメイドが頭に思い浮かぶ。
「剣術を教えてくれる素直じゃない姫とも出会った」
赤髪ツインテールの姫が頭に思い浮かぶ。
「オレを何かと気にかけてくれる人たち……」
素材屋の男性や街の人、魔王陛下やそのお妃様……
「新しい母さんや姉さんも出来た」
優しげな微笑を浮かべる銀髪の母と姉が思い浮かぶ。
「そして……オレを誰よりも評価してくれる奴とも出会った」
赤髪の妖艶な少女が思い浮かぶ。
『評価してくれる、それだけか?』
「ま、まぁ可愛いっていうのもあるな……それは置いといてだ」
コホンと誤魔化すように咳払いをした。
「こんなに多くの、素晴らしい人たちがリーシアを気にかけてくれているのに、オレはアルバートのままでいいんだろうか、って思うんだ」
『……そうか』
「もちろんアルバートはオレに無くてはならない部分だ。お前の諦めない気持ちが無かったらリーシアとして転生も出来なかった」
『……ああ』
「でも、2回目の人生を、1回目の復讐のためだけに費やしてしまうのは、なんだか勿体無いし……そんな人達に失礼だと思うんだ……」
『……ああ』
「オレは……いや、私は聖神教をぶっ潰すよりも、聖神教から……大事な人達を守りたいんだ」
『……それがお前の、リーシアの選択ならば、俺は構わないさ』
「私はお前とはさよなら、なんて思ってないぞ。絶対にお前の無念も晴らしてみせるし、理想も……だから、これからもよろしくな、アルバートとしての私」
『……ああ。リーシアとしての俺』
そこで、私の世界が白銀の光に包まれた。




