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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第二章 幼少期編
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一国の姫

 そして2年が経ち、オレは7歳になった。

 今オレがいるのは、ジーナといつも火の魔法を練習している湖のほとり。

 今日の天気は快晴。

 何も用事がなければピクニックになど行きたくなるような青い空である。

 そんな中オレは……


「そこ!腰が甘い!それにもっと脇しめなさい!」

「ぐっ……はい!」


 レイチェルに扱かれてます。


 レイチェルは数ヶ月に一度、帝都に立ち寄る際には数時間は必ずオレに稽古をつけてくれる。

 ちなみに姉さんの姿はない。

 姉さんはどうしたのか、と聞いてみると「面倒事を全部押し付けてきたわ!」と胸を張って答えた。

 姉さん、ご愁傷様。


 帝国で5本の指に入ると言われていたのはやはり伊達ではなく、オレはこの2年間で一度も攻撃を当てた事はない。

 オレは汗だくになりながら木剣を彼女に打ち込むが、全て何食わぬ顔で受け流され、先程のように指摘を受ける。

 その繰り返しだ。


 レイチェルと打ち合っている時にはあまりに力量差がありすぎて成長を実感できないが、ザリ達との模擬戦の時には確かに強くなっている事が分かる。

 ザリ本人も最近は攻撃を受けるのも大変だと言っていた。


 だがそれでも近接戦ではザリの方が僅かに上だ。

 ザリはまた祖父に稽古をつけてもらっているらしく、最近急激に強くなった。


「こんなものね。お疲れ様」

「はぁ…はぁ……ありがとうございました」

「お、お礼なんていいのよ!好きでやってるんだから!」

「お2人とも精が出ますな」


 そんな声がした方を振り返ってみると、竜人の大男が立っていた。

 凄くガッシリした身体なので兵士か誰かだと思ったが、着ているのは文官の服だ。

 ていうかこの人何度か見た事あるな。


「イーザスじゃない。近衛騎士団長がこんな所に来るなんて、私、何か仕事をし忘れていたかしら?」

「いえ。姫様。此度はリース殿にお話がありましてな」

「オ、オレですか……?」


 イーザスと呼ばれた大男はこちらに歩み寄ってきた。

 オレの倍以上はある身長だが、オレの目線に合わせるように屈みこんでくれた。


「きちんとした挨拶はまだでしたな。イーザス・ラゴノイドです。ノースエルがいつもお世話になっています」


 ラゴノイドというと……ノースエルの父親か何かか?

 同じ竜人だな〜と思ってたら親子だったか。


「リーシア・シルフェリオン・ジルドです。オレに話ってのは?」

「今度君とロールクレイン家のジーナ嬢が帝都の南の迷宮に行くらしいですね」

「ええ。彼女に実戦経験を積ませたくて。何かまずかったですか?」

「いえいえ、実戦大いに結構。私も管理職になり最前線から離れて久しいですからな。たまには暴れたいも……ゴホン。話が逸れましたな」


 あー。

 偉くなるってのも大変なんだな。


「実は貴女達に姫様、ミリアーナ様が付いていきたいと仰っているのです」


 ああ……そういえばチラッとミラに言ったら羨ましそうにしてたな……

 ミラはああ見えてお転婆だからなぁ

 でも……


「一国の姫が迷宮に潜るなんて許されないですよね……」

「いえ、そこは問題ないのです」

「ねーのかよ!……っとすみません」


 思わずつっこんでしまった。

 オレたちはともかく、ミラが中で死んだらどうするつもりなんだ!?

 ミラが戦っているのを見たことないし、あいつを守りながら迷宮を進むのは正直キツい。

 引き止めて欲しい所なんだが……


「リーシア殿が知っているかは知りませんが、姫様はああ見えてお強い。魔王陛下もその辺りは心配しておりません」


 魔王陛下にまで話が伝わってるのかよ……

 陛下にはミラ同様天眼がある。

 あの人が大丈夫って言うなら大丈夫だろうな。


「ではどういうご用件で?」

「実はあまり大きな声では言えないのですが、最近国境付近で人族国家との小競り合いが散発しているのです」


 国境付近で人族との小競り合い……

 どっかで聞いたことがあるような……


「ちょっと、イーザス!そんな事一般人に喋ってもいいの!?」


 ああ、そういえばレイチェルの軍団がそれの対応に追われているとか数年前に聞いた気がする。

 その時も今と同じやり取りがあったはずだ。


「良いのですよ。数年前ならともかく、今となっては表面化しつつあります。現に帝都でも少しずつ噂が流れてきています。近々人族国家との戦争になると…」


 ここでいう人族国家とは、国家の代表を務めているのが人族の国の事だ。

 中央大陸のほとんどの国家はこれにあたる。

 人族国家では他種族に対して人族が地位的にも優位に立ちがちである。

 中央大陸の東に向かえば向かうほどその傾向は顕著になる。


「……で?それとリース達が迷宮に行くのと何の関係があるのよ?」

「率直に申し上げますと、今ミリアーナ様が帝都から出れば間違いなく狙われます」

「攫われるっていう事ですか?」

「そうなります。ミリアーナ様は魔王陛下との良い交渉材料となります」


 まぁなんやかんやで魔王陛下はミラを可愛がっている。

 人質としての能力は十分あるだろう。


「じゃあ迷宮に行くのを止めないと…」

「いえ、問題ありません。寧ろ連れて行って下さい」

「は?」

「ミリアーナ様はマイペースと言いますか、姫としての自覚に乏しいので、自らが狙われる立場というのを1度身をもって体感してもらおうというのが魔王陛下のお考えです。来年には学園に通う事ですし」

「確かにあの子には姫という自覚はないわね〜」


 いや、レイチェルもあんまり姫って感じしないぞ。


「うーん。まぁ魔王陛下が言うんなら良いんだけど、大丈夫なのか?本当に攫われたりしない?」

「はっはっは。万に一つもありませんよ。それでは私はこれで。仕事が溜まっているのです」


 そうしてイーザスは足早に去っていった。


「本当に大丈夫なのか?」

「リースがいればちょっとやそっとの賊には負けないわよ。それに、多分近衛騎士団からも密かに人を配備すると思うわ」


 1度襲われる経験をさせるためにわざわざそこまでするか……

 襲われないに越した事ないんだけどなぁ。

 

 ていうかこれって、もちろんミラには内緒なんだよな。

 気づけば企みの片棒を担がされてしまったようだ。

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