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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第二章 幼少期編
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迷宮

「たぁぁ!!」


 ミラが体に不釣り合いな程の巨大な大剣を振るい、巨大サソリを一刀両断にした。


「よし、あとは雑魚だけだ!ジーナ、魔力は大丈夫か!?」

「はい!まだまだいけます!」


 炎の精霊の加護を宿したジーナが手を向けると手のひらから火弾が複数飛び、ミラを狙おうとしたサソリ達を消し炭にする。

 さらにどこからか大量のナイフが飛び、生き残ったサソリの急所を的確に貫いていく。


「リーシア様、9時の方向から残党です」


 ナイフを構えたアンナの冷静な声を聞き、オレはそちらを見た。

 身体の表面が所々焦げ、ナイフが刺さった場所から体液を撒き散らしているが、金属音のような鳴き声をあげながらジーナに突進しようとしている。

 オレはその間に入り、右手で剣を構える。


「ギィィィィ!!!」


 巨大サソリは片方の鋏を振り下ろすが、オレはそれを剣で受け止め、滑るように懐に入り込む。


「クソッ……重い攻撃だな…」


 きちんと衝撃を逃したつもりだったが、右手が少し痺れてしまった。

 無理矢理言う事を聞かせて巨大サソリを斬りつけると、ガキィン!!と大きな音がして剣が弾かれた。

 ……なんと硬い甲殻なんだ。

 どうしたらこんなの一撃で真っ二つに出来るんだ?


 オレは一瞬で剣は無理だと判断し、左手を腰に伸ばし、魔銃を引き抜いた。

 まだ7歳の小さな手なので少しグリップに違和感があるが問題ない。

 サソリの頭に銃口を突きつけて引き金を引く。


 パァン!と魔力の破裂音がして、圧縮魔力によって撃ち出された弾丸が巨大サソリの頭を貫き、脳漿を飛び散らせた。


 簡単にサソリを屠ったように見えるが、魔銃に込めた魔力は普通の火弾が5発は撃てる量である。

 サソリの甲殻を貫く貫通力を与えるには最低でもこれだけの魔力を込めなければならない。

 それだけこの巨大サソリは硬く、厄介な相手だった。


「終わったのぅ」


 大剣についたサソリの体液を振り払いながら、ミラはそう呟く。

 ジーナたちが援護している間にも次々と巨大サソリを真っ二つにしていったのだ。

 倒したサソリの数は10は下らないのだが、それでいて返り血一つ浴びておらず、体と同じくらいの大きさの大剣を肩に担いで微笑む姿は絵画のようだ。


「さぁ、次に行くとしようかの」

「いや、もうここが最深部なんだが」

「……は?」

「探索は終わりだよ」

「もう終わったのか?案外呆気ないもんじゃの…」


 それはこっちのセリフだ。

 前世、レジスタンス時代、オレは聖神教から逃れるために止むを得ず迷宮に潜伏した事があるが、あの時は地獄のような場所だと思った。


 暗いし、ジメジメしてるし、物陰から魔物が昼夜を問わず襲ってくるし……

 おかげで逃げ切る事が出来たのだが、あまり何度も来たくなるような場所ではなかった。


 今回も自分の腕試しとジーナの育成のために、「少し厳しいかな…?」くらいの気持ちで挑んでみたが……

 蓋を開けてみればただのピクニックだ。


 今回挑んだ迷宮は洞窟タイプなのだが、壁には光苔が生えており、中は明るかった。

 階層もそこまで深いものではない。

 でもそれ以上に、同行者が反則すぎた。


 まずミラ。

 長い髪を頭の横でサイドテールにまとめている。

 防具も必要最低限の軽装で、得物は彼女の身長と同じくらいの大きさの大剣だ。

 この娘、強いとは聞いていたが、デタラメすぎる。

 ここに来るまでも、あのデカい大剣を軽々と振るい全ての魔物をきっちり一撃で真っ二つにしている。

 それでいて敵の攻撃に対する反応も早く、かすり傷すら受けない。


 次にアンナ。

 アンナの高い索敵能力により、魔物からの先制攻撃は一切なかった。

 実はアンナの特徴的なオッドアイ、これは2つとも別々の魔眼なのだそうだ。

 右目の赤い方が魔力を見ることが出来る魔眼、左目の青い方が遠くまで見渡すことが出来る魔眼。

 普通の視界、右目、左目の魔眼を切り替えて先に敵を探知するのだ。

 脳の処理能力は視界の処理に大部分を費やされるという。

 なので複数の魔眼を切り替えて使うことは一般的に不可能だと言われているが、アンナは平然と戦闘にも参加していた。

 ちなみに迷宮への探索に行くと言ったはずなのだが、今はいつも通り動きにくそうなメイド服だ。


 そしてジーナだ。

 オレは過去に前衛だったこともあり、前衛にとっていつ魔法の援護が来れば有難いか理解している。

 今回はオレは彼女につきっきりで魔法援護について教えていた。

 最初は慣れない様子だったが、飲み込みも早いのですぐに適応した。

 最終的にはその高火力でミラを援護しつつサソリを焼き払っていた。

 ちなみに彼女もまた心臓等大事な部分にしか防具をつけていない。

 胸にはオレが昔あげたペンダントをかけている。

 モズからのもらいものだったのだが、気に入ってくれたようで毎日つけてくれている。


 これら3人の化け物と同行していたオレは全く出番がなかったことは言うまでもない。

 前世の苦労はなんだったんだ……


「リースさん、お疲れ様です」

「ジーナもお疲れ様。もう魔物は平気か?」

「ええ、なんとか」

 

 ジーナは最初魔物に魔法を撃つことに抵抗があったが、何度も襲われているうちに慣れてしまった。

 こちらが攻撃しなくても向こうから襲ってくるので、慣れてもらわなければ自分の身が危ない。

 いざという時では遅いので、今回慣れることが出来て良かった。


「そうか。頑張ったな」


 褒める時に効果的なのは、身体でそれを感じさせる事だ。

 ということでジーナの頭を撫でようとするが、そこでふと思い出す。

 ジーナの方がかなり身長が高いのだ。


 ジーナは7歳にしては大きい。

 黒髪を頭の後ろで一つに結んでおり、幼いながらも凛とした雰囲気がある。


 オレは何故か身長の成長が遅く、同い年なのにジーナの方が高くなってしまった。

 師匠として、初めて会った四年前からの成長を感じ、嬉しく思うが、少し寂しいな。


「まだ奥は無いのかのぅ?」

「ありませんよ。それよりあまり突出しすぎないで下さい。フォローが大変です」


 この洞窟はあまり複雑な構造ではなく、一本の大きな道に幾つか横道がついているだけだった。

 その全てを探索したから間違いなくここが最深部だ。

 多分外はそろそろ日没だろうし、早く帰らなければならない。


「もうここに用は無い。帰るぞ」

「ふーむ……物足りんのう……じゃが仕方ない。帰るか」

「よし。確か帰り道はこっち……」

「待ってください」


 出口への道を行こうとしたらオレはアンナに肩を掴まれた。


「魔力反応が……10程感じられます。出てきてください!」

「……チッ!勘の良いガキだ」


 男の舌打ちが聞こえたと思うと、道の物陰から男たちがゾロゾロと出てくる。

 汚い服に無精髭、手入れの行き届いていない武器。

 どいつもこいつも典型的な盗賊の見た目だ。


「ミリアーナ様、お下がりください。リーシア様」

「ああ、やっぱり来たのか……」

「ん?なんじゃお主ら」

「な、何なんでしょう?」

「せっかく恐怖を感じないように攫って行ってやろうとしたのによぉ」

「お嬢ちゃん達、おじさん達に黙って付いてきてくれたら良い事してあげまちゅよ〜」

「ギャハハ、お前流石にこんなにちっこかったら無理だろ」

「口があれば出来るだろ、馬鹿だな」

「お、あそこの嬢ちゃんはメイド服着てるじゃねぇか。俺に夜のご奉仕をしてもらいたいもんだな」


 耳障りな下卑た笑い声に吐き気を覚え、全身に鳥肌が立つ。

 こんなクズは前世で腐るほど見てきたが、自分が欲望を向けられているだけでこんなにも嫌悪感が増すんだな。


「下品な奴らじゃのう。アンナ、こいつら黙らせても良いかのぅ。不愉快じゃ」

「問題ありません。が、あまり前に出ないで下さい。あの方達の狙いはおそらくミリアーナ様です」

「ん……何故妾が?」

「お前ら、馬鹿な話は後でしろ」


 その時、男達の最後尾から一際低い声がして、男達は一斉に黙った。

 すると男達の塊が2つに割れて、奥から鎧を着た男が出てきた。

 その鎧は高価なものでは無いが、明らかに使い込まれ、手入れされているので他の盗賊共から浮いてみえる。


「す、すまねぇ旦那……」

「あの赤い髪の少女がターゲットだ」

「他のガキ共は…?」

「……好きにしろ」

「へへ、分かったぜ」


 男は更に前に進み出て、ミラを見据えて優雅に一礼する。


「魔帝国ミリアーナ姫様とお見受けいたします。無駄な抵抗はせずに私と来ていただきたい」

「……なるほど。姫である妾を攫おうというのか」


 ミラはやっと状況を理解したようだ。

 もっと自覚を持って欲しいとイーザスは言っていたが、これは想像以上だな。


「では力づくで連れていかせてもらいます」

「へっ!旦那、仕事だな?」

「ああ。子供だからといって油断するな。迷宮の奥深くまで来れる実力を持っているんだ」


 そこで盗賊達がオレ達を取り囲むように広がり、それぞれの得物を抜いた。

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