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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第二章 幼少期編
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慢心と壁と目標

「誇り高き火の精霊よ、我らが盟約に基づき、その荒ぶる業火で、我に仇なす敵を、悉く焼き尽くせ!精霊契約魔法『炎纏』!」


 ジーナが詠唱を終えると、赤いオーラが彼女を取り巻く。

 まるで火をその身に纏っているようだ。

 成功したようだ。


 元々この魔法の詠唱は魔術書の一ページにびっしりと書かれていた程長いものだったのだが、この半年程で随分と短縮出来るようになった。

 さすが全属性魔法適性最大値とか言われていることはある。

 精霊契約魔法まで使いこなしてしまうとは。


 ちなみにオレたちが今いるのは魔帝都の郊外、広い湖の側だ。

 火の精霊契約魔法を練習するので、水辺の方が安全だったからだ。


「調子はどうだ?」

「はい。今日は火の精霊さんも機嫌がよさそうです」

「じゃあ1回湖に向かって魔法を使ってみろ。くれぐれも森に放つなよ」

「はい!」


 ジーナが湖に手を向けると、詠唱も全てすっ飛ばして手のひらから巨大な火弾が発射された。

 精霊契約魔法の発動中は精霊の補助を受けられるので魔力の消費はあるが魔法の詠唱は全く必要ない。


 火弾は湖の水面に直撃すると同時に爆ぜて、あたりが水蒸気に包まれる。

 ………すげー


「確かに今日はなんか威力がすごいな……」

「そ、そうですね……この子もちょっと張りきり過ぎちゃったみたいで……」


 精霊契約魔法の威力は、精霊の調子が重要となる。

 無理矢理力を引き出しても大した魔法は使えないし、逆に精霊と良い関係を築き、精霊が協力的な程威力も増す。


 これって絶大な威力の魔法を魔力の続く限り連発出来るんだよなぁ……


「もうジーナはオレより強いんじゃ……」

「そ、そんな事ないです!リースさんには接近戦での立ち回りとか色々教えていただいてますし……!」


 気も使えるなんて、良い子だ……

 こんな素晴らしい弟子を持てるなんて、師匠冥利に尽きる……


 確かにジーナは、実戦的な立ち回りは確かにまだまだ未熟だ。

 オレがきちんと教え、育てあげねば!


「よし、体術の訓練を始めるぞ!」

「あ、すみません。さっき湖に火の魔法を使ったから水の精霊達が拗ねちゃったみたいで……少し話してケアをしてあげないと……」

「お、おう!いいぞいいぞ」


 精霊契約魔法の習得の大前提として、精霊との会話が出来なければならない。

 精霊に愛される体質だったジーナはこの要件をすぐ満たす事が出来た。

今は精霊と仲良くなるために頻繁にお喋りしている……のだが、なんか自分に見えない友達と喋る弟子を見るのも複雑な感情だ。

 これが親の気持ちか……


 ジーナが湖の側で水の精霊達と会話を始めてすぐに、2つの気配がに気付いた。

 こちらに近づいてきているが、敵意のようなものは感じないので様子を見た。

 そうして草をかきわけて現れたのは……


「げ、リーシア!?」

「おうザリか。初めて会った日以来だな」


 実に半年ぶりのザリである。

 こいつはオレに負けた事が祖父にバレて以来半年間、人里離れた山奥に隔離され特訓を施されていたらしい。

 まぁ年下の女の子に負けたとあればそうなるわな。

 体に傷も増え、半年前とは面構えも頼もしくなっているようだ。

 相当に厳しい訓練を積んだと見える。


「ロザリエルト、知り合いか?」


 その後ろに続いて現れたのは、ザリと同じくらいの少女だったが、その見た目は特異なものだった。

 背中には折りたたまれた蝙蝠のような翼、臀部からは爬虫類のような尻尾が伸びている。

 それ以外は普通の人族と変わらず、腰まで伸ばした青い髪が特徴的な可憐な少女だ。

 人族領では見た事ない種族だ。


「ああ、ノースエル。彼女がこの前話した……」

「おお!その銀髪に赤い目、君がリーシアか!一度会いたいと思っていたんだ」


 ノースエルと呼ばれたその少女は顔を輝かせ、オレに握手を求めてきた。

 翼や尻尾を除き、見た目はただの少女だが、手はゴツゴツとした戦士のものだった。

 かなり剣を振ってきたのだろう。


「私の名はノースエル・ラゴノイド。竜人族だ。よろしく頼む」

「オレはリーシア・シルフェリオン・ジルド。よろしく」


 ノースエルは快活そうな笑みを浮かべて自己紹介をする。

 話していて気持ちの良い人物だ。


「ところでリーシア。あそこにいるのはジーナか?何かと話しているようだが?」

「ああ。実はな……」


 オレはこの半年の経緯を説明する。

 ジーナが精霊に愛される体質だったこと。

 グリモワール翁に精霊契約魔法の魔術書を借りて練習して、ようやく魔法が使えるようになったこと。

 2人も精霊についてピンときていないようだったから精霊についても詳しく話し終えた頃には、会話を終えたジーナもこちらに寄ってきた。


「ノースエルさん、お久しぶりです」

「ジーニスタ。久しぶり」

「お兄様もお久しぶりです。お祖父様はお元気ですか?」

「ううむ……ジーナがちゃんと魔法を使えるようになるなんて、リーシアに任せて正解だったのかも……」

「お兄様?」

「っ!?ああ!ジーナ!久しぶり!」


 ザリは恥ずかしさを誤魔化すかのように大きな声を出した。

 ブツブツ喋ってたけど、オレにはきっちり聞こえてたけどね。

 素直じゃないやつだな〜


「で?その様子だとザリもかなり鍛錬してきたようだな?」

「あ、当たり前だ!お祖父様に毎日死ぬかもしれない程の特訓を課せられて鍛えられたんだ!もう君には負けない!」

「お?今からやってみるか?」


 丁度試したいものもあることだしな。


「ザリ、君は一度戦っただろう?私も一度リーシアと手合わせしてみたいのだが」

「え、でも僕は彼女に勝つために……」

「ではこうしよう。先に私と君が戦い、勝った方が彼女と戦う。それでいいだろう」

「……分かった。そこまで言うなら先にするといい」


 ザリは不本意そうにそう言った。

 えらく簡単に引き下がったな。


 まあいい。

 先に手合わせするのはノースエルのようだ。

 見た所、彼女もザリと同じく戦士タイプだ。

 ジーナに対戦士戦を教える良い機会、というのもあるが、年上相手に勝つ所を見せて師匠の威厳を見せてやろう。



--------------------



「遠慮はいらない。本気でかかってこい」

「お手柔らかにな」


 オレとノースエルは木剣を持って向かい合う。

 まずは中距離戦だ。

 前回ザリと戦ったときのように初っ端から不意打ちをするのもいいが、ザリに効かなかった事から、魔族の身体能力ならまだ確実に当たる距離ではない。

 ここはあえて少し引きつけてから、一番詠唱の短い『火弾』を放つ。

 最初にアドバンテージをとれば後は楽勝だろう。


「2人とも始めるぞ」

「ああ」

「頼む。ザリ」

「では……始め!」


 その瞬間、信じられない事が起きた。

 ザリの号令とともに、ノースエルの姿が掻き消えたのだ。

 咄嗟に木剣を上げ、ガードの構えをとった。

 勘で適当にガードしたが、次の瞬間、剣に凄まじい力が加わる。

 肉薄したノースエルの剣撃である。


「ぐっ……!」

「次だ」


 腕の痺れを感じながらも、オレはノースエルの動きに集中する。

 さっきは全く見えなかったが、今回はなんとか目で追うことが出来た。

 下からの斬り上げを木剣で受け止める。

 ザリの時のように受け流そうとしたが、ノースエルの木剣は生半可な力ではビクともしない。

 オレは両手でなんとか攻撃を捌いた。


 ……そして次の瞬間には仰向けに倒され、空を仰ぎ見ていた。


「は……?」

「魔術師タイプと聞いていたが、私の攻撃を2度も受け止めるとは見事だ」


 最後に関しては、何をされたかすら分からなかった。

 まるで夢でも見ていたようだが、全身に感じる鈍い痛みが現実だという事を教えてくれる。


「気にすることはないぞリーシア。ノースエルは神童と呼ばれていて、最年少で竜剣流免許皆伝を授与されたんだ」

「私などまだまだだよ」

「大丈夫ですか、リースさん!?」


 最年少で竜剣流免許皆伝とか言われてもピンと来ない。

 まぁとんでもなく強いって事なんだろう。

 だが相手が強かった以上にオレに慢心があったかもしれない。

 転生してからというもの、ダガーウルフを易々と屠り、年上のザリには完勝、師匠と慕ってくれる女の子もできた。

 苦戦というものをした記憶が無かった。

 魔族は成長が速いとはいえ、まだ3歳半でこれだけの強さというのもあり、自分は無敵だと心の何処かで思っていた。


 全くそんな事はない。

 上には上がいる。

 当たり前の事だ。


「……オレ、頑張って強くなる」

「リースさん……?」

「うむ。リーシアはまだ強くなれるぞ」

「リーシア僕も負けないぞ!次は僕と手合わせしてくれ!」


 まだオレは3歳だ。

 伸びしろはきっとまだある。

 負けっぱなしという訳にはいかない。

 神童ノースエルは一つの越えるべき壁と考えよう。

 いつか、絶対に勝ってみせる。


「よし、ザリ!やるぞ!」

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