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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
終わり
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間章〜不屈の反逆者〜

初投稿

4話連続投稿

2投目

 アルバート・アイアンスピアはウェーリア王国のとある騎士の家系に生まれた。

 アイアンスピア家は先代当主、アルバートの祖父の代に勃興した新興の家だ。

 先王の戦乱の時代、鉄の槍一本で武功をあげ、アイアンスピアの家名とともに騎士の位と領地を与えられた歴史を持つ。

 その勢いは初代の息子であるアルバートの父の代になっても衰える事はなかった。

 アルバートの父、レオンは王立騎士団の二番隊の副長にまで登りつめた。

 そんな武門の家だからこそ、アルバートには小さな頃から武の英才教育が施された。



 アイアンスピア流の厳しい鍛錬を行っていたアルバートが10歳になる頃には同年代に彼に敵うものはいなくなっていた。

 だがアルバートは慢心する事なくさらに鍛錬に打ち込んだ。

 尊敬する父に追いつくため。

 アイアンスピアの家名を守るため。



 アルバートが13歳になる頃、妹が生まれた。

 天使のように無邪気に笑う妹を自らの腕で抱いた瞬間、この子を守らなければという使命感に駆られた。

 アルバートは更に鍛錬に打ち込んだ。



 厳しいが尊敬できる父。

 優しい母。

 可愛い妹。

 思い返してみれば、アルバートの人生の絶頂はこの瞬間だった。



--------------------



 妹が生まれてから一年と経たない頃。

 それは突然だった。



 王都の学校に通っていたアルバート。

 しかし、その日はいつもとは違う街の雰囲気を感じた。

 慌ただしく兵士達が走り回っているのだ。

 その慌ただしさは自分の家に近づくほど増していった。

 何か嫌な予感がしたアルバートは裏道を通り近道をする。



 そして目にしたのは、兵士に囲まれ、業火に包まれる、自分の家だった。



 その時の光景は彼の脳裏に焼きつき、一生離れる事はなかった。

 焼け落ちる自宅。

 誰も逃さないようにその周囲を隙間なく埋める兵士。

 そしてその後ろでニヤニヤとした笑みを浮かべる黒髪の若い司教の姿。





 後から発表された事であるが、アルバートの父は背信者として、大々的に家ごと焼かれ、処刑された。

 だがアルバートはそれが偽りだとすぐに見抜いた。


 ウェーリア王国では聖神教を国教としており、国民は聖神教を信仰する事を強いられていた。

 聖神教と国は強く結びついており、聖神教への背信は国への反逆行為と同意とされる。

 しかしアルバートの父であるレオンは敬虔な聖神教徒であった。

 そんな彼が教会への背信など考えられない。

 結論から言うと、レオンの事を良く思わない貴族に嵌められたのだ。


 新興の騎士という地位にも関わらず、王立騎士団の二番隊副長という高い地位。

 そして不正を決して許さない厳格な性格。

 彼を好ましく思う貴族も少なくなかったが、疎ましく思う貴族の方が遥かに多かった。


 そんなとある有力貴族の一人が教会のとある司教と組んでレオンを嵌めたのだ。

 その司教とはレイブンハート司教。

 若いながらも、その老獪な立ち回りで司教の地位を得た曲者だ。


 彼にしてみれば、新興の騎士の家系を教会に仇なすものとして告発することは造作もない事であるし、たったそれだけの事で有力貴族とパイプを持てるのなら断る理由は無かった。

 これが事件の裏側であるが、その時のアルバートは知る由もない。





 その時には何が起きているか分からなかったが、身の危険を感じたアルバートはその場から逃げ出した。

 父の事だからきっと母や妹を連れて生き残っている、そう考えて自らの身を優先させる事にした。

 そしてアルバートの逃亡生活が幕を開けた。



 事件の翌日には、アイアンスピア家は教会に楯突いた異端者として一家まとめて処断した、と教会から発表された。

 アルバート自身は生きていたのでこの発表は正確ではないのだが、異端者認定された事によってアルバートは知人を頼る事も出気なくなった。

 二週間ほど彼は王都のスラムに潜伏した。



 二週間経っても父や母、妹の追加の情報が入る事は無かった。

 彼は必死に調べまわったが、事件当時屋敷に両親と妹がいた事はほぼ間違いなく、生きている望みは絶望的だった。

 天涯孤独となった悲しみ以上に湧き上がる感情、それは憎悪であった。

 当時の情勢や街の噂話から、レイブンハートという司教ととある有名貴族による陰謀である事は自明であり、彼は復讐を誓う。

 しかし教会のお膝元で2人をどうこうする事は不可能だ。

 アルバートは力を蓄えるため、王都を出た。



--------------------



 それから4年後、ウェーリア王国を震撼させる『賊』が王都に出現した。

 教会と国の癒着を糾弾し、教会排斥を掲げる秘密結社『レジスタンス』。

 その名前が広く知られるようになったのは、とある有力貴族の暗殺事件である。

 彼は聖教教会の司教と懇意にしており、口には出来ないような『汚れ仕事』を教会にさせて、見返りとして教会に便宜を図っていた。

 『レジスタンス』は貴族の屋敷に押し入り、貴族を含め、その悪行を見逃していた臣下や護衛を悉く殺害した。

 貴族と教会の癒着に辟易としていた王都の住人はこの賊の出現に湧いた。

 連日街中はその話で持ちきりとなった。



 中でも話題となったのが、『レジスタンス』のとある幹部である。

 彼は『レジスタンス』の実行部隊を率いて数々の悪い噂の絶えない教会関係者を暗殺していた。

 何度計画が失敗しようが、蛇のような執念でターゲットを追い詰め、最後には必ず仕留める。

 派手さは無いが、その不屈の精神から民衆の支持を集め、中には彼の歌を歌い始める吟遊詩人さえいた。

 犯行声明文として現場に残された署名から、彼はこう呼ばれた。

 『不屈の反逆者アルバート』と。


 しかし『アルバート』による犯行声明は彼の登場から1年程でパタリと途切れる事になる。

 これほどの大罪人である。

 教会に捕縛されると即刻処刑が当たり前だ。

 しかし教会からそれらしき発表は無い。

 彗星の如く現れた賊、『アルバート』のその後の行方を知る者はいない。

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