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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第二章 幼少期編
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少女の覚悟

 私はただ震えているしか出来ませんでした。

 リースさんやミリアーナ様、アンナさんが恐い男の人たちと戦っている間も見ている事しかできませんでした。


 本当は私も戦いたい。

 リースさんと肩を並べて戦いたい。


 魔物とはなんとか戦うことが出来ました。

 しかし人と戦うとなると、足の震えが止まらなくなります。

 人に魔法を放つことを考えると手まで震えてきました。


 もし人を殺してしまったらどうしよう?

 魔物は殺せても、人を殺す事をそれと同列に考える事は私には出来ませんでした。。


 そんな間にもミリアーナ様と師匠は男の人達の命を次々と奪っていきます。


 どうしてお2人は簡単に人の命を奪うことが出来るのでしょうか。

 私と違って、魔物を殺す事と、人を殺す事を同じだと考えているのでしょうか。

 それとも、2人には私には無いものがあるのでしょうか

 リースさんは私と同い年なのに……


 震えは更に増しました。


 アンナさんの切羽詰まった声に私は思考の海から現実に引き戻されました。

 さっき丁寧な態度を取っていた、立派な鎧の男の人がミリアーナ様に斬りかかっています。


 リースさんがそれを防ぎ、ミリアーナ様も加勢して反撃に移る、その時……


「……っ!!目を閉じろ!!」


 リースさんがそう叫んだ瞬間、視界が真っ白になりました。



--------------------



 恐る恐る目を開けると、アンナさんが目の前で倒れていました。


「アンナさん!?」


 私はすぐに駆け寄り呼吸を確認します。

 アンナさんは規則正しい呼吸を続けています。

 どうやら先程の光は何らかの魔法だったらしく、眠ってしまったようです。

 私はアンナさんの陰におり、さらに師匠の言葉ですぐに目を瞑ったから無事でした。


 そうだ、2人は!?とその向こうを見ると、リースさんとミリアーナ様も同様に地面に倒れています。


 そして2人の横、静寂が包むその空間で目を覚ましている人が私以外にもう1人いました。

 あの鎧の人です。


 鎧の人はニヤリと笑うと剣を振りかぶりました。

 その視線の先には眠っているリースさんがいました。


 私の身体は自然と動きました。

 アイドリングしていた精霊契約魔法により、ノータイムで初級魔法『火弾』を放ちます。


「む……!」


 男の人はこちらに気づいたようで、鎧の左の籠手で『火弾』を防ぎました。

 『火弾』は籠手に触れた瞬間霧散した。


 ですが私はそれには構わず、走って近づきながら『火弾』を連発しました。


『へっへへ!ジーナからこんなに強い意志を感じるとはな!』


 私にしか聞こえない声が頭に響きます。

 契約魔法により身に纏っている火の精霊、ヒィル君の声です。


「ヒィル君、力を貸して……!」

『でもよ、いいのか?さっきまで震えてたじゃねぇか』


 確かに先程までは人と戦うのが堪らなく怖かった。


 でもだからといって、このままみすみす指をくわえて見ているしかないの?

 それでリースさん達が死んでしまったりしたら、私が殺したようなものなのでは?。

 今、私は人を傷つけてしまう事より、リースさんや他の皆を間接的に殺してしまう事の方が怖い。


 私は皆を殺したくない!

 皆の助けになりたいです!


 それで戦った相手を殺してしまう事になっても……!


「これが……私なりの覚悟です!」

『分かった!オイラも力を貸すぜ!』


 その間にも『火弾』を放ち続けるけど、全てあの人の左腕の籠手に触れると消えてしまう。

 籠手に何かあるに違いありません。

 でも私に近接戦闘は無理。


 だから……最高の攻撃を確実に当てます!


 『火弾』で牽制しながら、十分に相手に当てれる距離まで近づいた事を確認し、足を止めて魔力を極限まで練り上げます。


『で、その魔力をどうするんだ?』

「爆発はダメ。師匠達を巻き込んでしまう。貫通系の上級魔法でお願い!」

『あいよ』

「猪口才な……」


 鎧の人は私の攻撃が止まった隙に魔法の詠唱を始めました。

 あの詠唱は風の中級魔法のようですね。

 ですが、精霊を纏う私に詠唱の速度で勝てるわけがありません。


『一丁上がりだ!火属性上級魔法……』

「『極灰』!」


 眼前に形成された揺らめく巨大な炎の槍を鎧の人に放ちました

 相手も詠唱が間に合わないと判断したのか、詠唱を中断してまたもや籠手でガードの体勢に入ります。


 轟音とともに『極灰』が着弾し、水蒸気が巻き上がる。

 『極灰』は火属性上級魔法の中でも攻撃力なら飛び抜けた魔法です。

 あまりにも高温な炎の槍は触れたものを瞬く間に灰に変えてしまう。


『あれを食らって無事でいられる訳……』


 ヒィル君の言葉はそこで途切れました。

 あまりに信じられない光景だったからです。

 男は左腕を跡形もなく灰にされながらもしっかりと立っていました。


「ああ……」


 戦わなければならないと思いながらも、魔力の枯渇による脱力感で私は膝から崩れ落ちてしまいました。


『おい!ジーナ!まだ終わってねぇぞ!』

「ダメ……もう魔力が……」


 男の人は鋭い目でこちらを睨んだ。


「催眠魔法にかかっていれば、恐怖を感じることも無かっただろうに、あわれな娘だ」


 彼は左手が無いことを気にする素振りも見せず、私に歩み寄ってくる。

 一歩ごとに近づいてくる足音はまるで死神の靴音のよう。


「う……」

「凄まじい魔法であったが、私には無駄だ。元々左腕は義手、また作れる」


 体を動かそうにも力が入りません。

 男の人は私の眼前に剣を構えました。


「聖神様は貴様のような魔族にも慈悲を下さる。せめて苦しまないように逝かせてやる」

「くっ……!」


 振りかぶられた剣が私の首目掛けて振り抜かれました。


 私、死ぬのか……

 リースさんを守れなかった……


「ごめん……なさい……」


 頬を何かが流れ落ちる。

 私は静かに目を閉じた。




 ……

 ………

 …………

 ……………来ない?


 目を開けると、目の前で鎧の人がさっきと全く同じ体勢で立っていました。

 胸から剣を生やしながら。


「くっ……催眠魔法は確かに効いたはずだが?」

「生憎と、その手は飽きるほど食らっていてね」


 男の人の後ろには、銀髪をはためかせたリースさんが立っていました。

 リースさんが剣を引き抜くと、鎧の人はその場にバタリと倒れこんだ。


「おお……神よ………今……まいりま…す」

「相変わらず神、神、うるさい奴らだ」


 リースさんは返り血で少し服を汚してしまっているが、無事です。


「リースさん……私……」

「……よくやったなジーナ」


 気が緩み、倒れようとした所をリースさんに抱き抱えられました。

 私より小さいはずなのに……なんて暖かく……大きい腕……

 私はリースさんの胸の中で意識を手放しました。

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